イグBFC4劣悪感想紀行 やり直し編 1-5
※本記事はターゲットユーザーを「私の感想の読者」という極めて限定的な方々に絞っております。その前提なしに読むことで発生した時間的・心情的な損害については一切責任を負いません。
御託
今年のサクラクロニクルは(例年よりもさらに)クオリティが低い。
とうてい容認できる事実ではない。
というわけで、自分のクオリティをすこしでも向上させるべく、一から、いいえ、ゼロから感想を書き直すことにしました。そもそも今年はイグナイトファングとかいう文字列を出力するのが主目的になっていて、作品に対する感想としてはいかがなものかという感じがしました。
こうした事実は私の感想文を読んでくれている奇特な善意の方々なくしては気づけなかったことなので、皆様には本当に感謝しています。
とは言え、感じたことを言語で表現するのが感想文ですから、読み直しをすると内容が変わってしまう可能性がおおいにあります。私は初読時の読書体験(以下、ユーザーエクスペリエンス=UXと表現します。短いので。)を非常に重要なものだと考えているので、これを損なった状態で感想を書きたくはありません。
また、いまのメンタルで読み直しを行うと、他人に媚びるかのように美点を探す読み方をしてしまう可能性が高いです。そんなことをするのは本意ではない。探さなければ見つからないような美点はそもそも美点とは呼べないですし。
であれば、頼りになるのは自分の感想文と記憶のみ。
つまり、劣悪な感想文を読んで、そこから想起された記憶を用いて感想を書くということです。
とんでもない劣化を引き起こしかねない気がするが大丈夫か?
そんなことは知るか。確実に良くなる道を選ぶのではなく、どうなるのかわからんものに向かって走れ。
さあ、劣悪感想紀行を始めよう。
劣悪感想紀行の基本的な書かれ方
以下のようにポイントを絞って感想を書かせていただきます。
最初に書いた感想文の発生原理、すなわち自分の感じたことを言語化すること
各作品がイグBFC4のテーマ「自分がアホであると思うもの」に対してどのようにアプローチしているかを明示すること
私の解釈したイグの精神に基づき「意図的・知的に構築されたイグである要素」を言語化すること(すなわち、イグナイトファングの対象となるわざとらしいイグ味がどこから発生しているのかを文章で表現すること)
達成できているかを測る指標が特にないのでPDCAサイクルを回すことができないという致命的な欠点はありますが、まあとりあえずやってみようの精神で間もなく発車いたします。
1『赤心部隊の第五』EG文庫
仮想戦記というか、ワイドスクリーンバロックというか、まあそのあたりの分類のものとして読みましたが、アーマード・コア6をパロディのネタとして使ってしまったことが逆にサクロの逆鱗に触れた。そういうわけで、この作品に対しては敵対的見解を持っています。話の流れも不条理・ナンセンスで、最後のぶん投げ方も含めておもしろいと感じられる部分がなく、心象のよくない作品でした。
本作品のイグへのアプローチ方法は「修飾過剰な仮想戦記的文体で読者を置いてきぼりにしたうえ、最終的にすべてを投げ出す」ものだと思っています。アホへ至る一本道として自分が一番説明しやすいのがこれ。
しかしやり方がわざとらしすぎるのも考え物です。「文字列が一見して意味不明」「話の筋がはちゃめちゃ」「誰もが知ってそうな単語を用いて不条理さを演出」「文体と書かれている内容とのギャップでアホらしさを誘発」「意図的に話をすべらせる」とてんこもりで、わざとらしすぎるのでイグナイトファングせざるを得ませんでした。
イグBFC4の開幕に出てくるものとしては適正と言えば適正ですが、「でもワンチャンこの話って実はおもしろくね……?」みたいな空気が感じ取れないのが難点です。
「いやーこの話ってアホでつまんないっすねよねー(チラッ)、オレもそう思うんですよねー(チラッ)、こんなのおもしろがるとかアホですわー(チラッ)」みたいなものが作品から漂うとよりイグらしくてよくなります。これでつまらなければ最高。
感想を一個書いただけで、読み方が邪悪なのが浮き彫りになってきている。どうしよう。
2『アンタッチャブル』今村弘樹
『アンタッチャブル』
— yono (@iyono) October 8, 2023
今村広樹
秋月国帝都大学で目の前が触れる仮想現実装置が開発された。開発者曰く
「ただし条件があります。あらかじめ完全な情報を、それこそ人ならそれ自体を必要とすることです」
#イグBFC4
いいですね。イグらしくなってきました。
秋月国と書かれているだけで既に身体が反応するようになっているので、単純接触効果により好感度が高まっています。話がワンポストで完結している手軽さも含めて味わいやすい作品です。しかも内容がいわゆる140文字小説の体を為しているのもポイントが高いですね。
本作のアホらしさは仮想現実装置でありながら実体が必要という、もはや仮想現実装置じゃないやんという「読者のツッコミ待ちなボケ一本」に集約されており、いさぎよい構成であると言うことができます。
そしてこの「つまらないボケで作品にオチをつける」というのが綺麗に成功しています。加えて不気味なのは、なんとなくなんですけど「わたしはおもしろい作品です」という顔をしている。
絶対に本人もつまらないと思っていると感じたのでイグナイトファングを打ちましたが、いまでも本当に打ってOKなイグナイトファングだったのか自信がないという。勢いというものは恐ろしい。
3『まじかる☆コミックルナ コミカル!』夏川大空
事前に魔法使いプリキュアを一話見てから挑みました。
まずこの作品、日曜日の朝にやっている感じの子供向けアニメをパロディしています。が、ちょっとリスペクトの精神に欠ける気がしました。ですので、あんまりよい印象の作品ではなかったです。おそらくですが、ド真面目に低年齢層にアプローチしている作品ではなく、ターゲットユーザーが高年齢層となっている点が悪さをしているんだと思います。
本作のイグ要素は「魔法少女系作品のパロディ」と「小説書き始めな人あるあるを詰め込んだ文体」という二本柱で成り立っています。そしてどっちにも言えることですが、作品の質を低下させる(≒意図的にアホっぽくする)ことに貢献しています。
しかしわざとらしい作品ですね。「ご丁寧に用意されたOP曲で誤字」「行頭空白がない」「一文ごとに改行」「地味に改行ミス」の他にも「会話文がつまらない」「文章の流れが追いづらく地味に読むのがしんどい」「ぜんぶ意図的にすべらせる」と、普通ならどれが本気でどれが天然なのかよくわからないけど、「イグBFC4に投稿された作品である」という前提条件によって人為的なものとして成立。「ぜんぶわざとやってる」という判断を下し、イグナイトファングを打ちました。
ギャグ漫画の原作に応募されシュレッダーにかけられるようなタイプの作品を意図的に作るというのもなかなかのアホですが、イグBFC4で勝つためにやれることをやってきている点が非常に「かわいくない」です。なのでだりあ式採点法を借りて、本作品には1点をつけました。
いやそれにしても本当にこの作品、マジで完全に養殖という感じ方でいいのか? 実はすこし天然混じってないか? そんな不安に襲われるところが一部であります。
4『広島探偵都市』乙野二郎
どう解釈したらいいのかという意味で難しい作品なのですが、宗教的・思想的領域を掠めるミステリ、なのでしょうか? 提示された状況に関する謎は探偵の解釈によりひとつの解決を見ますが、すべてはNUKE属性の爆発によって消え去ってしまい、主人公による疑問の提示もあいまってあまりすっきりしない終わり方を迎えます。
感じたことがそのまま本作品のイグへのアプローチなのかなと思いました。すなわち「ミステリで謎が解かれたのにすっきりしない」のと「爆発オチなんてサイテー」というところです。言語化すると確かにアホです。
しかし作品というか、文章と言うか、全体的にしっかり書かれすぎという印象を受けます。下手にしっかりしていると不条理・不謹慎展開もわざとやっているとしか感じられず、天然イグにあるようなイグ味が感じられないのが難点です。
変な話ですが、意図的に書いているのがわかるほど知的な印象を受ける作品であるがゆえにアホらしさが損なわれている。ここでもだりあ式「かわいくないです」が炸裂。爆発してるのにこの作品は冷たいですね……。
5『ぐれいとぶっだぶりーず』赤木青緑
アホっぽいキャラの組み合わせに、アホっぽい言い回しを使った作品で、普通におもしろく読めるので本家BFCに行った方がいいなと思いました。ただ、そっちに行ってもなんとなく通りそうにない感じの投げやりさもあり、意識的に書いてありそうなところも含めて、読了後即イグナイトファングを二連射する運びとなりました。
本作品のイグへのアプローチ方法は「組み合わせの妙」と「会話にボケを混ぜる」「突然正気に返る」「なんかいい感じの文章で終わる」という感じで、やや回転に癖のあるストレートという印象を受けます。ひよこになった少年の会話文がわかりやすく狂っているので高評価ボタンを押してもう一度押す。
本作品が知的だなと思うのは「できる限り真面目な話に偽装したすべりだし」「油断するとすぐおふざけ」「的確な位置にあるツッコミ」「読者が容易に想像できる単語しか使わない」「登場人物の雰囲気と言い回しを意図的に乖離させる」「突然の文体チェンジ」「ぜんぶ地の文で書くことでBFC作品っぽく装う」「厳かな空気で作品を〆る」というように、アホだけどおもしろい作品を成立させるための要素をしっかり準備しているように見えるところですね。
イグとしてはそもそもおもしろかったらダメだろという気がしますが、読者的にはこういう作品の方が脳にかかる負荷が低いのでありがたいという側面もあります。つまらない作品読むのって本当にだるいですし。そういう意味では、この作品はラストに吹くそよ風のようにさわやかです。やっぱりイグとしてはダメです。
書いてて思います。
これ、不毛。
続けられないかもしれません。
あなたも暇ですね。私に似て。
本稿は以上となります。
お読みいただきましてありがとうございました。
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