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コロナ禍が続く中での観光業【ペルーの場合】

こんにちは、さくちゃんです。コロナの社会経済的影響が世界的に続く中、皆さんいかがお過ごしですか?

私が住むペルーは感染者がまだ数名という状況で今年の3月15日にロックダウン宣言をしましたが、経済へのダメージが大きすぎたため5月から徐々に経済活動を解除し、9月の今に至っても全くコントロールできていません。人口10万人当たりのコロナによる死者数は世界一となり、人口が少ないため目立ちませんが、世界的に見ても甚大な被害となっています。

ペルーと言えば「一度は行ってみたい世界遺産」として有名なマチュピチュをはじめとして多くの観光資源を誇る観光大国。当然このコロナによる観光業及び周辺業界への影響は大きく、多くのホテルやレストラン、旅行代理店が営業停止に追い込まれました。特にマチュピチュへの玄関口クスコでは、中央広場プラサ・デ・アルマスに面した店舗の家賃はこれまでNY並みに暴騰していましたが、長引くコロナによる影響でもっと賃貸料の安い物件に移るお店が増えています。

私もホテルを経営していますので、観光業の悲惨な現状をひしひしと感じていますが、「現状を嘆いていても仕方がない!」と立ち上がり、様々な取り組みを始めている人々が周りに多くいることに勇気づけられました。今回はそうした人々をご紹介していければと思います。

1.本業以外をスタートする人々

私が住むアマソナス州は、北のマチュピチュと呼ばれるクエラップ遺跡をはじめ、世界第三位の落下差を誇るゴクタの滝や219体のミイラを収蔵するレイメバンバ博物館(私のホテルはこの敷地内にあります)など、多くの観光資源を有してます。しかし、あまりにも田舎で空路などのアクセスが悪く、観光開発が始まったのもここ数年の話でした。このため、多くの観光業従事者は、副業としてもともとやっていた仕事、例えば農業をやっていることが多く、コロナでロックダウンになっても、農業に回帰していくことができました。

こういった人々の中に私の友人のNさん・Jさん姉弟がいます。彼らは私がいるレイメバンバで一番古くからやっているホテルのオーナーです。同じホテル業のライバルである私にも仕入れ先情報を共有してくれたり、村で研修があると無償で場所を提供してくれたりするような、素晴らしく気持ちのいい人々です。

ロックダウンになって全ての予約がキャンセルされ、彼らも途方に暮れたそうです。彼らには6人ほどの従業員がいて、どの方も長年ホテルで働いてきてくれている人でした。幸い彼らにはホテル業と並行してやっていた畑と畜産業がありました。彼らは飼っていた牛の一部を売って資金を作り、イチゴの苗を1万8000株購入しました。そして空いた牧草地を開墾し直して、そのイチゴの苗を植えたそうです。

「とにかく従業員に仕事を作らないといけないと思ったのよ。イチゴだったら普通に売れるし、観光がスタートしたらジャムにしてお土産物として売ってもいいし、他のホテルやレストランに売れるしね。」

何でもないように言ったNさんは御年70歳。お子さんは皆ホテル以外の仕事に就いていて、普通だったらホテルを閉めるという選択肢になると思うのですが、それでは従業員が路頭に迷う、ということで新しい投資に踏み切ったのです。

「うわぁ、すごいな、この人たち」

単純に、感嘆の想いがわいてきます。

農業とは別の道を選んだ人もいます。友人の観光ガイドEさん。彼は以前から全国で活動していましたが、近年はアマソナス州に拠点を置いていた専業のガイドさんです。

ペルーでレストランやホテルの営業が部分的にスタートしたのは5月。再開にはコロナ対策のプロトコルを保健省に提出して承認をもらわなければなりません。彼は自分の友人のレストランのプロトコル作成を手伝い、その経験を生かして、コンタクトのある全国のレストランやホテルに向けてプロトコル作成の代行業を始めました。

もちろん彼はこんなプロトコル作成のプロではありません。実はプロトコル作成自体は難しいものではなく、業務内容が分かっていて、そのホテルやレストランの構造を知っていれば素人でも作成できます。しかし、普段PCに触れる機会のないオーナーさん達にはPCで文章を作ることへの抵抗感がありました。彼の代行業は、そこをうまく突いたものです。

こういった本業以外をスタートする人々は、観光業が再スタートすればそちらに戻ることを考えています。旅をしたいという人々のニーズはなくならないと考えているからです。それではこのニーズを、withコロナでも満たそうと追求し始めた人々を紹介します。

2.バーチャルトリップなど新しい観光のスタイルを模索する人々

レイメバンバ出身で、スペインに拠点を置く旅行代理店を経営しているMさん。彼女が中心になって、アマソナス州でのバーチャルトリップの開発が進んでいます。

世界中がロックダウンになる中で、博物館を中心にバーチャルトリップの開発が急激に進みましたね。Mさんが考えるバーチャルトリップは、いわゆる体験型の旅行をZoomなどの媒体を介してできないか模索するものです。例えば織物体験。糸つむぎや染色の過程をZoomで中継しながら、随時質問を受け付けて答えたり、見たいアングルにカメラを合わせたりして、インタラクティブな体験をしてもらおうという趣旨。

実体験とは異なり、あくまでバーチャルなので味覚、嗅覚に訴えるアクティビティには使えませんが、そもそも体験型の旅行の趣旨は現地の人々との触れ合いにあるので、おそらくニーズはあるだろうと思われます。また、コロナ禍が長引くにつれ、旅行に行きたい!と思う人々は確実に増えており、そういった層を狙った企画です。

ネット環境などまだまだ改善すべき点がありますが、こうした新しい動きが確実に進んでいることに勇気づけられます。

*下記ビデオはレイメバンバの観光業に携わる人々が自分の事業を紹介するもので私もちょこっと出ています。バーチャルトリップを前に、こういうアクティビティがレイメバンバではできますよ、ということを紹介したものです。

また、アマソナス州随一の高級ホテルを経営するRさん。彼女は自身のホテルがロッジ形式で独立していて、室内やバルコニーで飲食できるスペースがあることを活用して、ホテルをリモートオフィスとして長期間使うプランを売り出しています。自然環境に恵まれたホテルで、ソーシャルディスタンスを図りながら滞在&仕事ができる、というのがウリです。前に述べたように、ペルーでは100日を超える厳しいロックダウンの後に経済活動が再開しましたが、都会では感染を恐れて自由に外に出ることができるわけではありません。どうせ都会の自宅でリモートワークするのであれば、自然に囲まれた環境で、コロナの心配なく森林浴をしたり、新鮮な有機野菜の食事をとったりしながら仕事をしたい、というニーズが富裕層にはあり、そこをうまく突いた形になります。


これまでご紹介した取り組みは全て私の友人たちの体験で、アマソナス州という狭い範囲でのことです。この狭い範囲でも色んな事例があるので、全国的にはもっと多くの様々な取り組みが成されていることでしょう。

もちろん全ての人や会社が新しい環境に適することができるわけではありません。しかし、現状を打開し、ピンチをチャンスに変えようとする人々の事例を知ることで、私たちにも何か新しいアイデアが浮かんだらいいな、と考えています。

また新しい動きがあったら、この場で共有させて頂きますね。ここまで読んで下さって、ありがとうございました!!


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