書籍:性格のいい会社
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
性格のいい会社
株式会社ミライフの代表、佐藤雄佑さんが書かれた「性格のいい会社」という書籍を読みました。
この書籍に書いてある「性格のいい会社」とは、社員を幸せにすることに焦点を当てた組織です。
これは、ただ社員に優しくするという話ではありません。
優秀な人材を引き寄せ、彼らが活躍し、高い成果を達成できるような環境を作ることの重要性を説いています。
この書籍を読んで学んだことを記載いたします。
性格のいい会社の重要性
ビジネスとカルチャーのバランス
ビジネスとカルチャーの調和は、組織の成功のために非常に重要です。
多くの企業は、ビジネスに対する戦略はあっても、カルチャーに対する明確な戦略を持っていません。
それにより、ビジネスとカルチャーのバランスが悪くなってしまいます。
そのような状況となる要因は、短期視点にあると著者は指摘します。
月次でKPIを追う、四半期決算を行う、売上目標の到達を求められる。
これらは重要ではありますが、そちらに視点が行きすぎると、カルチャーの醸成といった長期的で重要なことへの比重が落ちてしまいます。
目標と目的の混同
目標と目的の混同は、ビジネスとカルチャーのバランスの崩れの根本的な原因となり得ます。
目的は「目指している的(まと)」です。
一方、目標は「目指している標(しるべ)」です。
目的に辿り着くための通過点が目標といえます。
目標は理想までの通過地点であって、手段の一つであり、その通過地点がKPIと言えます。
目的を見失って短期業績だけを追うのは、この目標と目的を混同している状態と言えるでしょう。
目的に達成するための手段として、短期業績だけではなく、「性格のいい会社」を目標として据える、カルチャーを醸成していくことが重要ではないかというのが本書のテーマです。
働き方に対するスタンス
かつては大手企業に就職したら、終身雇用で定年まで勤めることが当たり前だったかもしれません。
しかし、今はそれとは異なる状況にあります。
特に優秀な人は、いち早く社内の閉塞感に気が付き、社外で活躍できる実力を持っていることから、率先して社外に出ていきます。
仕事と家庭の両立も大きなテーマです。
仕事自体にはやりがいを感じていても、この働き方を続けていたら家庭を持てないと思っている人は一定数いるといわれています。
これらの働き方に関する悩みを、個人の問題と捉えることもできます。
しかし、これらは潮流として発生しており、今後もその傾向が強くなることが予測できます。
このような悩みを会社の問題として捉え、環境を整えていくことが、今後重要になってくると言えます。
性格のいい会社とは
著者は、性格のいい会社を以下のように定義しました。
いい人材が入りたがるような会社の概念が変わりつつあります。
有名で安定した大手企業のような「外見のいい会社」の時代から、働きがいと多様な働き方を提供する「性格のいい会社」の時代になっていくといえます。
そのような会社では、いい人材が採用でき、その人材が長期に渡って活躍してくれます。
それは、継続的に事業を成長させることにつながっていきます。
動機づけ衛生理論
著者が人材業界で働く中で強く感じていることは「Doingで入社しBeingで辞める」ということです。
Doingは行動・やりたいこと、Beingは状態・あり方です。
動機づけ衛生理論という考え方があります。
これは動機づけ要因と衛生要因という要素によって成り立つ理論です。
動機づけ要因は、仕事に対する満足に関わるものです。
仕事のやりがいがこれに当たります。
達成、承認、昇進、昇格なども、動機づけ要因に含まれます。
衛生要因は、不満に関する要因です。
人間関係や会社の方針などがこれにあたります。
給与、労働時間、福利厚生なども、衛生要因に含まれます。
Doingが動機づけ要因、Beingが衛生要因に対応しています。
動機づけ要因が満足されると仕事そのものへのやりがいは感じますが、衛生要因が損なわれると職場環境への不満を感じます。
やりがいと環境への不満は別物です。
動機づけ要因だけを重視して、衛生要因を軽視すると、人は離れていきます。
幸福度
幸せには2種類あることが知られています。
「地位財」と「非地位財」です。
地位財は、お金やモノ、社会的地位などです。
これは他人と比べられるものです。
非地位財は、健康や安全、安心などです。
これは他人とは関係なく得られる幸せです。
地位財による幸せは長期維持できるものではありません。
昇給・昇格・昇進をインセンティブとするには、限界があります。
一方、非地位財による幸せは長期的で持続的です。
会社は、非地位財的な幸福を社員に感じてもらうような環境づくりをすることで、長く会社で活躍してくれる人材確保ができるようになります。
働きがい
パーパス
パーパス経営という考え方があります。
パーパスは直訳すると「目的」です。
何のために存在しているのかというwhyがパーパスと言えます。
パーパス経営の中で重要視されている概念は以下の通りです。
パーパス:why。何のために存在しているのか。
ビジョン:where。どこに向かうのか。
ミッション:what。何をするのか。
バリュー:how。どのようにするのか。
一方、個人にもパーパスがあります。
それは、その会社に入社した理由であり、今もその会社にいる理由です。
この個人のパーパスと組織のパーパスを接続することが大切です。
ミッションやバリューは、普段の業務に結びついています。
しかし、パーパスとビジョンは、普段の業務からは見えない概念です。
個人と組織のパーパスを意識させ、接続させ続けることが重要です。
マネージャーは、この点について意識する必要があります。
成長
仕事における成長は、縦、横、深さの面で捉えることができます。
縦方向の成長は、昇進が該当します。
メンバーがリーダーやマネージャーになり、その立場によって視野・視座・視点を広げていきます。
横方向の成長は、経験の幅です。
出来ることが増える、ということでもあります。
営業がインサイドセールスからフィールドセールスに転向するなどが事例となります。
この中で、スキルの幅も広げていきます。
深さは専門性です。
同種の仕事でも、知識レベルによって成果が変わってきます。
成長にはこのような種類があることを認識した上で、適切なタイミングで適切な仕事を任せ、新しいチャレンジの機会を提供すること重要です。
仲間
良い仲間との働き方は、仕事の楽しさに大きく寄与します。
優秀な人材、尊敬できる同僚、ポジティブな意見、働くことの充実感を高めます。
一方で、自己中心的な人材、やる気のない同僚、悪口が耐えない職場は、モチベーションを下げる要因になります。
働きがいのためには、良い仲間を集めることが重要です。
そのためには、パーパス、ビジョン、ミッション、バリューを明確にし、カルチャーを強化し、それに沿った採用に徹することが必要です。
多様な働き方
家庭
厚生労働省が発表した「令和2年版厚生労働白書」では、男性雇用者世帯のうち、66.2%が共働き世帯とあります。
かつては、男性が労働、女性が専業主婦という分担が主要な考え方とされていた時代がありました。
しかし、今はそうではないようです。
子供がいる家庭で共働きとなると、男性も女性も、自分の都合だけで働くことはできません。
朝は保育園に送り、夕方は保育園へのお迎え。
ご飯を用意し、お風呂にいれて、寝かしつけ。
文章で書くと大したことが無いように見えますが、職場での仕事が始まる前後にも家事・育児という労働が続いています。
このような状況において、会社が子育てへの理解が無ければ、子育てをしている社員だけでなく、これから子育てが控えている他の社員も「この会社では生活ができない」と判断することになるでしょう。
社会的には、男性育休の取得率も向上し、育休期間も長期化するでしょう。
それに対応できない会社は、段々と、優秀な人材が採用できなくなっていきます。
育休取得は、短期的には会社にとってメリットが見えないかもしれません。
しかし、中長期的には社員のエンゲージメントを高めます。
そして子育てを経験している人は、時間を効率的に使う生産性を向上させることにも寄与します。
働き方の三種の神器
これからの時代の働き方三種の神器として、著者は以下の3点を挙げています。
リモートワーク
フレックスタイム
副業の容認
これらをすべて実現しないといけない、というわけではありません。
しかしながら、多様な働き方への対応は、優秀な人材が会社を選ぶ際の重要な要素となることを知っておく必要はあります。
脱長時間労働
日本は世界と比較して長時間労働であると指摘がされています。
さらに時間あたりの生産性も低いと言われています。
生産性を向上させるためには、無駄の削減と価値の創造の二つのアプローチがあります。
無駄の削減では、会議の参加者を減らし、会議の時間そのものを短くするなどが効果的と言われています。
資料作成も、過剰に見た目を細かく整える必要もないでしょう。
このようなオーバースペックなものを削減していくことを、定期的に見直すとよいとされています。
そして無駄の削減で得られた時間を、価値の創造のために使います。
得られた時間を他の無駄なことに使ってはジリ貧になってしまいます。
キャリアデザイン
これまで挙げた項目は、現時点での働き方をサポートする内容となっています。
未来の働き方をサポートするのがキャリアデザインです。
キャリア自律という言葉があります。
これは、働く個人が、自らのキャリアに主体性を持ち、キャリア形成に取り組んでいくことです。
終身雇用の会社では、キャリアは会社が作っていくものだったでしょう。
しかし、終身雇用は崩壊し、有名企業も倒産する可能性を常に秘めています。
このような前提において、社員のキャリア自律を促すことが、社員の満足度を高めます。
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