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短くて小さな夜。

川沿いにあるリバーサイドという名前のアパート。
小学校で植えさせられたであろう、袋を被った朝顔。
なんの意図を持って設計しようと思ったのかさっぱり分からない、同じ顔をして何重にも連なっている家々。
等間隔に設置された街頭は、この夜中に誰を照らしているのだろう。


この静かな街にこんなに人いるか?というくらい電車から人が降りていくのを見てきたけれど、なるほどこれは確かに住宅街といった感じだ。


毎日仕事のことで頭をいっぱいにしているが、こうして徒然なるままに散歩に出て思いついたことをnoteにメモして歩く夜も悪くない。
昔なら、夜に散歩なんて彼氏がいないと怖くて出来なかったけれど、こんな幼稚園児の運動服みたいな袖のTシャツとジーパン姿の女、誰も襲わんだろ。
とはいえ人影が見えると怖いものね。
私のヒトリノ夜を邪魔しないでください。
理不尽ですが。


幼い頃よく父と夜のサイクリングをしていた。
補助輪をがたつかせながら。
補助なしじゃ自転車に乗れないくらい幼い年齢の子供は、何が楽しくて夜中に自転車を漕いでいたのだろう。
毎回買ってもらえる、ペットボトルのキャップにストローを指すタイプのカフェオレが目当てだったのだろうか。
如何せん、あの時父の誘いを断らなかった自分を褒めたい。
あの夜の日課は、後に数少ない父との思い出になるから。


今となっては一緒に歩く相手もおらずストロング缶を片手に文章を書きながら川辺を歩いている。それはそれで楽しい。


私、独り言を話し出したらうるさいだろうな。
頭の中はずーっとおしゃべりしていて。でもなんのオチもない、ただそこにある日常を言語にしているだけだから、人に話すのを辞めてしまった。人間ってオチを求めるものだからね、何故か。
オチのない何の変哲もない話を聞いてくれるのが彼氏がいる特権だと思っていたけど、あれらは元彼たちの優しさだったんだろうな。ありがとね。


こういうなんてことの無い夜が後々記憶に残ったりするから不思議だ。
350ml分の、短くて小さな夜だった。

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