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14歳からの哲学 より

[メディアと書物]から

考えてごらん。電話もテレビもなかった百年前も、何もなくて自然とともにあった五千年前も、そしてネットだグローバルだの現代世界も、人が生まれて、生きて、そして死ぬという事実については、全く同じなんだ。何ひとつ変わっていないんだ。生まれて死ぬ限り、必ず人は問うはずだ、「何のために生きるのだろう」。数千年前から人類は、人生のとって最も大事なこの問いについて、考えてきた。
考え抜いてきたんだ。賢い人々が考え抜いてきたその知識は、新聞にもネットにも書いてない。さあ、それはどこに書いてあると思う?
古典だ。古典という書物だ。いにしえの人々が書き記した言葉の中だ。何千年移り変わってきた時代を通して、まったく変わることなく残ってきたその言葉は、そのことだけで、人生にとって最も大事なことは決して変わるものではないということを告げている。それらの言葉は宝石のように輝く。
言葉はそれ自体が価値なんだ。だから、言葉を大事に生きることが、人生を大事に生きるということに他ならないんだ。
これは本当に大事なことを言っているんだよ。

しっかり考えて、賢い人間になりたいのなら、やっぱり本を読むのがいい。
むろん、どんな本でもいいというわけじゃない。本物の人が書いた本物の本だ。メディアの策略で流行になっているような本は、まず偽物だ。
だまされないように見る目を鍛えて。
絶対に間違いがないのは、だからこそ古典なんだ。
古典は、考える人類が、長い時間をかけて見抜いた本物、本物の言葉なんだ。
消えていった幾千の偽物、人の心に正しく届かなかった偽の言葉の群の中で、なぜその言葉だけは残ってきたのか、はっきりとわかる時、君は、いにしえの賢人たちに等しい知識を所有するんだ。
これは、ネットでおしゃべりするなんかよりはるかに素晴らしいことじゃないか。


14歳からの哲学ー考えるための教科書ー/池田晶子

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数日更新していないと、再開するのが延ばし延ばしになってしまう。できるだけ良い内容にしたいと思って手が止まるのは、私の悪い癖でもある。クオリティーはあまり強く考えず、続けることを続けていきたいと思う。
誰に言われた訳ではない、自分で決めた、ハミガキみたいなものだから。

久しぶりにあげた書物は、池田晶子さんの「14歳からの哲学」である。この本に出会ったのは、10代の頃だったか。難度も読み返したので、コーヒーなのか醤油なのかわからないシミがついているし、表紙もどこかに行ってしまった。もし、東京で大地震が起きたら、この本を持って逃げよう 。(微笑)それくらい大事な本である。

それから「哲学」というものに関心を持つようになった。プラトンだったり、ソクラテスだったり、哲学の本を調べると、西洋の偉人ばかりだった中に、池田さんの文は本当、寝起きに水を飲むような本だった。
その中でも、この「14歳からの哲学」は良書の中の良書だと思う。

あとがき、
「対象はいちおう14歳の人、語り口もそのように工夫しましたが、内容的なレベルは少しも落としていません。落とせるはずがありません。なぜなら、ともに考えようとしているのは、万人もしくは人類共通の「存在の謎」だからです。」
とあるように、この本の中に答えらしい答えというのはない。ただ、「考える」ことを通じで「知る」という、「分かる」ということを、様々な切り口で論じているものです。
面白いのは、これが30代、40代、50代になると、内容がさっぱりついて行けなくなるという、著者の意見です。

いかに我々は、言葉の自動機械化として言葉を発し、一般化された社会の中に言動パターンを持ち、自らで考えた答えを持ち合わせていないかが、この本を読むと浮き彫りになります。


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