見出し画像

ヨーロッパ大陸初進出はオランダへ 心ゆくまで風車を堪能 【Play back Shamrock #15】

※ご注意※ 本連載は2020年に経験した出来事を1年後に振り返る趣旨で公開しており、掲載の情報等は2020年当時のものです。また、第10回以降は当初の公開予定よりも大幅に遅れて公開に至りました。

(見出し画像:キンデルダイクの風車群)

 3月7日はヨーロッパ大陸初進出となるオランダ訪問を決行した。決行という表現をあえて使ったのは、この頃には既にヨーロッパ各地で新型コロナウイルスが拡がり始めていたからだ。前の週末にはイタリア訪問を取りやめたばかりで、今回も前日までオランダ国内の感染状況を見極めた上で渡航を判断した。まだ散発的ではあったがこの頃にはオランダでも感染者が確認され始めていた。
 今回のオランダ行きの目的は実質的には1つで、世界遺産にも登録されている風車群を見に行くことだった。ヨーロッパ滞在中に最も行きたい場所の1つとして、長らく訪問を夢見ていたのだった。そして今回、ようやくその長年の夢の1つが叶うことになった。
 この日訪れたのはキンデルダイクの風車群。アムステルダム・スキポール空港から鉄道とバスを乗り継いで、この日も恒例の日帰りの行程で訪問した。人生初のヨーロッパ大陸を日帰りでというのは実にもったいないことだが、時間と予算の都合上、致し方なかった。

画像1

写真:スキポール空港から列車に乗車。右側通行の違和感を禁じ得ない

 またしてもダブリンを出発したのは朝早い時間帯だ。スキポール空港には朝9時頃に到着した。
 ところで、今回の旅は私にとって「初物」づくしだった。ヨーロッパ大陸初進出とは先に書いたが、これ以外にもかなり大きな初物が並んだ。まず、日本を除いて非英語圏を訪れるのが初めてだった。記憶のあるなしにかかわらず、これまでの人生で訪れたことがある国や地域はハワイ、オーストラリア、イギリス、アイルランドといずれも英語圏だ。
 そしてもう1つは右側通行だ。幼い頃にハワイを訪れたことはあったが、記憶がほぼない。よって車が道路の右側を走る国を訪れるのは実質的に今回が初めてと言って良い。いくつもの初物づくしの旅ということで、緊張感も一段と高かった。
 なお、相互の国々の間の移動に際して国境でパスポートチェックがないシェンゲンエリアに足を踏み入れるのも今回が初めてだったが、域内で国境を越えることはなかったのであまり実感はなかった。

画像2

写真:車窓からは早速風車が見えた

 今回の目的地であるキンデルダイクの風車群へはロッテルダムを経由して向かう。スキポール空港からロッテルダムまでは列車で30分ほどだった。車窓から見えた風景は開けていた。あくまで近代的なものだが、風車の姿も確認できた。
 洗礼というほどの洗礼ではないのかもしれないが、非英語圏ということで言葉の違いには早速気づかされた。列車内のアナウンスだ。日本で鉄道を利用する際には大抵、自動音声で英語の案内も流れる(これがどれほど役に立っているのかは議論の余地もありそうだが)。しかしオランダでは(少なくとも私が利用した列車では)英語のアナウンスは行われず、駅名などに目を凝らさなければ目的地を通り過ぎてしまいかねなかった(オランダの人々はかなりの程度英語を話せると思われるので、いざとなれば周囲の人に尋ねるという方法はあったのだが)。
 私が列車を降りるのはRotterdam Centraal駅という非常に大きな駅だったので結果的にそこまで問題にはならなかったが、聞き慣れない言語だけが流れてくる車内放送は私の不安感を増大させた。

画像3

写真:ロッテルダム中心部を走るトラム

 ロッテルダムからはトラムとバスを乗り継いでキンデルダイクに移動した。慣れない土地でいくつもの交通手段を乗り継いで目的地まで向かうのは一見すると面倒だが、面白くもある。ただしトラムやバスでも、英語のアナウンスはほとんどないのだった。地図や風景と睨めっこをしながら、なんとか到着することはできた。ロッテルダム中心部からキンデルダイクまでの所要時間は1時間少々。
 さて、今回訪れるキンデルダイクの風車群は世界遺産だ。ならば多くの観光客がいて現地に向かうのはそれほど困らないのではないかと思われるかもしれない。しかしこの時期はオフシーズンで、観光客の人波に乗って行けば自然に辿り着けるというような状況ではなかった。むしろトラムやバスには観光客らしき乗客はほとんど見受けられなかった。

画像4

画像5

写真:立ち並ぶ風車を望む

 ようやく本題に入ることになるが、ここで風車群のお目見えである。バスを降りて最初に風車群が見えた時は興奮した。
 キンデルダイクではおよそ数キロメートルの範囲に多数の風車が集まっている。自動車が必要なほどではないが、歩いて回るのには少し距離がある。私は貸自転車を利用した。しばらく自転車には乗っていなかったため、風が心地よかった。

画像6

写真:水鳥との組み合わせは絶妙

 この日は運良く天気にも恵まれ、青空の下で風を受けて回る風車はいつまででも眺めていられそうな気がした。水辺にいる鳥などとの組み合わせも和やかだった。

画像7

写真:風車の内部

 キンデルダイクでは一部の風車が展示施設になっており、風車の中での暮らしや風車の仕組みなどについて知ることができる。風車の歯車が回る様子を間近で確認することもでき、好奇心を駆り立てられた。
 いろいろと歩き回っている間に時間はあっという間に過ぎ、キンデルダイクにはかれこれ4時間ほど滞在した。この日の究極の目的は風車を見ることだったので後悔はしていない。むしろお腹いっぱいという感じだった。チューリップの花が見頃を迎える時期にぜひもう一度訪れたいと思った。

画像8

画像9

写真:ロッテルダム中心部

 そしていよいよ帰路につく。基本的には来た道を引き返した。バスとトラムを乗り継いでロッテルダム中心部まで戻る。
 空港まで戻るにはまだ時間があったので、ロッテルダム中心部を徒歩で散策することにした。歴史的な建物も見受けられたが、非常にモダンな街だという印象を受けた。
 今回は日帰りの旅程を組まざるを得なかったが、首都のアムステルダムなども含め、オランダには改めてじっくり訪れたいとも思った。

 そしてほどなくしてスキポール空港へと戻り、ダブリンへと飛んだ。日本への帰国を2週間後に控え、そろそろ土産物のことを真剣に考えるタイミングでもあった。スキポール空港で目についたのはチーズの山。至る所にチーズの塊が山積みになっていた。酒が好きな父へのお土産にちょうど良いと考え、常温保存できるものを購入した。
 こうしてヨーロッパ大陸・非英語圏初進出の日帰り旅行は無事に終了した。冒頭でも触れた通り、ヨーロッパではこの頃、新型コロナウイルスが徐々に猛威をふるい始めていた。今回のオランダ訪問が実質的には最後の外国訪問になるのだった。最後に風車群をこの目に焼き付けて終われたことは、まだ幸運だったのかもしれない。

 次回はアイルランド滞在中の食についてまとめてお伝えする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?