ヒサノ@saku_hisano

作久野夢。 空中散歩と四拍子

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最近の記事

#「ただの怠惰な健常者」の集まり

「みなさん、ようこそお越しくださいました。誠にありがとうございます。どうぞごゆっくりと、ご歓談、ご飲食のほうをお楽しみください。簡素なものしか用意できておりませんが、そこはどうにか、ご容赦いただければと思います。なんせ主催している人間も怠惰なもので、ええ、前もってあれこれ綿密に準備するのは得意ではないので。  ええと、ここに集まられたみなさまは、わたくしと同じ、怠惰な健常者ということで、よろしいですね。皆様方におかれましても、日々生活をしていく中で、様々な困難に直面している

    • #良いニュースと悪いニュースと友人

       友人が部屋に入りざま、間髪入れずに問いかける。 「良いニュースと、悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」 「それじゃあ、悪いニュースから」僕は答えた。 「悪いニュース。それは、良いニュースなんて一つもないってことだ」 「それで」 「終わりさ」 「良いニュースは?」 「良いニュースは、悪いニュースなんて一つもないってことさ」 「良いニュースも、悪いニュースも、特になしってことか」僕は数回繰り返し呟いてから、納得した。 「そういうことだ」 「それじゃあ、

      • #ろくろ首&中指 〜意味内容を書き換える技法の試み〜

          ろくろ首  数学の問題を解いていた彼は、悩んでいた。  分からない難しい問題につきあたっている。  必死に頭を凝らすが、解答は見えてこない。  行き詰まった彼は首をひねった。するとそれを切っ掛けに、首がじわじわと伸びていく。  気がつくと、首という首がうねうねと部屋中を迂回して、頭部が同じ位置で机に向かっている。その表情は険しいままだ。  全国の学生、受験生、学者の部屋で、疑問が膨らむたびに、首は曲がりくねって伸びていく。    中指を立てる  とある少年

        • #お腹の音(むっつりエピソード)

             バイト先のイタリア料理店に行くと、中谷は先輩の村下に報告した。 「昨日、目的もなく歩いていたら、また、むっつりエピソード思い出したんですけど、聞きたいですか?」 「いいよ、お前のむっつりをくれ」村下先輩は手招きをした。 「わかりました。高校の頃なんですけど、教室ってけっこう狭かったですよね。それで、人との距離も今とは違っていて近くて。分かります?」中谷は説明しだした。 「そりゃもちろん。なんか、そう言われて思い出すと、ちょっと甘酸っぱくて懐かしいな」村下先輩は

        #「ただの怠惰な健常者」の集まり

          #最後の勇気

           遠く、山の向こうのそのまた向こうで戦争が起きました。隣の国とその隣の国が、きっかけもわからずに戦いはじめたのです。  国の兵隊たちは、自分たちの場所を取られまいとして、国中ぐるりと戦車で取り囲みました。そこから長い長い戦いになりました。  ある日、ジャムおじさんたちの暮らす山間にも、兵隊たちがやってきました。ジャムおじさんたちが驚いていると、偉い兵隊の一人が、国のためにみんなの持ち物を差し出すように言いました。みんなの役に立つからということで、アンパンマンたちのマントも

          #人生楽勝

           志村と大森は、餃子をつつきながら、中華屋の壁際のテレビに流れるニュースを眺めていた。  ニュースでは、誰かが謝罪している様子が流れていた。  しばらく見ているとどうやら、とある有名人が「人生楽勝」と印字されたTシャツを着ていたことが火種となり、「楽勝じゃない人もいる」、「不愉快だ」、「苦労している人への配慮が足りない」という苦情を受け、謝罪する運びになったようだった。 「どうでもよくない?」志村は大森に聞いた。 「世の中には文字の意味を文字通りに受け取ることに義務を

          #ヒロアカ・峰田実の才能(むっつり編)

           場所はプールサイド。デッキチェアで優雅にくつろぐ峰田実(みねたみのる)。  目の前のプールでは水着美女たちが大きなビーチボールを水面に落とさないというルールのもと、きゃあきゃあ言いながら楽しんでいる。  不意に、大きく弾かれたビーチボールが飛んでくると、峰田のお腹のうえに着地する。  水着美女たちは、ボールを追いかけるようにプールからあがると、峰田のもとに一斉に駆け寄ってくる。胸元を軽やかに跳躍させ、峰田の心を踊らせる擬音語をまといながら、めいめいにプールサイドを駆け

          #ヒロアカ・峰田実の才能(むっつり編)