書籍:伝え方
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
伝え方
松永光弘さんが書かれた、「伝え方」という書籍を読みました。
著者は、編集者として広告・デザインに関する書籍の出版に関わられており、ご本人もクリエイティブに関連する書籍を多数出版されています。
私塾的に、編集に関する講座も開かれています。
日々の仕事の中で、誰もが、他人に何かを伝えるという行為をしています。
例えば、「何かトラブルが発生したことを伝える」「考えた企画の内容を伝える」「実装したプログラムの内容を伝える」「会議の結論を伝える」などなど。
チームで仕事をする以上、また、仕事の先に人がいる以上、「伝える」ということが仕事の多くの割合を占めているでしょう。
このときに、文章がうまく書けているだろうかといった、「書き方のうまさ」に悩む方は少なくありません。
文章の構成、言葉選び、テニヲハや句読点の使い方。
こういったものはもちろん大切です。
しかし、伝わる文章を書くうえで、最も重要な点は何でしょうか。
著者は、以下のように答えます。
書き手がなんとなくしか理解していないことは、なんとなくしか伝わりません。
はっきり伝わることは、書き手がはっきりわかっているものだけです。
「伝わる」とは構造的にどういうことか、「伝わる」文章とはどういったものか。
本書では、そういった「伝わる」ということの本質から考え、最終的に「伝わる」文章をかけるようになるための本です。
今回、本書の導入部分から、観点をいくつかピックアップしてご紹介します。
リモートワークが定常となった時代では、テキストコミュニケーションの重要性は高まっています。
本書を通して、コミュニケーションの質を高めるための本質をつかめるかもしれません。
「伝わる」とは
受け手の段階
「伝わる」という言葉の主体は、受け手です。
「伝わる」という状態は、受け手の内面に何かしらの影響が及ぼされた状態を指します。
何かしら本を読んだり話を聞いたりした受け手の反応には、以下の三段階があります。
理解する:知的にわかるという段階。
納得する:理解したものを解釈し、知的に肯定する段階。
共感する:知的に肯定したうえに、感情的にも同調する段階。
内面に何かしらの影響を及ぼすのは、「納得」と「共感」です。
伝えるためのコミュニケーションが目指すのは、まずは「納得」であると言えるでしょう。
コミュニケーションの構造
例えば、親から子に向けての「勉強しなさい」といった言葉は、簡単には相手に伝わりません。
伝えたいことをそのまま言葉にしても、「理解」を超えた「納得」以上のものとしては伝わりません。
この状況は、コミュニケーションの構造によるものです。
多くの人が、コミュニケーションの構造を、以下のように理解しています。
「伝え手」⇨「受け手」
このように、直接、伝え手から受け手に対して、メッセージが送られているように捉えられています。
しかし、実際には以下の構造となっています。
「伝え手」⇨「表現物」⇦「受け手」
伝え手が表現したものを、受け手が観測することによって、コミュニケーションが成立しています。
伝えては、あくまでも表現物を作るところまでしかできません。
その表現物を、受け手が主体となって受け取ります。
あくまでもコミュニケーションの主導権は、伝え手ではなく、受け手にあります。
伝えられたいこと
どのような表現物であれば、受け手が主体的に観測しにいくか、ということがコミュニケーションにおいて重要です。
私達は、自分が情報の受け手になった時、自分にとって知りたいこと・聞きたいこと・読みたいことかどうかを品定めし、受け取る情報をフィルタリングしています。
受け手にとって「伝えられたいこと」しか伝わらないとも言えます。
そして、コミュニケーションにおいては、伝え手にとっても「伝えたいこと」があります。
伝え手の「伝えたいこと」を、受け手の「伝えられたいこと」に変換することが重要です。
自分ごと
ノーベル文学賞やピューリッツァー賞を受賞した作家、ジョン・スタインベックは、以下のような言葉を残しています。
人は、あくまでも自分ごとに関しての情報しか受け取りません。
これが「伝えられたいこと」です。
何か自分が困っていることがあり、誰かに頼みごとをしたいとします。
そのときに、自分が困っていることだけを伝えても、それは受け手にとっては「他人ごと」です。
受け手にとっての「自分ごと」になるような、何かのメリット(あるいは無視することによるデメリット)を伝える必要があります。
魅力
著者は、本書の中で「伝える」ために必要なことを、以下のように表現しています。
そして、この「ひとこと」を「メッセージ」と著者は呼んでいます。
本書では、このあと「メッセージ」についての詳細な説明、そして「メッセージ」の組み立て方や最適化について語っています。
ここまでの内容は、「相手の立場になって・・・」という、ビジネスの現場で広く言われていることにも通じています。
しかし、本書の内容は表面的なものではなく、構造から説明されています。
その結果、読み手に少なくとも「納得」する以上の内的変化をもたらしてくれます。
私はエンジニアですが、エンジニアは業務としてテキストコミュニケーションが非常に多くなります。
本書の内容は、確実に自分の業務の質を高めてくれると感じましたし、それだけでなく、人文知的な学びも得ることができました。
先述した通り、2020年以降はリモートワークが進んだことにより、テキストコミュニケーションの量が増えてきていると言えます。
そこで「伝わる」ということを構造理解していることは、非常に強い武器となると言えるでしょう。
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