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犬と歩いて苔を見て虚仮を知る

 老犬と散歩をしていると、様子が気になるので下ばかり見るようになる。道端やブロック塀の下の方、苔が生えているのが目に入る。

 そういえば「こけにされる」っていう言葉があるけど、あの「こけ」は何だろうかと、ふと思った。こういう時に便利なスマホを、散歩の時には持ち歩かないのですぐには調べられない。でも、たぶん、「苔」ではないよな。

 苔は短時間には生えない気がする。「こけにする」に、そんな長時間育成のイメージはない。「暗いじめじめしたところに追いやる」という感じでもない。じゃあ「こけにする」「こけにされる」の「こけ」って何?

 気になるから早く帰って調べたいけど、老犬の足は遅い。

 タイトルの画像は、日蓮宗大本山、池上本門寺の五重塔だ。ここには「ホンモンジゴケ」という名前の苔が生えている。初めて発見されたのが本門寺だったため、その名前がついたそうだ。銅に耐性のある苔で、銅で作られた五重塔の先端(相輪)から、その銅が酸化して緑青となって流れ落ちたところに生えている。TVで観てわざわざ見に行った時の写真だが、もちろん、本門寺じゃなくても、銅葺き屋根のお堂の下などで見られるんだろう。ただ、そうと言われなければ私に見分けがつくかどうかわからない。

本門寺のホンモンジゴケ

 さてさて、本題の「こけにされる」の方の「こけ」。
 「虚仮」と書くらしい。

虚仮にするの「虚仮(こけ)」は、仏教用語。
「虚」は「虚妄(きょもう)」「偽り(いつわり)」を意味し、「仮」は「真」や「実」などに対して実体のないことを意味する。
つまり、虚仮とは「実の伴わないこと」「心や行為が真実でないこと」という意味。
転じて、人を馬鹿にすることを「こけにする」と言うようになった。

語源由来辞典

「からっぽ!」という感じだろうか。「こけおどし」の「こけ」も「虚仮」だった。

 と、調べていたら、長年の思い違いを発見! 
「こけの一念岩をも通す」という時の「こけ」も「虚仮」だったのだ。私はずっと「苔のような微細な植物だって信念もっていれば岩を割る」みたいな感じに思っていたけれど、正しくは「愚か者だって信念を持って取り組めば・・・」ということになる。

 知らなかった。

 テストに出なくてよかった。