BFC5落選展劣悪感想紀行 やり直し編 7-9

※本記事は、私の感想によって傷ついた作者をもう一度、より丁寧に傷つける可能性があります。もう見たくないという方はただちにブラウザバックしてください。また、本稿は対象読者を「私の感想の読者」という極めて限定的な方々に絞っております。そのため過去の感想文を読んでいることを前提とした書き方になっていることをあらかじめご了承ください。


やり直し編一覧


本文の趣旨

 落選展への感想の書き直しを行います。詳しくはBFC5落選展劣悪感想紀行 やり直し編 1-3をご覧ください。
 ただし、本稿には感想を書かれることを拒否している方の作品が含まれます(Xにおいて私のアカウントをブロックしていることをその条件として定義しております)。そのため、該当する作品につきましては番号のみを振り欠番とさせていただきます。

 私は転んで死ぬ。いつの間にか。


7.「心臓」赤木青緑

 最初に断っておくと、この作品はおもしろいことになっているので、肯定的な見解を述べることになる。あと、結構変な小説だと思っている。説明していけば自然と感想になってくれると信じている。
 本作のすべては心臓で書かれている。開幕からして心臓の話から始まり、主人公が如何に心臓で生きているかが語られる。この勇ましさが後々のおもしろ展開の伏線となるとは思いもしなかった。
 主人公である竜也がフリーマーケットで『心臓』という題名の古本を買ったあたりから、竜也の運命は狂い始める。本を買った理由も心臓だというのだから、この小説は徹底している。
『心臓』を読んだ竜也は、その作品の著者が自分自身であるという確信を得る。読者の方も同じことを思う。なぜなら『心臓』に書かれている文章がそのまま作品の冒頭に書かれている文章と同じだからだ。
 この古本の正体を確かめるべく、竜也はフリーマーケットを訪れるがすでに手遅れになっていた。本の売主は消え、もう追うことはできない。このあたりになってくると、この小説って実は怪奇幻想小説なのか? と、だんだん不穏な空気が漂ってくる。
 ところがその空気を腹の音がぶっ壊し、竜也はお団子を食べる。おそろしく呑気で、飯食ったあとの感想文が莫迦っぽいのもキャラクターが一貫していて良い。でもおなかがいっぱいになるとまた不安になってくるという。忙しいやつだ。
 そして竜也は本の正体を知るべく、まさかの女子高生グループに突撃。頭がよさそうとかいう理由で近づいていくのも最高に莫迦。そして超高出力の電波を女子高生たちにぶつけ、逃げられる。そして無事警察がやってくる運びとなる。竜也が警察に捕まりたくないという理由で素直に職質に応じるところまでくると、もう笑うしかない。
 なんだこれは?

 やはりこの小説を説明するのに一番適切なのは「この小説は心臓で書かれている」しかない。心臓で生きているという表現、最初は非常に度胸があるツッパリみたいなもんかと思ったけれど、違う。臓器としての心臓が脳以外の命令者として身体を突き動かしているように見える。心臓がいい感じに動いているときは竜也もイケイケだが、心臓が不安を覚えると竜也はパニックに陥る。心臓が主で竜也が従。なんかこう、肉体的にも正しい気がしてくるから困る。心臓が弱ると精神も弱るみたいなやつ。
 とにかく、威勢のいい始まり方からは予想のつかない怪奇的な展開、かと思えばその後に起こるのは極めて現実的な警察沙汰と、先がどうなるのかまったくわからない。頭の中に描かれていた竜也像が空条承太郎から不良男子Cくらいまで格下げされることも含めて、いい経験をさせてもらったと思った。
 正直、この話っていったいなんなのかよくわからなくて、私も小説を心臓で読むしかないのかな、と思った。でもやっぱり何度読んでも動くのは眼と脳で、心臓じゃないんですわ。ほんと、変な小説。誰かこの作品に合理的な説明をつけて私に教えて欲しい。私には心臓くんの考えてること、これっぽちもわかんないよ!


8.「妻が脱皮した。」飛由ユウヒ

 本作品に対しては、ネガティブな感情とポジティブな感情のふたつを同時に持っているが、どちらかと言うとネガティブな感情が強い。そのため否定的見解を述べることになる。
 たったひとつの、しかし限りなく生理的に恐ろしい問題。それが主人公と妻との絆を引き裂いてしまう。これはそういう物語だ。
 表題の通り妻が脱皮するところから物語は始まる。第三者視点からするとそれほど不気味ではなく、むしろ美しさを感じるような脱皮の描かれ方だが、主人公にはこれを容認できない理由があった。
 それは爬虫類が苦手、ということだ。
 主人公は妻を受け入れることができず、思い悩む。友人を使い、自分自身の感情を正当化しようとする。だがその試みは失敗する。友人は主人公と同じく妻帯者だったが、妻が苦しむのであれば自分もまたその苦しみを共にしようという考えの男だった。主人公のもしも話にも、男の側が認識を変えるべきだと答える。結局、主人公の感情は行き場を失ったままとなる。
 帰宅した主人公は妻に肉体的接触を求められる。だが、爬虫類的なイメージに襲われて拒絶してしまう。これにより主人公の妻に対する想いは決定的に破壊される。最終的にはそれを示す象徴的なシーンが書かれて物語は幕となる。
 構成や展開はシンプルなもので、読み解きづらい部分は特にない。リーダビリティが優れていて、内容の理解に困ることもないと思う。バランスもいい。なにかに偏執的になって構成を壊すということもしていない。
 ただ、台詞回しや展開がテンプレ的な印象を受けた。それがこの作品に対するネガティブな感情のほぼすべてだ。妻の話し方、主人公の話し方、友人の話し方、そこでやり取りされる内容、そして描写的演出。どれもが、なんとなく無難で、なんとなくありきたりな印象になる。これを論理的かつ具体的な事例として説明できればもっとマシな感想をお伝えできるのですが、いまの私にはこれが精一杯です。

 たわごととして聞き流して欲しい部類の話ですが、「爬虫類に対する恐怖」というものをもっと強く前に出してもよかったかもしれません。友人と主人公は対比的に描かれ、それが会話シーンからも読み取れますが、このシーンは「隠し事」を問題にしていて、主人公にとって致命的な問題である「爬虫類に対する恐怖」には関係していません。主人公にとってなによりきつかったのは、最後の流れからすると、ずっと隠し事をされていたことよりも、愛していたはずのひとが実は爬虫類みたいな性質の持ち主だった……ということから来る生理的な恐怖であるはずです。だとすれば、本作でより重きを置いて描かれるべきは主人公の生理的感覚についてであり、その問題についてはより偏執的でもよかったのでは……と。

 どれだけ読み直しても意味不明な難癖をつけている感じは否めない。が、いまの私ではこれ以上どうすることもできないので、このままの形で公開させていただきます。


9.

 前述の事情により感想はありません。


 今回はここまで。
 次回、BFC5落選展劣悪感想紀行『やり直し編 10-12』
 話、伝えたければ書くしかないでしょ。

 以上です。
 お読みいただきましてありがとうございました。

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