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古い写真を訪ね歩く 10 〜篠原かつみさん(93)を訪問②〜

東町商店街で『甲乃池』を営む、篠原かつみさん(93)を、①の記事の古い写真を提供下さった佐久市在住八巻さんと訪問。

前回は、写真提供者の八巻さんの祖母、八巻まちさんが働く栄キネマについて話を聞いた。
今回の写真は、下畑在住の小宮山健さんの祖父小宮山直樹さんが撮影した東町の写真についてかつみさんに尋ねた。

東町のお座敷

「昔は40人ほど芸者がいたって聞いたよ。」と、かつみさんが話したことを受け、小宮山さんから預かっている写真を出してみると、「そう、この人は芸者だね、炬燵(こたつ)入ってね。三味線を弾いてるじゃない。へぇ〜。」と、写真に見入るかつみさん。


芸者の入っているお座敷の様子

東町は昭和初期頃まで、花街の顔も持っていたそうだ。
夕方15時くらいからお風呂に入り、お化粧をして着物を着て来客の準備をする。芸者さんの着る着物は、月に一回町から来る呉服屋に注文をしていた。この辺りの商店街では、都会で仕入れてきたハイカラな衣料品も、芸者さんや“女中さん”と呼ばれる飲み屋街で働く女性達が買いに来るのでよく売れたと、昨年度の聴き取りで教えてもらった。
 
 
その後かつみさんに、2階にある当時のお座敷を案内してもらった。
「この部屋は、京都から宮大工さんに来てもらって3日間で作ってもらった。それをおじいさんが天井を作ったり、雪見障子にしたりしただよ。この部屋は、いいお客さん用の部屋。」いいお客さんとは、お得意さんの事だそうだ。写真のように大きな掛け軸をかけたあとが残っており、8畳ほどのお座敷が二間あった。

廊下を挟んだ反対側には、襖を外せば大広間になるお座敷があった。
畳の中に小さな正方形のものがあった。これが炬燵こたつの炭を入れたところですか。と尋ねると、中を見せてくれた。


お得意さん用のお座敷の天井


炬燵の堀と大広間

古い写真のように、炬燵布団とテーブルを乗せて、中に炭を入れてあたたまっていたそうだ。

栄座の写真について

小宮山さんの写真の中には、東町ではないが栄橋を西に渡った道沿い、榎田えのきだ通りにあった『栄座』という芝居小屋と思われる写真もあった。

栄座と思われる写真 客席側


栄座の舞台と思われる写真 舞台側

びっしりと座っている観客。2階との境目には、看板に芸者さんの名前のような文字が。
「これは、芸者の名前だな。玉奴たまやっこって書いてあるんじゃないかな。」と八巻さん。他にもたくさんの名前が連なっている。
舞台側の写真もある。脇には2階の席から芝居を観る人の姿も。「栄座はキネマよりたくさん人が入ったと思う。400人位入ったんじゃないか。」当時は、座布団とお重を持って食べ物を食べながら観劇したという。

中込(佐久市)の出身だというかつみさん。「栄座は、中込座の系列の芝居小屋だよ。」というと、「へえ、そうかい。中込座の系列なんだ。」と八巻さんも知らなかった情報に関心を寄せていた。『中込座』は、名前は違ったが数年前まで中込の娯楽施設として、事業内容を変えながら営業していたお店だったそうだ。
とにかく写真に写る人の数が多いことに驚き、町の賑わいが聞こえてきそうな数枚の写真に、当時を思って3人で目を輝かせた。 

文:鈴木


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