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愛と再生の物語…17


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ケントは床に座り、アルバムを胸に
声を殺して…肩を震わせ…泣いていた
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父親は、そんなケントを見て、後ろから強く抱きしめた
「ケント……」どんな想いでこれまでを過ごして来たんだ
なんでもっとこの子の事を、もっともっと…お前は素晴らしい子だと
伝えて来なかったか…後悔で
胸が張り裂けそうになっても
その後の言葉を…かける事が出来なかった
その想いを…抱きしめてやる事でしか……
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ケントは父親から強く抱きしめられて
背中に父親の温かさを感じて
昨日の母の温もりを想い出した
「父さん…」ケントもまた
何を言っていいか…言葉にならなかった
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「お前を、父さんは誇りに想う
お前に、どんなに寂しい想いをさせて来たか
どんな時も…文句も言わず
懸命に父さんを助けてくれて…
いつも、お前を後回しにしてきた父さんだった……ごめん…ケント…ごめんよ」
そう言うって父親は泣き出した
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「父さん…ボクを誇りに想ってくれてるの?」
「ああ……想って……いるよ」
「父さん…」ケントは父親の方を向いた
顔を見上げて…
「父さん…ありがとう」
そう言うなり、父親の胸で泣きじゃくった
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時計の針が時を刻む音が
部屋に大きく響いた…
ほどなくして…ケントは
「父さん…ボクは後回しにされて来たなんて…想ってないよ……
父さんを助けるのは…当たり前の事だと
母さんがいつも言ってた」
そこまで言うと…大きく息を吸い込み…吐き出した
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「母さんはいつも、父さんがどんなに大変な思いをして、
家族の為にと懸命に働いているか
だから、大変な時は
……家族はみんなで力を合わせるのが当たり前の事だって…いつも言っていたよ
そして、父さんが働いてくれてるから
家族みんなで美味しいご飯を食べれるんだって」
また大きく深呼吸して
「だから、食べ物を残したり
無駄にしてはいけないって
父さんが…一生懸命働いてくれているから
ちゃんとご飯が食べれるんだって」
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父親は…ハッとした
ケントに手伝いなさいと一度も言った記憶が無かった
母親から…そう言われ
それが当たり前だと想って
母親が死んでからも…ずっと
家の手伝いを…私が出来ない時は
何も言わなくとも
食事を作り、食卓の用意をし
メイの面倒を見てきた
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ああ…なんと言う事だ
ケントは母親から言われた事を守り
私が働く事は家族の為
働く私を支える事は当たり前だと…そう言ってケントを…育ててくれていた
自分がどんなに素晴らしい女性と出逢い
どんなに素晴らしい子どもを授かり
命と引きかえに、私に残してくれたのか
それを…今の今まで知らずに来たか
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「ケント…本当にありがとう」
「父さん…ボクは…我慢したりしたことは無いよ。。。メイとは喧嘩をする事はあっても…ボクは可愛いメイが大好きだから
母さんにもそう言ったよ…
だから…謝るなんて…しないで」
「…母さんにも…そう言った…?」
ケントは「うん」と言ってから…ハッとした…夕べの事を…言ってはいけない🙊
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「昨日、ドリーさんの家で…夢、
母さんの夢を見たんだ…」これなら嘘には…ならない
「母さんが死んでから、初めて見たんだよ
夢だったけど、母さんの手は温かかった。
ボクをギュッて抱きしめてくれたよ
父さんみたいに、強く…ギュッて」
「そうか…母さんの夢を見たのか…」
初めて夢に出てきたんだ…
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「嬉しかっただろう…お前も
きっと、逢いに来た母さんも…」
「……ボク凄く嬉しかった
母さんは、母さんは、こんなに大きくなってって…そして、ボクの事を褒めてくれたよ…」
「そうか…そうか…母さん
お前の事を誇りに想っているのを
伝えたかったんだよ…」
「父さん…、母さんはね、父さんが
毎晩ボクとメイを生んでくれてありがとうって、言ってくれるって…そう言ってた」
父親の頬が少し赤らみ…
「母さんは…そんな事まで言ったのか…そうだよ…本当に心から感謝してるからね…」
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「母さんは、本当に素敵な、素晴らしい女性だったよ…」そう言う父の目から涙が伝い落ちた……。。。
「父さん、母さんがね…
ボクと母さんの想い出を
メイに伝えてって…そしてね
メイにアルバムを見せてって、
そう言ったの。そして…
メイは母さんを知らないけど
メイは母さんにそっくりだからって…
鏡を見れば…」
父親は目を見開いた…これだったんだ
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続く…

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