こどものピアノ指導①〜ドレミはわかっても、ドシラはわからない?
今回は、ピアノ導入期のこども(3〜7歳くらい)をレッスンするときに直面してしまう問題を、
発達的特徴を知ることで解決していきます。
この発達的特徴を理解することで、
大人からすると「なんでこんなこともわからないんだろう?」という、
「わからないことがわからない」という事態にそなえることができます。
(講師になりたての頃は本当に苦労しました😭)
今回の参考文献はこちらです。
・ピアジェの認知発達説を知ろう!
【この章の結論】
前操作期の子どもは、保存の課題にうまく答えられないため、
大人にとっては当たり前に理解できることが、すごくむずかしい場合があります。
スイスの心理学者、J.ピアジェは、こどもの認知発達段階を4段階に分類し、
2~7歳の時期を前操作期と名づけました。
前操作期のこどもの特徴として、
この時期のこどもは、論理的に考えることがまだむずかしく物事を直感的にとらえているため、
保存の課題に上手に答えることができません。
【保存の課題】
①量の保存
②数の保存
③長さの保存
→この課題では、こどもに保存の概念が身についているかということを実験しています。
→保存の概念がまだ身についていないこどもは、「この2つは同じ」と答えることができません。
【保存の概念】
物の数量はその形が変わったとしても、同じままである、ということ。
(ただこの実験では、こどもへの質問の仕方が良くなかったせいで、正答率が下がったのではないかという意見の専門家もいます。
いずれにせよ、問題設定や課題の提示の仕方をよく考えないといけません。)
保存の概念を獲得するのは、2〜7歳の前操作期から、7〜11歳の具体的操作期になる頃です。
そして保存の概念を身につける前段階として、次の3つの概念が身についていることが必要です。
①可逆性…ある変化をさせたあと、逆の変化をすればもとにもどるということ。
②相補性…物体のある側面が他の側面を補うということ。
③同一性…その物体に何かを付け加えたり取り除いたりしなければ、もとの物体と同じであるということ。
・まだ読譜がむずかしい理由
①可逆的思考ができないから
幼稚園の年中さんくらいにこのような楽譜をみせると、
「ドレミ」と読んでしまうことが多いです。
その理由は、「ドレミ」という並びを絶対的(非可逆的)なものと考えてしまうからです。
その子にとっては、「ド」「レ」ときたら次は「ミ」でしかないのです。
「ドレミファソラシド」はすぐ言えるのに、「ドシラソファミレド」がなかなか言えないというのも同じく、可逆性がまだ身についていないからだといえます。
②時間と空間(音楽と楽譜)を結びつけることができないから
実際のリズムと楽譜上の音符は、時間と空間を対応させています。
こどもにとって、音符の長さの違いを理解し、楽譜から読み取るということは、認知発達的にまだむずかしいことなのです。
・未発達な指先
3〜4歳のこどもは、まだ脳と指先の神経のつながりが曖昧です。
そのため脳で「動かしたい」と思った指と違う指が動いてしまうことがあります。
先生がこれを「ドレミと鍵盤が結びついていないのかな?」「メロディをまだ覚えられていないからかな?」など、間違った原因でとらえてしまうと、適切に対処ができません。
これには、次のようなトレーニングが有効です。
①こどもに手をパーにしてもらい、「この指動くかな?」と指先をチョンチョンして、動かしてもらいます。
↓
②今度は指先をチョンチョンしないで、「この指動くかな?」と指差します。
↓
③「右手の3の指を動かせるかな?」と口頭で伝えて、その指を動かしてもらいます。
☆家でもやってもらいましょう!
指番号を見た瞬間にその指を動かせるようになると、曲の仕上がりスピードが早くなります。
(導入期の教本では、ポジション(10本の指の位置)を固定したまま弾ける曲がほとんどで、
音符が少ししか読めなくても、指番号に反応できれば、それを頼りに曲を弾くことができるからです。)
☆まとめ
⑴前操作期のこどもは、保存の課題にうまく答えられないため、大人にとっては当たり前に理解できることを理解できない場合があります。
⑵こどもにとって「①音の並びは可逆性がある」「②音楽(時間)と楽譜(空間)を結びつけられる」ということを理解するのはまだむずかしいです。
⑶3〜4歳のこどもは指先が未発達で、動かしたいと思ったのとは違う指が動いてしまうことがあります。
♪習いはじめの頃は、脳と指先をつなげる遊びをレッスンでも家庭でも繰り返しやってみましょう。
次回は、実際の読譜指導についてまとめていきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!🌸
さくら舞
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