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スターは「トッププロスペクト」から生まれるのか

トッププロスペクト。ー超有望株ー。

マイク・トラウト、ブライス・ハーパー、クリス・ブライアント、ロナルド・アクーニャ…。MLBでは、メジャーデビュー前から逸材は「トッププロスペクト」と取り上げられ、その多くがスターへの階段を昇っていきます。その一方で、期待されながらも結果を出せずに姿を消す「トッププロスペクト」がいるのも事実です。

例えば、毎年発表される『ベースボールアメリカ』の「トップ100プロスペクト」はスターへの登竜門として有名です。2012年のランキングを見返すと、1位ハーパー、2位トラウトと今ではバリバリのスター選手が続きますが、3位はヘスス・モンテロ、4位にはドモニク・ブラウンが名を連ねます。モンテロとブラウンはいずれも2015年を最後にメジャーの舞台から遠ざかっています。つまり、トッププロスペクトと言っても成功が約束されているわけではありません。

一方で、当時プロスペクトとしては注目されていなかった選手がスターになることもあります。ジェーコブ・デグロムやコリー・クルーバーは、登竜門である「トップ100プロスペクト」には1度も選ばれたことはありませんが、サイヤング賞を獲得するなど素晴らしい成功を収めています。

「実際、今のスター選手ってどれくらいのプロスペクトだった選手なのだろう。」「トッププロスペクトは失敗ばかりなのだろうか。」疑問に思い検証してみることにしました。

検証の方法・結果

昨季メジャーリーグでfWARが2.0以上の選手(投手81名・野手121名)について、『ベースボールアメリカ』のトップ100プロスペクトでの順位を調べました。fWARとは選手の貢献度を示す総合指標で、投手と野手を同じ土俵で比較することができるのが利点です。詳しくはFangraphsのこちらの記事を参照してください。fWAR2.0以上は全メジャーリーガーの上位約15%程度で、レギュラー選手相当の貢献度とされています。

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検証の結果・考察

まず、以下が結果を整理したファイルになります。

*赤字はトップ100プロスペクト外の選手です(編集の便宜上150位になっていますが気にしないでください)
*このファイルは考察等にご自由にお使いください。誰かもっと見やすく作り直してください…

次に、投手と野手に分けてトップ100プロスペクト外の選手が占める割合をグラフにまとめました。

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投手と野手を比較してみると、投手のグラフは比較的ゆるやかになっているのに対し、野手はWAR4.0以上のところで急激に割合が下がっていて、5.0以上となると10%前後まで下がっています。

このことから、WAR2.0~3.9のレギュラー格の野手はトップ100圏外からある程度輩出されても、WARが4.0を超えるようなスター選手を輩出する確率は落ちる傾向があると考えられそうです。

それに対し、投手はサンプル数が少ないながらも、どのWARの軸でもトップ100圏外の選手が30%以上を占めていおり、デグロムやクルーバーに代表されるようなエース投手も輩出されるなど、トップ100圏外の投手でもスター選手になる確率が野手よりは高い傾向があると考えられます。

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18年でも同様の検証を行いましたが、野手は19年と同じくWAR4.0以上(オールスター級)が分かれ目といえそうです。一方の投手はゆるやかな下降になっていて、5人しかいなかったWAR6.0以上を除けば、19年と同じくどのWAR軸も30%前後となっていました。

また、以下はプロスペクトランキングが20位以内、50位以内、100位以内、100位圏外での各WARでの選手が占める割合を示しています。投手と野手で大きく違いが出ています。参考になればと思います。

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念のため別Verの検証データも取りました。17‐19年までの3年間の合計fWARが4.0以上の選手(野手157名・投手84名)についても同様の検証を行いました。以下が整理したファイルです。

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やはりこちらでも野手は下降していくのに対して、投手はどちらかというと平坦なグラフになりました。以上のことから、スター選手は①野手ならやはりトッププロスペクトから生まれることが多いが、②投手は元トッププロスペクトばかりとは限らない、と考えられそうです。

トップ100圏外で高WARを記録した投手はデグロムは例外として、シェーン・ビーバーやカイル・ヘンドリクス、パトリック・コービンなど、球威よりもコントロールや変化球のキレで勝負する技巧派が多いように感じます。このような技巧派タイプの投手はプロスペクトランキングでは評価されないことが多く、そのあたりが関係しているのかもしれません。野手も同様で、ホセ・アルトゥーベやホセ・ラミレスといったコンタクトヒッターが多いように感じました。この点については、長くなってしまうので次回以降に書いていきたいと思います。

終わりに

今日の話をまとめるとここ2シーズンの傾向として、①WAR4.0を超えるスター野手は元トッププロスペクトが多い。②スター投手は元トッププロスペクト以外からでも割と出ている。③トップ100圏外からスターになった選手は、投手ならコントロール、野手ならコンタクトに優れている?←次回検討。④これは球速やパワーを重視するプロスペクトの評価方法が関わっている?以上です。次回はどんな無名プロスペクトがスター選手になっているのかを考察していきたいと思います。

Photo:https://flic.kr/p/cras3d





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