とりとめ日記(15)のうかんフライデー

十一月某日。お布団に横たわるおばあちゃんに「いってきます」と言って仕事に出かけた。どうしても外せない仕事があったのと、休むよりやるべきことをきちんとできることを、その辺りに漂っているおばあちゃんに見せたかった。移り香であろうか、仕事中にたびたびお線香の匂いを近くに感じた。ああ、おばあちゃんがいる。涙が溢れないようまばたきをした。
仕事から帰ってくると、納棺が終わっていた。おばあちゃんはうっすらと化粧を施していた。
納棺後は、手に触れることができない。もう一度握りたいと思うけれど、生者の執着は逝く人を悩ませる。昨夜たくさん握ったぬくもりを思い出す。
ほんのり温かった指先を、この先何度も思い出すのだろう。

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