母のこと

第一子の子育ては親にとって初めてのことばかりで、不安や緊張感を伴い、その空気が子どもに伝わってしまいがちなのだそうです。確かに、母と私はイベントごとに「どうしたらいいの?!」と右往左往していたように思います。

私は、「誰かに何とかしてもらいたい」という依存心の強い性質で、いつまでたっても母親を頼っていました。その頼り方は無茶苦茶で、例えばTOEICで思うような点数が取れないと「なんで、いい参考書を教えてくれないのよ!!」と八つ当たり。戦前生まれの母は、英語が得意だったわけでもなんでもないので「そんなこと言われても・・・。」と困惑していたと思います。

私が20代の後半、母方の親戚が亡くなり、伯父や伯母が一同に会しました。お通夜の後、次の日の葬儀の予定を皆で確認していると母(うめちゃん)に声がかかります。「うめちゃん、明日早起きやけど、大丈夫?」「うめちゃん、来れる?場所わかる?」母のお姉さんたち(私の伯母たち)が、うめちゃんが明日の葬儀にちゃんと来られるかを本気で心配しているのです。母(うめちゃん)は、「うん。大丈夫。」と答えています。さらに、伯母は傍にいた私に「うめちゃんなんかね、赤ちゃんだったんだから。そりゃ心配しますよ。」とお姉さん風を吹かせました。

私はこの時初めて、母が『頼りない末娘』なのだ、ということに思い至ったのでした。あぁ、そうだったのか、と申し訳ない気持ちがこみ上げてきました。母自身は、お姉さんたちにヤイヤイ言われて育ったのでしょう。私の母となって、娘である私に「導け」といわれて、必死で導いてくれたのでしょう。そういえば、母は「私は、兄弟の下のほうだったのでねぇ。」とよく言っていました。「引っ張っていくのは、慣れていないのよ。」という言葉を飲み込んでいたのでしょう。子育てという未体験ゾーンで、どんなに心細く大変な思いをしていたのでしょうか。私は大人になっても、何か結果が思わしくないと、ほとんど関係ない母にブリブリ文句を言って八つ当たりをする超わがままな娘でした。

この日以降、私は「自分のことは自分でやろう」と思うようになった気がします。成果が出ないのは誰のせいでもなく、自分の力不足だ、とやっと思えるようになりました。お恥ずかしい限りです。育ててくれた母には、感謝しかありません。

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