書籍:思考の質を高める構造を読み解く力

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


思考の質を高める構造を読み解く力

河村有希絵さんが書かれた、「思考の質を高める 構造を読み解く力」という書籍を読みました。

著者の概要

著者は、東大法学部を卒業後、BCGに入社し、その中で「構造を読み解く力」が実務に非常に役立っていた事を実感されたそうです。
そしてその力は、著者が小学校で学んだ国語の授業によって身についたと言います。

その授業は「構造学習」と呼ばれるものでした。

著者は構造学習を研究するために、2021年に東大教育学部に学士入学し、論文執筆と並行して本書を作られたそうです。

本書の概要

本書では、構造を読み解く力がどのようなものか、そしてそれはどのようにして身につけられるのかについて説明されています。

学校教育における国語の授業では、論説文と物語文が取り上げられます。
それぞれ、論説文では論理的思考力、物語文では人物の心を読む思考力を鍛えるために活用されます。

そして、この二つの思考力を統合して、物事を解釈してアウトプットを組み立てる力を発揮していくことができます。

ざっくり感想

本書は、ビジネス書の皮をかぶっているものの、その実は教養本であり、リベラルアーツのための本であると感じました。

「この本をよめば分かりやすく◯◯出来るようになる」のような、効果をすぐに求める類の本とは趣が異なるように思えました。

それでいながら、即時に使える論理構造の理解のための図式化方法についても記載があり、ビジネス書としても読めます。

本書の内、特に興味深かった箇所は、構造を読み解く力は論理構造の理解だけでなく、人の心情を読み解くことにも効果的であるという点でした。

その能力は、ビジネス上ではもちろん、人生を豊かにすることにもつながるものと言えるでしょう。

本書を読んだ後、読書をする際の視点がぐっと変わるであろうという感覚を得ることができました。

今回、この書籍を読んで学んだことを記載いたします。
自分の中での噛み砕きが不十分なため、構造的にアウトプット出来る感覚はあまりありませんが、これも構造学習の一環と考えて。

論理を読み解く

論理を読む力、推論

会話をしている中で、文脈を読み取れると、相手が次に何を言おうとしているのかが先回りして理解できることがあります。

さらに、その言葉やロジックの裏には、どのような論拠があるのかが透けて見えることがあります。

このような事が出来ると、初めて合った人たち同士で仕事をしたり、バックグラウンドが異なる人たちで仕事をしたり、はたまた、英語で仕事をしても、高いパフォーマンスを発揮するケースが増えてきます。

このような状態がなぜ生じるのか。
これは、論理に対して推論が働いたためです。

論理の構造、例えば、対立、並列、包括などの構造が読めれば、自ずと結論や重要なポイントが見えるようになります。

論理を読む力の鍛え方

論理を読む力を鍛えるには、説明文や論説文を読み解くことが効果的です。

特に、類推の元となる自分の体験データベースを豊かにしつつ、推論をしながら読書をするというトレーニングをしていくことが重要です。

まずは単純に知識量があるほど、類推が効くようになります。
この単語に関連する用語は何か。
この文脈が示しているカテゴリーは何か。
このような自分の引き出しを広げることが、論理を読むために効果的です。

評論家と呼ばれる方々は、このデータベースが非常に莫大です。
例えば、尾原和啓さんや宇野常寛さんを見ると、圧倒的な知識量を持っていることが類推の速度や精度に強く関係していることがわかります。

さらに、知識を持っているだけで推論の力は発揮できず、論に適用するにはトレーニングが必要です。
このトレーニングには、読書が適切です。

構造把握

文章の構造を、木構造などで図示してみると、全体を捉えやすくなります。
本を読む際には、メモとして構造を図示しながら読むと、文章全体の論理構造が見えてきやすくなります。

論理構造の基本は、演繹法と帰納法と言われています。

演繹法は、「AはB」「BはC」「だからAはC」のような三段論法です。
このように、ルールをつなげていって、一つの結論を得ます。

帰納法は、複数の具体例から、抽象的なルールを見つけ出すものです。
「AはX」「BはX」「CはX」「だからDもXに違いない」のように結論を得ます。

このような演繹法と帰納法のいずれかで、論理構造が組まれているという前提で見ると、構造把握がしやすくなります。

さらに、文章の段落構成にパターンがあることを知っておくことも大事です。
「起承転結」「序破急」などのパターンを知っておくと、構造自体を認識しやすくなります。

心情を読み解く

物語文

物語文は、自分自身が体験できないことを追体験・疑似体験できるものです。
人生経験は人を豊かにしますが、物語を通した体験もまた、人を豊かにします。

物語文は、読むことそのものが楽しみとなりますが、それに加えて、人物の心情を読み解くトレーニングともなります。

その読み解いた心情に対して、正解・不正解があるわけではありません。
正解を導き出すというよりも、色々なものの考え方や感じ方があることを知るということが、より重要なことです。

人の心情は、その人の置かれた状況や、過去に経験した出来事によって、全く変わってきます。
一つの物事に対して、どのように感じるかは千差万別です。

人は、通常、他人の視点で物事を見ることはできません。
しかし、物語は、他人の視点で物事を見ることを可能にします。

物語の悪役は、主人公側の視点から見たら、純粋な悪に見えるかもしれません。
しかし、悪役の視点から物語を語ると、そこには見えていなかったものが見えるということがあります。

現実社会では、様々な人たちの利害が常にコンフリクトを起こしています。
その元となる心情があるはずで、その心情を読み解くことができれば、ビジネス上でも有利に事を進めることができるかもしれません。

心情を読む力の鍛え方

物語の中で、登場人物の心情を想像することが、そのままトレーニングとなります。

まずは、感情移入をしやすい主人公の心情の読み解きから始めるとよいでしょう。
このとき、口に出したり、文字に起こしたりと、その心情を言語化することが重要です。

さらに、脇役や適役の心情の読み解きも、トレーニングとして向いています。
彼らの心情は語られずとも、その心情は行動の端々にあらわれているはずです。

実際、私達が現実世界で対面する人々の心情は語られません。
その心情は、行動の上でしか表現されないことがほとんどでしょう。

「あの人はどうしてあんな行動をとったのか」
「なぜあの人は、そんなに周りから慕われているのか」

それらの理由や、元となる心情は、最終的にはわからないかもしれません。
正解があるわけではないですが、そのようなトレーニングをすることで、相手の気持ちを想像することそのものに慣れていきます。


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