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第4回Zoomで健康 講演スライド(アルコールと健康)

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まず最初に、今ご自身が1日に純アルコール量としてどれくらいアルコールを摂取しているのかというのを把握していただくと、これからの話が分かりやすくなると思いますのでここで計算してみましょう。
計算式は、濃度(%)×量(ml)×0.8(比重)÷100です。
例えば、1日にアルコール濃度5%のビールを500ml飲む場合は  5%×500ml×0.8÷100=20gです。

ちなみに以下は目安です・・・・
ビール中瓶、ロング缶1本=500ml
ワイングラス1杯≒125ml
日本酒、焼酎一合≒180ml
ウイスキー シングル≒30ml

さてその量を意識しながら話を聞いてください。

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飲酒者は、正常飲酒者、危険飲酒者、有害飲酒者、アルコール依存症このような4パターンに分類されます。

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4つのパターンの分類の仕方ですが、
まず男性は週140g未満、女性は週70g未満であれば正常飲酒者となります。
次に、男性で週140g以上、女性で週70g以上飲酒されている方でアルコールが原因で病気になってしまっている人=アルコール関連疾患がある人(後で少し説明します)は有害な飲酒者、無い人は危険な飲酒者となります。
最後に、アルコール依存症かどうかは色々な質問票があり、その質問票の回答を元に診断します。
後で、皆さんには代表的な質問票に答えてもらいます!

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日本ではアルコール依存症の方は約100万人、有害・危険飲酒者は約1000万人いると言われています。

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アルコール関連疾患についてですが、このようにアルコールは60以上もの疾病や外傷の原因となることが分かっています。

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アルコール依存症、有害・危険飲酒者の方が非常に多く、またアルコールは多岐にわたる病気、事故、犯罪などを引き起こすため、アルコールによる社会的損失が社会問題になっていて、おおよそ年間3兆円の損失が生じていると言われています。
これは、はるかに酒税分を越えています。

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さて、ここでアルコール依存症かどうかについて見極めるテストを2つ、今からみんなでやってみようと思います。
1つ目は、CAGE質問票です。これは非常に簡易的な質問で、このテストでアルコール依存症の疑いがありそうということであれば2つ目のAUDIT質問票を行うといった感じです。

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CAGE質問票は、このように4つの質問からなり2項目以上当てはまればアルコール依存症の可能性あります。
では、やってみましょう!

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では続いて、AUDIT質問票をやってみましょう。
AUDITに関しては、全部で10つの質問からなりそれぞれの質問に対して0~4点と点数をつけ、最後に合計しますのでぜひ紙とペンをご用意ください。

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どうでしたか?
点数を合計してみてください。
7点以下の人は、問題ありません。
8点から14点の人は、問題飲酒ではあるがまだ依存症にはなっていないです。
そして、15点以上の人はアルコール依存症の可能性がありますので、是非専門医療機関を受診することをお勧めします。

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さて、話題を少し変えて男性週140g以内、女性週70g以内である正常飲酒者についてお話します。
よく、お酒は飲みすぎは良くないけど少量なら大丈夫とか、むしろ少量なら飲んだ方が体に良いということを聞いたことがあると思います。

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お酒は少量、特にワインなら身体に良いというのは、おそらくこの論文が発表され、メディアに大きくとりあげられたからだと思います。
このグラフは、横軸が国別のワインの消費量、縦軸が心筋梗塞の消費量です。
ワインの消費量の多い国ほど、心筋梗塞の死亡率が低いことが読み取れます。

さて、これを見てアルコールは身体に良い(少なくとも心筋梗塞を予防する)と言えるでしょうか?
ちょっと考えて見てください。

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このグラフに、日本を付け加えてみましょう。

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心筋梗塞の死亡率には、アルコール量以外に、食事内容、喫煙、肥満度や、そもそも病気になって飲酒を控える可能性などなどを考慮する必要がありそうです。

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その答えとなる、論文が最近は発表されたので解説します。
このグラフの横軸は一日当たりの飲酒量(1単位=純アルコール換算で10g)、縦軸は病気になるリスクです。
例えば、アルコール15単位(純アルコール換算で150g)の飲酒をする人は、飲酒を全くしない人と比べ、約3倍病気にかかりやすいという意味です。
このグラフをよく見てみると、飲酒量1単位(純アルコール換算で10g)までは疾患リスクの上昇はあるものの緩やかで、それより多くなると明らかにリスクは上昇する、と言えます。

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つまり非常に残念ですが、健康リスクを最小化する飲酒量は残念ながら0gであるということになり、少量なら飲んだ方が健康に良いというのは間違いということになります。(ただ、純アルコール換算で10gまでであればリスクはほとんど上昇しないと解釈しても良いと思われますが、少量なら飲んだ方が健康に良いというのは間違いということになります。)

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とは言え、お酒好きな人、お酒が生きがいという人がいると思います。
純アルコール換算で10gまでであればリスクはほとんど上昇しないと解釈もできますし、20gまでならリスクが劇的に上がるわけではないので、そういう方達は、禁酒により楽しみがなくなるよりは、それくらいまでなら楽しくお酒を飲んだ方がよいかもしれません。

ただ、ここで特に飲みすぎには要注意な人を紹介します。
それは、少量の飲酒で顔が赤くなってしまう人、癌の既往、家族歴がある人、高齢者、女性です。
今から理由を解説していきます。

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こちらは、節酒したアルコールがどのように代謝されるかを示した図です。
まずアルコールはアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解され、さらに主に2型アルデヒド脱水素酵素により酢酸となり最終的に炭酸ガスと水になります。
そして、アルコールを分解する2型アルデヒド脱水素酵素のアルコールを分解する能力は生まれながらにして決まっています。
アルコール分解能力が非常に高い野生型、能力が普通である不完全欠損型、能力が弱い完全で、日本人はそれぞれ50%、40%、10%の割合といわれています。

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こちらの質問に1つでも『はい』がつけば、不完全欠損型で、いずれも『いいえ』であれば野生型です。

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アルコール脱水素酵素の方も、アルコールを分解するスピードの能力をあらわし、その能力も3つに分かれます。
お酒が次の日に全然残らなければ高活性型、たくさん飲むと次の日に残れば活性型、頻繁に次の日に残れば低活性型となります。

そして、人のお酒を飲む能力はこのようにA~Eの5パターンに分かれます。
例えば、アルコール脱水素酵素も、2型アルデヒド脱水素酵素もその能力が高ければAタイプ、例えば、アルコール脱水素酵素も、2型アルデヒド脱水素酵素もその能力が低ければCタイプとなります。
皆さんは、どのタイプでしょうか?

それぞれのパターンにおいて注意事項がありますが、今回はB、Eパターン つまり2型アルデヒド脱水素酵素が不完全欠損型の人、つまり最初はお酒が飲めなかったけど練習して飲めるようになった人、お酒を飲むと赤くなるもしくは昔は赤くなった人に注目します。
ずばり、B,Eパターンの人は飲酒により癌になりやすい人達です。

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こちらのグラフの右側がいわゆるB,Eパターンの人達ですが、左側(A,Dパターン)と比べ飲酒量が増えると、癌の罹患率が高いのが分かります。
飲酒によって顔が赤くなる人、昔赤くなった人、さらにその中で、癌を患ったことがある人、家族に癌を患ったことがある人は特に飲みすぎには要注意です。

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続いて女性についてです。
女性は、男性と比べ一般的に、肝臓、体重が小さく、酵素活性も弱いと言われています。
また、女性ホルモンがアルコールの代謝を抑制することも知られており、男性よりも少量のアルコールで、また短期間で、アルコール依存症や肝障害が進展しやすい危険性があります。

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最後に高齢者についてです。
高齢者は、若年者と比べ一般的に、体内の水分の占める割合は低いためにアルコールの量が少なくても相対的に血中濃度が高くなりやすく、また若年者より肝機能が低下して酵素活性も弱いと言われています。
また、定年退職や妻(夫)との死別により孤独となり、飲酒量が多くなるリスクが高いと言われています。

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まとめです。
厚生労働省から健康を守るための12の飲酒ルールが示されています。
是非、実践してみてください。


次回の日程が決まりましたら、instagramで告知しますので是非フォローしてみて下さい。

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