メンヘラの自宅。ゴミ屋敷
私が早苗さんと知り合ってから3年程度たった頃だろうか。
早苗さんのご自宅に遊びにいったことがある。
Aさんを含めた数名と遊んだ日の帰りである。
Aさんが自宅が近いから遊びにこないか、と誘ってくれた。
私はそこまで仲良くなかったので少々悩んだものの、お言葉に甘えてその日ご一緒していたAさん、Aさんの友人Cさんと早苗さんのマンションに遊びに行くことになった。
高級マンション、ゴミ屋敷
早苗さんはお金持ちの家のお嬢様だった。
親の持ち家だという都内高級タワマンにお招きされて少々緊張した。
港区の豪華な都心の建物。大きなエントランス。
彼女がお嬢様だというのは本当らしかった。
が、すぐ別のことに驚愕することになる。
玄関入ってすぐ、その混沌ぶりに言葉を失うことになった。
早苗さんのご自宅は冗談抜きの汚屋敷だった。
玄関には散らばった靴と、何故か彼女が推しているアイドルグループのグッズやCD。
リビング兼ダイニングのソファセット、ダイニングテーブルには山積みになった本や使い古した食器、買い置きらしき常温の食材やオタグッズが積み上がり、彼女の部屋に行くには積み上がったモノと服の間にある獣道を通り抜けなければならなかった。
通りすがりに見たキッチンには洗っていない食器が山積み。
彼女の部屋も全く同じような感じだった。
彼女がイスに腰を掛け、Aさんが座椅子に座り、獣道にCさんと私が体育座りに座ると、文字通り部屋の中は一杯になった。
雑貨と本のタワーが無数に積み上がり、膝くらいの高さまで部屋は埋まっていた。
ザ・ADHDという感じである。
この時点では、私はまだ彼女の無数の病名や診断名をしらなかったが、ADHDであることはなんとなく察した。
ちなみに、私の家もかつてADHD診断を受ける前までは散らかしていて汚かったが、早苗さんの家程ではなかった。
ADHDの診断を受けてからは、自分は片付けが苦手という特性を理解して、極力ものを買わないようにして対策をするようになっていたのだ。
彼女はなんの対策もするつもりがないようだった。
今思えば、彼女の混沌とした部屋は、彼女の思考回路そのものだったのかもしれない。
混沌としていて、雑然としている。
一時間ほどでおいとま
1時間ほど談笑して、おいとますることとなった。
もちろん、部屋の散らかりぶりには触れることはしなかったし、早苗さんと付き合いが長いAさんとCさんも何も言わないので、私はすごいなと思ってしまった。
ここまで散らかった家に平然と遊びに来れることもすごいし、招き入れる早苗さんもすごい。
そう感じてしまったのだ。
早苗さんは散らかった家に人を招くことに抵抗がないようだった。
地方からくる友人を泊める事もあるそうだし、ご主人も掃除をするようにいわないそうだ。理解のあるご主人だなあと感心した。
ただ、これもフラグとなる。
彼女と後々仕事場を通じて半同居となるのであるが、それが可能な相手ではなかったのだ。
そして、混沌としたあの部屋に住む住人と半同居など、無理に決まっていた。
だが、彼女の家を訪問したのはその一度きり。
私はその事をゆっくりと忘れていき、思い出した頃には手遅れになっていた。
続く
サクラナミキレン
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