『次行かない次/ゆっきゅん』大切にしたいものは自分で決めていい、失恋バラードの革命。
我らが孤高のDIVA💎がまたやってくれた。
"DIVA"という言葉に新たな概念を生み出したゆっきゅんが、今度は"バラード"に新たな革命を巻き起こしました。
近々で発表した2ndアルバム『生まれ変わらないあなたを』。
仕事辞めた人の歌で始まってルームシェア解消の歌で終わるこのアルバム。
"共感"が大きな要素のひとつである"J-POP"の世界において、斬新な視点で新しい共感を生みまくる超新星だが、こちらに収録されている失恋バラード「次行かない次」。
この曲が刺さりすぎて、デビュー曲「DIVA ME」を食らったぶりに、今、筆を動かすことを余儀なくされています私は。
ゆっきゅんのデビュー曲「DIVA ME」と、ゆっきゅんが生み出した"DIVA"という概念についての詳しい記事はこちら↓。
9000字近くありますが、まずはこちらを読んでいただければ、ゆっきゅんひいては"DIVA"の解釈が深まるかもしれません。
さて以下、「次行かない次」の歌詞について、私的な感想を述べていきます。
あくまで私個人の感想なので、それが正解かどうかは問題ではありません。
解釈は、この曲に心掴まれたDIVA達(あなた方)の数だけ存在するのだから。
っていうかまずタイトル。
この短いフレーズだけでゆっきゅんの"DIVAみ"が詰まっている珠玉のタイトル。
バスケの試合中によく聞く「次行こ、次!」をオマージュして、失恋の切なさに絡めるセンス。
そして"次行けない次"、でなく、"次行かない次"なのが素晴らしい。感情に流されるのではなく、あくまで自分の意思で、次行かない。大切な恋だったのだから、終わりだってちゃんと大切にする。気丈な立ち振る舞いがより涙を誘う、少しの違いだけど絶妙な違い。
それにDIVA(あなた方)はいつだって自分の意思で自分の心を選ぶ。尊いからね。
一発目で目を惹くフックとしても最高の出だしであり、主人公の悲しみや怒りややるせなさを表現する詞としても最高の出だし。
「恋はバスケとは違うんだから、そんな簡単に切り替えられないよ」という、巧みなレトリック。DIVA(ゆっきゅん)の気付き・視点には惚れ惚れするよ、ほんと…。
心が進んでいかないのに日々は進んでいく、心が止まっているのとは裏腹に身体は暮らしをおこなう。そのチグハグさに胸が痛い。
"電球替える"という自身の身体の行為と、"ベランダの花も咲く"という自身の外の世界の話を、美しく並列しておく入念さ。DIVA(DIVA)は細部に宿る。
来た、革命のフレーズ。美しすぎる。
まず"最後"に手を振って、 "始まる"という、終わりと始まりの美しい対比。
そして"たぶん"だなんて、急に曖昧ぶっているけれど、この苦しい夜が長くなることなんて本当はわかっているはずだろ。強がるなよ。なんて儚く気丈なんだ。
それをなんで大丈夫かって。去年は買わなかった塩バニラを、今年は今年の気分で買ったんだ。あたしはいつだって今を大事にできるのだから。だからこんな夜だって大事にできるっていやちょっと待ってそれ、切なすぎるて。
そしてこれは私が感じた革命的な点なんですが、「今を生きている」的なフレーズって、"過去を振り返らず今を生きる"的な、過去に対してのカウンターとして用いられることが多い印象があります。
しかしこの曲の主人公は「次行かない次」と、過去ではなく未来に対してのカウンターとして"今"を使っています。
ここがこの曲で扱っているテーマで、いちばん痺れた部分かもしれない。
ああ、たくさん振り返ってもいいんだ。前を向かなくてもいいんだ。
いまだかつてない視点での優しさをもったバラードだと思いました。
あと"私"でなく"あたし"なのは、やっぱりaikoさんリスペクトかなあ。
最高のサビ。最高のサビ。思わず2回言ってしまう大切なサビ。
"朝が"をブレイクで残す余韻に躊躇いを感じつつ始まるサビ。
朝が来るまでは夜を過ごすよって、文字通り、無理に時を進めることなくこの夜を過ごすことを表す情景描写でありながら、悲しみの時間に身を浸していくことを比喩している、この曲のサビに持ってくるべき印象的なフレーズとして完璧な一文。美し〜〜〜。
気が済むまでは気が済まないよ、当たり前だよ。でもそんな当たり前のこと、意外とみんな許してくれないよね。それは周りの親切な友達かもしれないし、忙しい日々や仕事や、環境かもしれない。早く割り切らないと進められない。でも、気って、無理に済まそうと思っても、済むまでは済まないの当たり前だ。当たり前なのに忘れがちなことを言語化してくれて、いつもありがとう。
嗚呼、J-POP。サビでしっかり締めてくれるのありがたい。あと普通に泣く。
忘れるまでは覚えてたいよって、言いたいことハッキリ言ってくれた後に続く、リュックのジッパーエピソードの具体例〜〜〜。胸、痛〜〜〜〜〜〜。
"あたしの大切な失恋 したいようにする"で最後にまたキッチリ締め。あと意志。ああ気丈。でも儚いよ。強く言い切っておかないと揺らいでしまいそうな、切なさが滲む。普通に泣く。
文面的には強く言い切っているのに、なぜ切ない余韻が残るのか。作詞の妙、音楽の魔法。
軽くワウをかましたチャーミングなギターソロ間奏、ありがとうございます。たぶん長そうな夜が目に浮かびます。
そして二番。
やっと一番が終わったのに二番出だしから泣かせないでください。
二番は一番に比べて描写の抽象度が上がるので解釈が分かれそう!DIVA(私)の解釈で進めます。DIVA(あなた)には、DIVA(あなた)の解釈。
私は君のことを恋人として大切だけど、君は私のことを違う形で大切だったのかもしれない。同じってそういうことかな。それとも、どんな形であっても、私は君のことが大切だという意味での"同じ"かもしれない。わからない。でもどっちでもいい。とにかく、この一文の持つ儚さだけで、意味なんてわからなくても俺は泣いちゃう。
あーーーーーー。無理。
君の言動や行動、その端々から、あなたの言いたいことや優しさを掴もうとするのはこちら側の努力だよ、そんな握力ってなんて悲しいんだろう。
ここでいう言動や行動っていうのは、付き合っている間のことなのか、別れの予感がし始めた時なのか、それとも別れの最後の瞬間のことなのか。それもわからない。でもどうでもいい。どのことを指してたとしても、泣ける。
え、凄くない?ゆっきゅん。解釈の幅がいくらでもあるのに、出口はおんなじなの??作詞、上手すぎない???
待って待って、無理無理無理。あーーーーーー。無理だって言ってるじゃんやめてよ。
"友達でいたいと言わない公園"やばすぎ。世界一やばい公園認定。
「別れても友達でいようね」っていう、たぶん、君の優しさだったのに。あーあ。でも君のそのやさしさにもう疲れちゃったよ、あたしは。だから、友達でいたいなんて言わなかった。
お別れも苦しいけど、友達に戻るも苦しいよね。何もなかったことになんて、したくないし。
"あたしはまだ後悔できない"で、もう号泣。
そうだよ。自分で選んだその選択を、少なくともこの夜は、後悔できないよ。
胸、痛ーーーーーーーーー。
あと疲れて"しまったぁ"の歌い方、いいよね。
そして二度目のサビ。
"調べればわかるような話 もう聞いてくれないの?"
ゆっきゅんの光のフレーズ。心に引っかかる日常を切り取るのが上手すぎる。作中にまったく出てこない君の人柄を匂わせるのが上手すぎる。作詞が、上手すぎる。
あ〜〜〜〜〜〜泣きのCメロ。ゆっきゅんは『深海冷蔵庫』構造って呼んでる。嗚呼J-POPありがとう構造のひとつ。具体的な情景描写を淡々と連ねる泣きのウルトラC。
"冬服の似合う夏生まれ"という君の要素の切り取り方。そこを切り取っちゃう目線から、主人公の人格もチラ見える。一行で二度おいしいゆっきゅんの卓越作詞センス。DIVAすぎ。
ここから君の愛おしかった描写が続くけどいちいち切り取る部分がいじらしくて憎い。
"ルール知らないスポーツ観て泣いて"も最高。君との日常の描写として、最高〜〜〜。
ひとりじゃやんないもん、そんなこと。君がいるから、ルール知らないスポーツでなんとなく盛り上がってみて、泣いちゃったりもするんだよ。ぐあ〜〜〜、胸痛。
"七月をなながつって読まれる度に 君と生きてるって感じたの"、天才すぎない??????
君と生きてるって感じるのって、わかりやすくドラマチックなことばかりじゃなくて、自分だけが気になるとことか、自分だけ気付くとことか、そういうありふれたことが自分だけには愛おしいって、そういうオリジナルの瞬間にあるよね。
ああこの人、いつもなながつって読むなあ。そういうことを、ずっと覚えてる。
"傷つけることを何より恐れて"大好き。本当に、大好き。
"傷つくこと"じゃなくて、"傷つけること"なの、本当に大好き。最高。ありがとう。
傷つくことより傷つけることの方が怖いよ。それってちゃんと愛だよ。
でもさあ、なんか俺、ここにすごい切なさを感じちゃって。
ここまでの描写で、主人公ってずっと君の余白を真に受けたり、君を傷つけないように気を払ってきたり、なんかずっと気を遣ってるなって感じもしてしまって。
そしてその次の"同じ映画を何回も観ていた"。
これってそのまま、同じ映画を繰り返し観ることを好むような主人公の性格や気質を表しているかもしれないけど、
君を傷つけないようにって同じような日常を君と過ごしていたとすると、なんかそれが物足りなくて君に別れを告げられてしまったのかなとか、色々思ってしまって。
ここまでの描写が活きて、後半のこの2文でそこまで考えさせられてしまって。
なんか食らってしまった。
そうしてフラフラの状態に襲い来る、決めのフィニッシュブロー。
"毎日毎日好きだったし"
ここまでさんざん色々なレトリックや巧みな描写を使ってきて、最後にどストレートなこれ!!!!!!リング端まで吹き飛んで一発KOされてしまった。
ラスサビでどストレート。王道だけど、みんな大好き。お見事としか言いようがない。
そしてダメ押しの決め。"次行かない次 次行かない"。悲哀のシャウト。
涙を流しながら拳を突き上げてしまいそうな、完璧最強クリティカルヒット。ここで曲タイトルを持ってくるの、ずるいよ、ずるい…。そして冒頭1行目とラスト1行で歌詞が対になっている、なんて美しい構造。DIVA(DIVA)は、細部に、宿る…。
そしてゆっきゅんの公式ライナーノーツに以下のような記載がある。
私もここ聴いていて、「ゆっきゅん最近つらい失恋した…?」と思っていたので、図らずとも答え合わせをしてもらった形となる。
ラスサビのこの歌唱だけで、とっても宝石だ。
心を落ち着けられないまま、轟音の泣きギターソロが来る。
YouTubeのMVのコメント欄に以下のようなものがあった。
なんか本当にそうだなって思って、とっても素敵な文章だなって思った。
ゆっきゅんに「ゆっきゅんの曲を聴くと胸が痛くなる」と伝えたことがある。
そしたら「胸の痛み、和らげたいのにー!!!!!」と返ってきた。
そっか、曲が代わりに泣いてくれるんだって思ったんだ。
ゆっきゅんって、ほんとにファンの方もDIVAすぎる。
かつて悲しみとか切なさとか感傷とか、そんなものを持ってても無駄だって言われたことがある。
その度に「無駄なものって持ってちゃダメなのかな?」って思ってた。無駄なものだって自分の持ち物で、自分の一部なのに。
でもこの曲で教えてもらった。そうだよね、自分の大切なものは自分で決めていいんだよね。
ゆっきゅん、ありがとう。たぶん長そうなこの夜、大丈夫。抱きしめてもらったよ。
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