書籍:日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか
慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんが書かれた『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』を拝読しました。
昨今、「日本の経営学や、日本の経営は、圧倒的に遅れている」という言説をよく聞きます。
硬直した組織を揶揄する「JTC(Japanese Traditional Company)」という言葉がありますが、これも日本が遅れているといった意識の現れの言葉といえます。
しかしながら、日本の経営をめぐる悲観論は、本当に正しいのでしょうか。
日本で実践された経営"技術"は、海外に取り入れられていったという実績があります。
海外のコンサルティング企業は、日本の経営を研究し、それらをコンセプトとして取り入れていきました。
自分たちの現状を認識して、改善点を改善していくことはとても大切です。
しかし、悲観的になりすぎたり絶望してしまったりしても問題です。
この書籍は、日本"式"経営について考え、日本"式"経営の特徴を理解することの助けとなります。
それは、日本に対する単純な称賛をして、「だから日本は大丈夫」「やっぱり日本ってすごいんだ」のような言説をもって溜飲を下げるための内容ではありません。
経営に対する「答え」ではなく、「問い」を提示します。
今回、本書の前半の内容からいくつかピックアップして記載いたします。
(まだ序盤しか読めていませんが…)
なお、岩尾俊兵さんは、この書籍の内容の要約をSNSなどにアップすることを肯定的に捉えてくださっています。
図表も自由に記載してOKとのことです。
日本が失った経営
現代日本では、低賃金、低成長、低生産性が問題視されています。
これらの問題は「経営の知識と心の社会的な偏り」から生じていると言えます。
つまり、「経営知識」と「経営意識」が、一部の人に独占されていることを問題と捉えています。
賃金アップや成長といったものは、経営の主体として、価値創造の主役となった時に後からついてくるものと言えます。
ヒト優位の経営
かつての日本企業の経営における価値創造の主役は、カネではなくヒトでした。
昭和において、社会はインフレであり、インフレ前提の経営をしていました。
インフレでは、モノの価値が上がり、カネの価値が下がります。
相対的に、ヒトの価値も上がります。
戦後の高度経済成長期では、人手が不足します。
人材は希少な資源となります。
人材を囲い込むことが企業にとっての競争優位性につながるため、ヒトに好かれる経営を志向していきました。
(その中で実装された仕組みが、終身雇用・年功序列・企業別労働組合だったとも言えます。)
ヒトが価値創造の主役と捉えられるため、可能な限り、その資源をムダにしないようは配慮が取られます。
価値創造のノイズになるようなムダものを排除しようという力学が働きます。
このムダの最たるものが、組織内の摩擦やいがみ合いです。
例えば、組織内で「経営知識」と「経営意識」を高く持っている人と、そうでない人が偏在した場合、どうなるでしょう。
『自分には関係ない。あいつらがやればいい。』
そのような感覚が蔓延していき、摩擦やいがみ合いに発展します。
このムダを排除するために、過去の日本"式"経営では、組織内のすべての人に「経営知識」と「経営意識」を浸透させようとしていました。
カネ優位の経営
その後、日本はデフレとなります。
デフレは、相対的にカネの価値が上がり、ヒトの価値が下がります。
それに伴い、価値創造の主役はカネにシフトします。
(実際の価値創造はヒトが行っているにも関わらず)
これは、カネ優位でヒト軽視の経営につながっていきます。
カネを守るための書類や会議や監視にリソースが割かれます。
成長に必要なコーポレート・ガバナンスのためではなく、ムダといえるようなものに、ヒトの時間を浪費することを厭わなくなります。
そして、経営者にとっての従業員は、「経営知識」と「経営意識」を共有する仲間とはみなされなくなります。
この流れにより、「経営の知識と心の社会的な偏り」が生じてきています。
それが低賃金、低成長、低生産性を引き起こします。
ここにおいて、すべての企業人は「経営知識」と「経営意識」を取り戻す必要があります。
その際、自らの強み、日本"式"経営の強みを再認識することが重要です。
…以上、まだ読み途中ではありますが、非常に興味深い内容でしたので、ひとまずnoteに記載いたしました。
この後、書籍では、日本の経営に対する悲観論を細かく分解していきます。
悲観論の中では、以下の三つの要素が、一緒くたに語られるケースが多いです。
経営成績
経営学
経営技術
この中で、経営成績は、わかりやすく他国に遅れをとっています。
経営学の領域は、アメリカが覇権を握っていると言えます。
これは経営のコンセプト、例えば、リーン、アジャイル、ボトルネック等があります。
これらのコンセプトの源流は、実は、日本企業による経営技術から多大な影響を受けているものが、数多く存在します。
経営技術においては、日本の強みが発揮されている領域であったわけです。
欧米はコンセプト化が得意ですが、日本は技術や実践やプロセスを好みます。
柔道、剣道、弓道、茶道など、プロセスの実践を通した身体感覚からの学びを重要視する傾向が、日本にはあるように思えます。
これらは東洋思想の禅や道教に通ずるものもあります。
欧米のコンサルティングファームが、日本の経営技術をこぞって研究したといいますが、これは日本のオタク気質的な技術偏重から来たものと言えるかもしれません。
ここ2〜3年、西洋式と東洋式のダブルエンジンを駆動させることが大事なのではないか、という話を聞くことが多くなってきました。
日本は、古くから外来のものをありがたがる傾向があるように思えます。
古代は隣の大陸から、近代は欧米から。
そのおかげで日本が成長してきたのも確かでしょう。
であれば、外来のもののいいところは取り入れつつ、東洋式のエンジンが何なのかを理解し、それらをしっかりと駆動させられるようなメタ認知が大切なように感じています。
岩尾俊兵さんは、2024年1月に「世界は経営でできている」という書籍も出版されています。
こちらも最初しかまだ読んでいませんが、とても面白い内容でした。
経営に興味がない方にも、「世界は経営でできている」はオススメです。
以下のPRESIDENT Onlineの記事に共感する方は、岩尾俊兵さんの書籍を読んで頂くと良いのかなと思っております。
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