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小物釣り入門・海編-1「エサどうしよう?」

 ここでは、リールなし延べ竿によるウキ釣りを想定しています。とはいうものの、浅い小さな川での小物釣りと違いますので、例え堤防や、磯の端にあるやや深い潮溜まりのような釣り場でも、ライフジャケットなどの装備は必携です。特にお子さんについては、助けようとした大人が亡くなる事例も多くあるため、必ず用意して臨みましょう。子供用ですと2000円〜3000円から購入できるはずです。

本稿は「心身の健康のための、近所で楽しめる気軽な小物釣り」を想定しています。小物釣りという枠内で、竿も短めの延べ竿+ウキ釣りです。
なお他の記事もありますのでご覧ください(マガジンはこちら)。
同様のコンセプトの川釣り編もあります(マガジンはこちら)。

●スーパー、コンビニなど食料品店で手に入るエサ

 何と言っても初心者で一番敬遠するポイントはエサでしょうね…。ゴカイやイソメなど、ミミズの仲間が気持ち悪いという人は多いはず(イワイソメなんか、鈎に刺そうとすると牙を出して噛みますし)。なので、その辺はまず、除外していきましょう。

 海釣りのエサを考えたときに、川釣りと違って何が楽と言って「魚の切り身がエサになる」ことが一番楽です。簡単に言えば、お刺身の端っこを少し残しておいて、小さく刻んで使えばいいのです。もちろん冷凍もOK。マグロカツオなどの魚に限らずイカでも構いません。対象魚としてはアジサバイワシといったものを中心にカサゴなどの根魚まで、ほぼ万能と言える効果があります。

 前の日のお刺身を一切れ残して、というのでも、ここで想定している釣りなら十分な量だと思います。もちろん、さばいた残りのアラの部分、人間が食べるにはちょっと……という感じの内臓なども、エサとしてなら使えます。

 あとは貝類。「アサリ」「シジミ」は当然有効ですね。カワハギ釣りの餌として、アサリは定番です。またボイルした半生の「ホタテの貝柱」をハリ先で繊維をすくうように付けるのもよいそうですが、ハリから外れやすいので、内湾の流れがゆるいところ専用でしょう(実際、ハゼ釣りには使われているようですが他の釣りではあまり……)。
 安い「冷凍エビ」なども使えますが、丸ごと使うには(ここで想定している釣りには)大きいので、適宜きざんで使ってください。これも人間が食べるのを少し残しておいて、という感じですかね。

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 他にと言えば魚肉練り製品でしょう。サヨリ釣りではストローで円柱状に打ち抜いた「はんぺん」を使うこともありますので、「カマボコ」なども同様に短冊形などの適当な形、大きさにカットして使えるはずです。
 で、おそらくなのですが、一番手っ取り早くお安いのは川釣りでも紹介した「魚肉ソーセージ」なのではないかと思います。細くも平たくもカットは自由自在ですし、魚のすり身ですから、切り身で釣れる魚が嫌うわけはありません。色も赤いので、そこそこ目立つと思います。

 おつまみのところにある各種のイカサラミもいいかもしれませんが、さすがに報告はありません。どう考えても釣れそうなんですが……。ただジャーキーイカ燻の類はちょっと硬いので、少しお湯に漬け込んで柔らかくした方がいいかもしれませんね。

 一時はメジナグレ)釣りに鳥のササミが流行したこともありますし、餌取りの小魚が多いときのクロダイチヌ)釣りにスイートコーンが使われたりしています。クロダイの有名どころでは缶みかんの工場下でミカンをエサにした釣り、海水浴場から流れたスイカを食べている魚を狙うためにスイカを小さく切って水面を流す釣りなどもありますが、どれもかなり特殊な例(さらに寄せエサが必要だったり)なのでここでは推奨しません。

 切り身や練り製品などのカットについてですが、基本は厚みを薄くした長方形=短冊形、あるいはそれを斜め半分に三角形にしたものになります。ピラピラと揺れ動く感じですね。細長く棒状にするのも、水中で別の動きが出るので面白いかもしれません。いろいろやってみましょう。

 ハリに刺す方法としては、エサの上1/6〜1/4くらいのところにチョンと一度ハリを掛けるだけの「チョン掛け」が定番ですが、何回も刺してハリの軸の直線部をカバーしつつ、少し先を残す「縫い刺し」、中心部を通してハリを隠しつつ、やはり先を少し残す「通し刺し」があります。魚の食いや餌取りの小魚の状態によってこの辺はアレンジしましょう。

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●現地調達できるエサ

 一方、エサの現地調達ですが、岩礁などにつく貝類などですと、漁業権が設定されているものもあります。カニについても地域により種類により微妙なところがあります。もちろん岩を割って中にいるゴカイイソメの仲間を使うなどは論外になります。

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 そこで!一番確実で簡単なのは「ヤドカリ」でしょうか。小型のヤドカリをそのへんの石で貝殻を割って取り出し、爪(ハサミ)をむしって固い頭/胸と柔らかい腹部の間をハリに「チョン掛け」すればOKです。メジナグレ)やクロダイチヌ)、ベラの類など、磯周りにいる魚に対しては、まさに万能エサです。

 で、嫌がる人が多いと思いますが、もっとも簡単に手に入り、よく釣れるエサとして「フナムシ」があります。あの、ゴキブリ並みに逃げ足の速いダンゴムシのような奴ですね。まぁあれだけいるので、間違って海に落ちる奴もいますよね。捕まえて海に投げ込んで観察すると、かなり勢いよく泳ぐところからして、そういうことも頻繁に起きていそうです。
 昔、生物部の活動で潮溜まりの魚を採っていたときに、どうしても捕まえられない&釣れなかったギンポが唯一、簡単に釣れたエサがフナムシでした。エビっぽかったからなのか、理由はわかりませんが。
  動きが素早いとはいえ、慣れてくれば素手でも捕まえられます。うまくいきそうもなかったら「ハエたたき」を使うのがいいでしょう。ハリに刺すときは「チョン掛け」、あるいはお尻の方からエビのような感じで海老反り気味に「通し刺し」してください。

 そして、ある意味では定番なのですが「ともエサ」=釣れた魚をその場でさばいて切り身にして、エサとして使用するのも、アジサバに限らず、なかなか有効な方法です。まぁ、残酷といえば残酷な話ですが、共食い、子食いは魚の世界では常にあることなので……。

●釣具店で買える常温保存のエサもある

 もし近隣の釣具店、あるいは釣り場近くの釣具店で購入が可能なら、初心者にオススメなのが、エサ用のサイズの冷凍エビオキアミですね。イソメやゴカイなどのミミズ系が苦手でも、冷凍のエビなら触れるでしょう。

 解凍しながら使うという手間がありますが、そのあたりのやりかたは釣具店で尋ねると良いでしょう。しかしエサ用の入れ物(バケツなど)や小型クーラーボックスも必要になったりしてちょっと面倒です。量もちょっと使うだけには多すぎますし。
 釣りエサ専門メーカーさんの製品ですと、塊ではなく、1匹1匹が掴みやすい少量パックの冷凍のエビやオキアミが、ちょっと割高ですが用意してあります。これを使うのが簡単です。下に一例として、マルキューの製品くわせオキアミスーパーハードを掲載しておきます。

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 ただ、使い残しが出るとそれを捨てるのも面倒ですよね、自宅に持ち帰って再冷凍しても、傷んでますし、家族とトラブりそうですし。

 ここでより強くオススメするのが、常温保存のできる人工エサです。形はゴカイ・イソメのような形状に整形されているので、見た目はちょっと苦手という方もいるかもしれませんが、生分解性プラスチック集魚成分を含ませ、フルーティな香りをつけてあるというものです。嬉しいことに常温保存が可能なので、買い置きしておいても大丈夫です(流石に真夏の車中に放置などはできませんが)。ここではマルキューの「パワーイソメ」シリーズを例として紹介します。

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パワーイソメ  パワーイソメソフト  パワーミニイソメ

 色は各4色、サイズもいろいろありますが、堤防、小磯からの延べ竿小物釣りなら、小さいものを3〜4cmに切って「通し刺し」、あるいは「チョン掛け」にするのが基本となります。チョン掛けの方が揺れてアピールする力はありますが、さらに小さい魚に取られやすいのが難ではあります。

 あと、同社にはフィッシュワゲットという刻んだマカロニみたいな常温保存できるエサがあります。川釣りでは知られていますが、海でも使えるとのこと。どうにも苦手な場合は試してみるのも一案です。最初に示した魚の切り身などの「食料品店で買えるエサ」で十分かと思いますが、買い置き用としては安心できますね。

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 ということで、近隣に魚の釣れるような海岸がある方の参考にしていただければと思います。ときどきは気を抜かないと、精神の方を病んでしまいそうな日々が続きますので。皆様の健康を祈りつつ……。

 次回はこの散歩の延長線上にふさわしい、気軽に楽しむための道具立てについて解説します。

※釣り糸、鈎はもちろん、オモリ(鉛)も環境にとってはよろしくありませんので、帰るときには釣り場に放置してはいけません。むしろ、そこに捨ててある糸や釣り仕掛け、パッケージなどを見つけたら、ゴミとして回収していく方向で。釣り場近くのゴミ箱などに捨てると、拾い上げてイタズラする輩がいるので、できるだけ自宅まで持ち帰って処分してください。

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フライフィッシング入門・目次
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