イグBFC3感想&評価 グループA/B

はじめに

 イグをしようとしてイグになるような作品をイグナイトファングマンは許さない。イグナイトファングマンは文芸がわからぬ。だがわざとらしさについてはひときわ敏感であった。
 そういうわけなので、今回の私はイグナイトファングマンとなって作品を評価する。わざとらしく狙いすましたイグを許さず、そのセンサーに引っかからずにイグをやり通したものを勝者とする。
 これはイグナイトファングマンとイグブンゲイファイターが迂闊にもイグを懸けてしまった哀しき闘いなのである。
 なお本文ではイグナイト・ファングをイグナイトファングと記載しています。正式名称はイグナイト・ファングなので皆さんは決して間違えないようにしてください。

グループ・A

只鳴どれみ「まさひろ」

 一読して意味がわからんかったけど読み直してもきっとわからんタイプの作品なんだろうな。汚い食事の仕方というのが表テーマで裏テーマが読み取れない。が、相対性という意味では語り手の言葉遣いも同じように汚い。この作品の世界は汚さというもので完全に染まっており、そこにわずかながらの自虐的ユーモアが加えられている。まあそんな感じだった。
 作品を読んでいると、この言葉遣いは本当に正しいのか、現実の誰かがそんなふうな言い回しをしているのだろうかという、なんかちょっと不安になるところがある。作品として意図的に文字列を崩している印象もあるが、急いで書いたことによって崩れているという邪推も可能な仕上がりになっている。そのためやりたいことはわかるが完成度が高いとまでは言えない。
 抜けている印象がなく、またイグをしようとしている味もするのであまり評価できるタイプの作品じゃあないな。イグナイトファングマンはこういう作品に高評価を与えない。イグナイトファング!
 でもやりたいことがわかるという点において優位だ。

化野夕陽「darning」

 Darningという英語の持つ多面的な意味解釈を作品そのものにも当てはめるという形で構成されている、上品で出来のよさげな小説という感じがした。まあそういうわけでイグ味はあんまりない。作品構成としては主人公の貧乏性にやたらとフォーカスが当たっていてそちらに意識を持っていかれるので、その後に意味を転回させる(それと同時に作中の記述にあった外国語との齟齬という言葉も活きてくる)ところで切れ味よく感じるという原理なわけだ。
 小説としてはなるほどとなる部分も多く、特に構成面は参考になる。ただ文章そのものはふわふわとしていて、前述と矛盾するように読めると思うのだが、文章構成という面ではあまり緊迫感がない。
 むろん繕うという主題があるがゆえに文章自体がどこか緩慢にならざるをえないところもあるのだが、この作品には針や糸、布によって引き起こされる「チッ」という舌打ちの音を感じさせるほどの域には達していない。つまり繕うという処理自体に甘さを感じるってわけだ。
 イグナイトファングマンはこの作品に沈黙を返した。なんのセンサーにも引っかからないという点において評価される。へんてこでネガティブにみえるが結構いい作品だった。緩さがなければイグでも通常のブンゲイファイトでも評価が受けられるという意味で稀少な存在といえるだろう。

安部ロシオ「あなたに会いたい」

 はいイグナイトファング! 普通のブラック味がするショートショートで、それ以上のなにかという感じではない。世界観そのものがブラックで構成も緩い。イグナイトファングマンとしても、ふうん……という感じでダメだった。イグナイトファング!

大江信「健全に性欲を処理する方法」

 難しい話を書きやがってよ。イグナイトファング!
 イグナイトファングマンは難しいブンゲイがわからない。意味がわからない作品というものを迂闊に評価しようとすることはできん。こういうとき、イグナイトファングマンは画面端でガンガードせざるを得ないのである。この話はそこを貫通してくるほど魅力的ではない。敵の硬直にイグナイトファング! 空白が多すぎて本当に規定枚数守ってんのかとちょっとだけ思ったのは秘密だ。まあブンゲイファイトクラブマンも割と大量の空白使っても大丈夫だったので多分大丈夫なんじゃねえかなという気がした。
 それともうひとつ。イグナイトファングマンはイグをしようとしてイグしているブンゲイを許さない。やはりイグナイトファング!
 この作品は合計3イグナイトファングでした。他の人に評価してもらってくれ。

グループ・A投票先

 というわけで最終評価。唯一イグナイトファングの発生を回避した「化野夕陽「darning」に投票した。あまりポジティブな評価方法じゃないが、4作品のなかでもっともイグナイトファングゲージを溜めずにイグしようと存在する作品であるがゆえに評価される。
 文字の子らよ、文芸としてよくありたまえ。

グループ・B

草野理恵子「やぎさん二篇」

 はいイグナイトファング! なんとなくわかりやすい感じで書かれているがその実ぜんぜん意味がわかんねえ。気持ちはわかるけどね。こういう作品にはイグナイトファング! とか撃ちたくなるじゃん。そのとかっていうのは、イグナイトファング! 以外にもグランドヴァイパー! やエイシズハイ! が含まれている。そういった暴力的な心の動きを、それは誘発するのではなくイグナイトファングマンのセンサーが自動的にハッセイさせる。イグナイトファング!
 決闘は平等なんかじゃないよ。この作品は合計4イグナイトファングと1グランドヴァイパーに1エイシズハイでした。イグナイトファングマンはわざとらしいイグを許さない。

かいばみ「鬼、というほどでもない。」

 なんだろうこれ? でも音感がいいんだよな。イグナイトファングマンは黙ってこれを読んだ。最初は横にはみ出した文章に思わずイグナイトまで発声しかけたけど、そこで停止した。この作品は比較の魔物のバフによって強化され、なんとなくいいなという気がした。意味がわからないが、その意味のわからなさの中には疎外感と孤独という名前のイグがある。なんとなく共感してしまうそれのことをイグナイトファングマンは大事にする。
 判決保留。

ツクネモモ「つらたんたん♪」

 いい仕事してやがるなおい。イグナイトファングマンは黙ったままだった。これはいい勝負してると思いますよ。ただ鶏油が浮いてる。FANZAとか意図的に残されたと思われる校正の甘さとかな。そうしたものにイグの味がついてるんだけど、これはイグしようとしてやってるイグなんだよな。だがイグナイトファングを撃つほどのものじゃあない。昇竜拳!

渋皮ヨロイ「僕はたけのこを傷つけない」

 グワアオオーン! イグナイトファング! ガウ! イグナイトファング! ガウガウ! イグナイトファング! イグナイトファング! イグナイトファング!
 普通のオモシロ掌編大会だったら票を投じていただろうな。まあそういうタイプの作品であってイグしようとしているイグ作品の典型例みたいな感じ。面白いからもったいない。もったいねえ。ちなみに文章が面白いんじゃなくてイラストが面白いのであって、文章とその配置を使ったデザインによる勝負という意味で他の作品に勝っていると感じる部分はなかった。だからブンゲイ的な評価は率直にいって皆無だ。
 この作品は5イグナイトファングと圧倒的にわざとらしいイグだ。イグナイトファングマンはこういう作品を許さない。

グループ・B投票先

 昇竜拳の発生すら回避してなかなかの読後感を与えてくれたかいばみ「鬼、というほどでもない。」へと投票した。この作品はイグを感じさせながら、それだけではとどまらない文芸的な何かを保持していた。本稿で書かれた両グループ内でも屈指の出来かもな。
 テキストの丘より来たりし使徒に記号の祝福あれ。

総評

 まあ投票すると投票先の情報が見えてしまうというのがツイッターシステムの最上の欠点のひとつだと思う。思った以上にわざとらしいイグが評価される環境らしくて、イグナイトファングマンは憮然とした態度を取っていた。まあイグナイトファングマンのセンサーにひっかかるほどわかりやすいというのは本来強みなのだから当たり前なんだけどね。
 しかしイグナイトファングマンはわざとらしいイグを評価してしまうイグナイトダンサーたちを評価しない。逆張りに見えるかもしれないが、オレはオレのなかにいるイグナイトファングマンを大切にする。だからこそ今日もイグナイトファングを撃つことができるのだ。
 それじゃみんなも一緒にいくで。3カウントや。
 3、2、1、イグナイトファング!

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