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キュー王立植物園からのオックスフォード再訪 【Play back Shamrock #4】

※ご注意※ 本連載は2020年の同時期に経験した出来事を1年後に振り返る趣旨で公開しており、掲載の情報等は2020年当時のものです。

(見出し画像:Kew Gardensの温室外観)

 旅の3日目、1月11日はロンドンを拠点にした観光の早くも実質的な最終日だ。翌日12日はほぼ丸一日かけてダブリンへ移動する。
 今日はホテルの朝食から健全なスタートを切ることができた。バイキング形式ではあるが、English Breakfastでお馴染みの面々がプレートに並んだ。ところで、イギリス料理は「まずい」ことで有名だが、だいぶ誇張された表現のように思う。English Breakfastは私のお気に入りで、イギリスを訪れた際にはどなたにも一度は味わってみていただきたい。

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写真:この日の朝食

 ただし、イギリス料理に対する否定的な考え方に全面的に反論するつもりもない。レパートリーに欠ける点は確かに否めないかもしれないからだ(全てを知っているわけではないので「かもしれない」と表現しておく)。どのホテルやB&Bに宿泊しても”English Breakfast”は大抵同じメニューで構成されている。何連泊しても基本的にはそうなるだろう。2年前にロンドンに1週間ほど滞在した時は毎朝ほぼ同じメニューが提供され、終盤には流石に飽きが来た記憶がある。
 また「まずい」との評判については、しっかりとした味付けがされておらず(濃さの話)、日本食のような旨味をあまり感じられないなどの点からそのように感じる人もいるのではないかと思う。サンドウィッチなども日本で売られているものと比較すれば、日本のものがいかに味にこだわって作られているか実感することが確かにある。しかし少なくとも、「まずくて食べられない代物」にしか遭遇しないわけではないだろう。

 さて、前置きが長くなったが今日の行程の中身の説明だ。午前中はロンドンにあるKew Gardens(キュー王立植物園)を見学する。その後は列車を使って移動し、およそ2年ぶりにオックスフォードへと向かう。

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写真:Kew Gardens駅の駅名標

 地下鉄を利用するものの、Kew Gardensはイーリングからほど近くに所在している。入り口は複数箇所ありいくつかの駅を利用することができるが、今回は中央部に最も近いKew Gardens駅から徒歩で向かった。植物園までは住み心地の良さそうな閑静な住宅街の中を歩く。
 Kew Gardensは植物園でありながら世界遺産に登録されている。18世紀以来、世界各地の植物が持ち寄られ、学術的にも芸術的にも高く評価され今日に至る。運営費用のおよそ3分の1はイギリス政府が支出しているが、半分以上は入場料や寄付金などが支えているという。植物だけでなく野鳥などの動物や建築物も見所で、それぞれのコンビネーションが織りなす四季折々の情景が楽しめる(*)。

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写真:温室内部の様子

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写真:ジャパニーズゾーン。海外にいることを一瞬忘れそうになった

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写真:奥に見えるオレンジ色の建物がKew Palace

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写真:鳥たちが日向ぼっこをしている

 ここで紹介したのはごく一部だ。時間の制約もあり全て見て回ることは叶わなかったが、広大な敷地内に多数の見どころがあり、丸一日いても楽しめるスポットだと感じた。公式ガイドブックも販売されており(上記*部分はこちらを参照)、文字情報と合わせて園内を回るとなお楽しめるだろう。

 Kew Gardensを後にして一旦イーリングに戻ったのち、オックスフォードへ向かった。午後から訪問ということで時間の制約もあり、2年前に訪れて印象に残っているスポットに再び足を運んでみた。

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写真:オックスフォードの代表的な建築物”Radcliffe camera”

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写真:オックスフォード中心部にて。ケンブリッジよりも伝統的な建物が多く感じられる

 オックスフォードでぜひ一度は訪れておきたいスポットの1つが書店”Blackwell’s”だ。外観は特段目を引くわけではないが、この書店の特徴は地下にある。

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写真:Blackwell’sの外観

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写真:Blackwell’sの地下

 地下空間に多数の書籍が陳列されている光景はまさしく圧巻である。書店内に写真撮影のためのスポットが設けられていること自体珍しいことだと考えれば、その特殊性をご理解いただけることと思う。

 さて、オックスフォード観光に半日しかかけないのは実にもったいないとも思うが、今回の最大の目的はオックスフォードを見て回ることではなかった。今回、私をこの地に誘ったのは2年前のある選択の「後悔」だった。

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写真:オックスフォードで今回購入したグッズ

 今はインターネットで大抵のものは手に入るので、探せば入手できたかもしれないが今回はこのグッズ(写真右)を買いに来たというのが最大の動機だった。これは科学史博物館で売られている天球儀のレプリカである。前回の訪問時に買うか否かを迷った末、買わないという判断をしたものの、結局後になってそれを後悔したのだ。
 「たかがレプリカくらいで」と思うかもしれないがかなり精巧に作られており、初めて見た時は人知れず心を奪われた。わざわざ現地に足を運ばなくとも入手自体はできたかもしれないが、これを現地で購入することにこだわった結果、再度の訪問という流れに至ったのである。ちなみにこちらのレプリカは今も私のデスクの上に飾られている。
 写真左の本はボードリアン図書館のショップで今回初めて目にして購入したものだ。時と場にもよるが、イギリスではしばしば“Tea of coffee?”と聞かれる(どちらを飲みますか、という意)。そのフレーズが頭に染み付いているからこそ、読んでみたいという衝動に駆られた。オックスフォード大学はグッズの作り方も超一流だと感心させられる。
 ということで2度目のオックスフォード訪問は駆け足ながら、所期の目的を達成し満足に終わった。内容満載の1日になった。

 翌12日はいよいよ今回のプログラムの拠点になるアイルランド・ダブリンへ移動する(そう、これからが本番だということを忘れてはならない)。しかしながら12日の出来事だけで1つの記事を書くには十分な内容がなかったため、現地の大学のキャンパスの様子なども織り交ぜつつ、少々間を置いて次回分の記事を投稿することにしたい。

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写真:Ealing Broadway駅の運行情報案内板。駅員が書いたのかいたずらなのかは判断できないが、心に刺さるフレーズがそこにはあった

 アイルランドに入る前にイギリスに数日間も寄り道をすることには賛否両論あったかもしれない。しかし心身ともに盛り上がった状態で本番に入るという観点からはむしろ良い効果がもたらされたのではないかと我ながら大いに頷きつつ、アイルランドでの日々が幕を開けることになる。それでは引き続き乞うご期待。

*Reference: The Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens (2019) KEW GUIDE. Chicago: The University of Chicago Press.

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