見出し画像

お正月とサラミ

昨年末に、普通の買い出しでスーパーへ行った時のことです。食料品売り場はお正月向けのおめでたい食べ物がたくさん。

今日は特にそういうのを買う予定はないし、むすこずが毎日食べるベーコンやハムを求めて売り場へ行くと…上段にサラミがありました。

「15cmくらいで、なかなかいいお値段がするもんなんだなぁ……」
そう思って、じんわり、涙が出そうになった。

・・・

子供の頃のお正月は、毎年家族で父方の祖父母宅へ行くのが恒例でした。

四角いコタツに7人ぎゅうぎゅうに座って、コタツのテーブルの上にはちょっとしたお節料理に、栗きんとんと紅白のかまぼこ、回転寿司で見るよりずっと立派なマグロのお刺身。おばあちゃんと叔母さんが「何個食べる?」と聞いてはトースターでせっせとお餅を焼いて熱々で出してくれるお雑煮。ニコニコ座って、横の棚からお年玉を出してくれるおじいちゃん。
そして、スライスして綺麗にお皿に並べられたサラミ。

私はサラミが大好きで、でも普段のご飯で出ることもないので、毎年お正月にはこのサラミをぱくぱく食べていました。
祖父母もわたしが好きなのを知っているのでどんどん出してくれ、残ったサラミはお土産にもたしてくれました。
それから大人になっても毎年のお正月はだいたいこんなメニューで、サラミも必ずありました。

・・・

そんないつも優しかった祖父母ともついに他界。
祖母は4年ほど前に、祖父は昨年(2020年)でした。

小学生の頃ぼんやりと「いつか、おじいちゃんもおばあちゃんも、いなくなる日が来るんだよなぁ…」と思っていた時がついに。当時ぼんやり思っていたより大人になってからだったけど、それでも早く感じてしまう。

「さくが好きだから」といつも用意してくれたサラミ。
毎年お正月に食べていたサラミ。
たぶん、自分ではそうそう買わないであろうサラミ。

・・・

祖母のお葬式の時は泣きました。
長男の妊娠中だったけど、自分はもちろんまだ誰も気付いてない時でした。
祖父の時は老人ホームにかけつけて、みんなで最後のお別れをした時に少し泣けたけど、いざ式の最中は息子2人がちょろちょろしっぱなし、長男に至っては歌い出す始末で全く落ち着かず、泣く隙もありませんでした。

そんなこんなで数ヶ月。
食品売り場で目に入ったサラミ。
自分のことをニコニコ優しく想ってくれていた、毎年サラミを用意してくれていた祖父母はもういない。
あの毎年繰り返していたお正月も、もう来ない。

上段にボンッと置いてあるサラミを見た瞬間そんな想いが頭を巡り、これからやってくるお正月ムードで賑わっている店内で、ちょっとだけ泣きそうになりました。

こんな日常の中でふと、いないってことを実感するんだなぁ。きっとこれから、色んな場面で何度も何度もこんな経験するんだろうなぁ。
サラミで悲しくなれるほど、沢山の優しさをもらっていたんだなぁ。

ありがとう、本当にありがとうと感謝して、毎日家族と賑やかに暮していることにも感謝して。
この毎日の有り難さを忘れないように。
大事にできるように。


今度サラミ、買おうかな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?