藝大DOOR 薬物経験者の体験を聴く
藝大DOORで必修のダイバーシティー実践論。
当事者の声を聴くことを中心に組まれた講義。
今回は、Kさん。
Kさんは4つの側面からご自身をマイノリティーだ
と自己紹介して話を始めた。
同性愛者
HIV感染者
執行猶予つきの犯罪者
薬物中毒者
順をたどると
同性愛者であり、そのパートナーから薬物を勧められて、使用し始め、
中毒になり、逮捕された(結果、犯罪者というレッテルがつく)
という流れになる。
HIVの感染については、セックスで感染したのか、
注射針を複数で使用したために感染したのかよくわからない、
とご本人。
薬物を使用した状態でのセックスが好きだったので、
セックス=薬物使用だったために、どっちが先かがわからない、
という話だった。
そして、同時に、「薬物を使用した状態でのセックスが好き」という意味では、薬物依存だけでなく性行為依存でもあるという自己分析をされた。
Kさん見る日本の社会。その住みにくさ。
セカンドチャンスの与えられない厳しさ。そんな話が中心だった。
有名人が薬物使用で逮捕されるときのメディアのバッシング。
それを見ているだけで精神的に落ちる中毒者は多いという。
正義と悪の間に大きな溝のある日本の社会。そして、
溝におちないように落ちないように気をつけながら生活している人達は、
自分達の正しさを証明するよい機会とばかりに、
これでもかと薬物に手を出した人を叩く。
その容赦のなさが、2%と言われる薬物使用者の復帰の前に立ちはだかる。
ほんとに、一度落ちたら、セカンドチャンスのない社会なんだよな、日本。
kさんの話をきいていて、一番面白いと思ったのは、薬物使用で逮捕された芸能人にありがちな、「本当に社会に対して悪いことをしました。もうやりません」的な反省感がないことだった。
アルコールの方がもっと始末が悪いんじゃないかと
Kさんは言っていたけれど、彼の話を聞いていると、
薬物は、破壊力の大きなアルコールみたいなものなんだろうな、というのが伝わってくる。
アル中になった芸能人がレポーターに叩かれたり、「本当に社会に対して悪いことをしました。もうやりません」と涙を流したりすることがないのに、薬物だとそういう扱いになるのは、社会的演出なんだなという認識を新たにした。もちろん、社会的にストップをかけなければならないほど破壊力の大きな物質で、それを許容はできないから、薬物キャンペーンが行われていたりするわけだけれど、だからと言って、それに手を出した人を犯罪者として仕立て上げて、はいおしまい、っていうのは、おかしいよね、という彼の視点は至極まっとうだと思える。
薬物に手を出すには、あるいは、アルコールに手を出すにはなにがしかの理由がある。依存症になる人には、その下に理由がある。表層的な依存症行為を除去することは、深層部分の解決あるいは緩和へのアプローチがないと厳しいという彼の言い分も、もっともだ。
大体、痴漢にしても薬物にしても、やったらあなたの人生が終わる、からやっちゃだめだよっていう恐怖を植え付けて何かを辞めさせようとするアプローチって、どうなんだろう、というのは常日頃からの疑問。
村八分=社会的死が恐ろしいほど明確に確立されている日本では、痴漢や薬物に手をだして村八分になったら、社会的に抹殺されるんだぞ(宣伝作っている人達の視点からいうと、テメーラのこと抹殺するぞ、だから気をつけろよ)っていう話なんだけど。
でもさ、痴漢やっちゃいけないのは社会的に抹殺されると困るからじゃないんだよ、わかる?っていつも痴漢のポスター見ながら思う私がいる。薬物についても、社会的に抹殺されるぞ、だからテを出すな、では止められないし、テを出した人には「だから言ったじゃん。それなのに、テを出したから、お前は社会から抹殺だ」ですむ話じゃないんだよっていうことが、彼の話を聞いていてとてもよくわかった。
この、人と違うと、村八分、社会的に抹殺が強すぎるよね、日本。
と改めて。
そして、kさんの中にある村八分感の根底は、同性愛だ。
自分が同性愛者だとカミングアウトするのは、
一対一の場合はまだしも、集団の中では非常に難しいものがある、と。
おかまといじめられる友達を見て、自分はいじめられないように気をつける。家族まで巻き込んでしまう可能性もあるから、とにかく穏便に。
そうやって、普段は性的嗜好を外に出さない人をクローゼット
というそうだ。
クローゼットとしての生き様は、
自分の好きなこと、
本来の自分らしさを隠し続けた生き方(ある意味、スパイと似ている。氏素性を隠して仮の姿で生き続ける)は
非常なストレスを生む。
そこに薬物への落とし穴があったりする……という展開。
逆にいうと、このハイストレス社会でなければ、
依存症的問題はもっと緩和されるのだろうか?
この同性愛については、まわりにも非常に多く、
思うこと多々もあるので、また改めて。
得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)