記憶の行方S26 小さな出来事-割れたトルソー

総じて、僕の夢は、割れたトルソーの隙間に見えた太陽の光。カーテンはどこまでも、風の音を伝え、割れた破片を手にとり、拾い集めては、投げ捨て、朝靄の空を仰ぎ見た。

波に追い越され、何度も同じ過ち。

笑えない。笑えない。笑いたい。

通り雨の中、じりじりと焼ける夏の日の太陽は、眩し過ぎて帽子を深くかぶり直した。

自転車は、川に投げ入れ、

手を伸ばせば届く距離に立ち、目を合わせれば全てを失うような熱を帯び、下り坂はスタート地点を間違えてしまえばよいと振り返るがそこには何もない。

出口を忘れたトンネルの中、出会った彼の名前は思い出せず、閉じた瞼に誰かの唇が触れたが、誰なのか、わからない。

さようなら、トルソー。

「最初から何もなかったのさ。」

彼は一人泣いたが誰も聞いちゃいない。

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