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モーツァルト弾き方⑴〜装飾音
この記事では、モーツァルトの作品に登場する装飾音の弾き方をまとめています。
短前打音、長前打音、トリル、ターン、アルペジオなどに代表される装飾音ですが、その詳細な弾き方は、原典版の楽譜には書かれていません。
つまり演奏者自身が、装飾音をどうやって弾くのか判断する必要があるのです。
参考文献はこちらです。
こちらの本では、同時代の作曲家テュルクの『クラヴィーア教本』や、モーツァルトのお父さんレオポルトの『ヴァイオリン教本』を参考に、装飾音の弾き方を論じています。
その他、様々な要点が網羅されており、一読の価値がある書籍です。
🔖前打音
前打音の弾き方を判断する際、問題になるのは以下の3点になります。
⑴入れるタイミング(拍頭か、前に出すか)
⑵音価
⑶アクセントの有無
⑴~⑶のそれぞれについて、前打音を短前打音(不変的に短い前打音)と長前打音(可変的に長い前打音)に分けた上で、確認していきましょう。
-短前打音(Acciaccatura)
…曲の出だし(KV310)、下行3度の前(KV485)、跳躍の前(KV545の22小節)などに置かれることが多い前打音です。
![短前打音](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48609509/picture_pc_91482a3691d091f9a5a94488cfa06285.jpg?width=800)
⑴入れるタイミング
…テュルクによると、「前打音の長さは、直前の音からもらい受ける」ので、拍頭で弾きます。
⑵ 音価
…不協和音としては聴こえてほしくないため、小さな音で短く弾きます。
⑶アクセント
…基本的には、前打音の方にアクセントをつけます。
【例外:実音にアクセントがつく例】
・上昇する音型
《例: ♪KV545 第1楽章 22小節》
・オクターブ跳躍
《例: ♪KV311 第3楽章》
・実音にドットやウェッジがついている
《例: ♪KV309 第1楽章》
![](https://assets.st-note.com/img/1665234768395-t6DxGRvxou.jpg)
-長前打音(Appoggiatura)
…長前打音は、不協和音の1種類である倚音と同じはたらきをして、和音に彩りを添えます。
⑴入れるタイミング
…短前打音ト同じく、拍頭で弾きます。
⑵音価
…テュルクによると、以下のような規則があります。
➊実音が装飾音の2倍の長さだった場合、半分の音価をもらい受ける。
➋実音が付点音符だった場合、2/3の音価をもらい受ける。
![長前打音](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/48613628/picture_pc_c87ce63a9e7405776882bd187a7b1607.jpg?width=800)
⑶アクセント
…長前打音には必ずアクセントをつけます。
また、後続する実音にレガートすることも必要です。
★なぜ普通の音符としてではなく、前打音として記譜したのかというと、
レオポルト曰く、当時は即興で装飾音をいれる奏法が当たり前だったので、さらにその前に装飾音を入れられてしまうのを防ぐためだったそうです。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/49387858/picture_pc_50c4d002e5731d5414e779c4a3ecbee9.jpeg)
🔖トリル
…テュルクによれば、基本は上方隣接音から弾きはじめます。
(『ド』にトリルが書いてあったら、『レドレド…』と弾きます。)
★例外も多数あり、下記はエファ&パウル・バドゥーラ=スコダ夫妻による、実音からのトリルの推奨パターンです。
《実音からのトリルの推奨パターン》
①トリルの前にそれより1音高い音があり、しかもそれがレガートで結合されているとき
②トリルの前に3つの音符からなる上昇、または下降上拍ターンがくる場合
③トリルが不協和音の上にあるとき
④バス・トリルの場合
⑤音階的に上昇する走句の終結につけられる場合
⑥もしもトリルの前にこれの同音が分離した上拍音としてある場合
⑦トリルの連鎖 など
★この分類は参考になりますが、トリル問題の一般解は存在しないため、
自分の「良い趣味」と合わせて、どう弾くのかを判断する必要があります。
(「良い趣味」というのは、古今東西の専門家が強調していることです。
「センスは情報量だ」と思えば、救われる面もあります😅)
❶下行音型
《例: ♪KV309 第3楽章 5小節》
…下行音形の流れがあるので、実音から弾きはじめます。
❷半音階
《例: ♪ロンドKV511 134〜135小節》
…半音階の流れを生かすなら、実音から弾きはじめるのもありでしょう。
…記譜されていなくても、後打音を入れるのがふさわしい場合があります。
…楽譜に書かれているのが『tr』という記号でも、プラルトリラーや前打音を意味する場合があります。
…提示部の終結部によく現れる長いトリルは、上方隣接音からはじめることにより、その効果を高めることができます。
この部分では、美しさとテンポの保持を念頭に、洗練さや優雅さ、光のようにきらめいている音色が欲しいところです。
🔖アルペッジョ
…入れるタイミングが問題になりますが、それは場合によって判断されます。
①拍頭のアルペッジョ
《例: ♪KV311 第1楽章 冒頭》
…堂々と主題が提示された感を高めることができます。
②前に出すアルペッジョ
《例: ♪KV331 第3楽章 25~26小節》
…前に出した方が、律動的な推進力がころされません。
🔖ターン
…古典派までは、上方隣接音から弾きはじめます。
(『ド』にターンがついていたら、『レドシド』と弾きます。)
…また、曲のテンポが速くなるほど、実音が短くなります。
![ターン](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/49260549/picture_pc_3401153f58342fab20e04927c9cb9aae.jpg?width=800)
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
さくら舞🌸
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