57.性被害と再発

こちらの了解なく無断で体に触れられたことで、路地裏に連れ込まれたあの状況がまざまざと体感を伴ってよみがえってきました。

時折気が遠くなりますが
「気を失ったら終わりだ」
と思い、気を失ってしまいそうになる自分とそうはさせまいとする自分との間を意識が行ったり来たりしていると、車が止まり手が離されました。

その人が車外に出た時にスマホの電波を確認しましたが、電波は立っておらず誰かに窮地を知らせることは不可能でした。

もしかしたら、この人はそれが分かっててここに?
そもそもここは廃倉庫では?

そう思うとゾッとしましたが、人通りもなく電波もなく、ここがどこかも分からない以上、その人の機嫌を損ねて例えば施錠された廃倉庫内に置き去りにされかねない状況に恐ろしさを覚えました。

助手席のドアを開けられ、促されるままに外に出ました。

無人の倉庫の建物の影で抱きしめられ、何度も首筋やうなじに顔をうずめられ、思いっきり突き飛ばしてしまいたい衝動に駆られながらも、そうすることで逆上して更に酷い目に遭わされたり、抵抗されることで興奮が煽られるタイプかもしれないと思いされるがままになっていました。

騒いだところでどうせ誰も助けになんてこない、逃げたところですぐに追いつかれ連れ戻される。
どうせ同じことをされるなら暴力的ではなく、早くスムーズに終わらせることで心身のダメージを最小限におさえようという気持ちでした。

でもそれは、私自身が私を守ることを放棄したことになるのだと思います。
例え、もっと酷い目にあったとしても私が全力で抵抗していれば、再発はなかったのかもしれません。

その夜は子どもを寝かしつけた後で、ひたすら体内に食べ物を詰め込みました。
食べている瞬間だけは昼間の出来事を考えずに済みました。






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