【 くすぐり小説書きさん必見!】くすぐり小説にくすぐり以外のえっちなシーンは不必要か―質問紙調査による検討―
くすぐり小説にえっちなシーンはいらない?
pixivに投稿されている、「くすぐり」のタグがついたR-18小説は6,550本(2023/11/25現在)です。
成人向け小説なのですから、たとえばセックス等くすぐり以外のえっちな描写が含まれていてもおかしくありません。
しかし、くすぐりの性癖を嗜む方の中にはそのような、くすぐり以外での快楽・性感(くすぐり時を含む場合もあります)描写や、前戯としてくすぐりが使用されることにもやっとしてしまわれる方もおられると思います。自分も後者に関してはそうです。
そこで2023年の5月から6月ごろまで実施していたアンケートの結果をもとに、くすぐり小説に「くすぐりシーン以外の快楽・性的な描写は必要なのか」ということを調査しました。
くすぐり小説に快楽・性的な描写は需要があるのか?
アンケートの有効回答は51個でした。そして、くすぐり小説に、くすぐり以外での快楽・性的描写は必要なのか、円グラフにしました。その結果がこちら。
円グラフのとおり、だいたい半分に分かれました。
つまり、半分強の人はくすぐり小説に、くすぐり以外のえっちな描写を許容しているといえます。
くすぐり小説に、くすぐり以外のえっちな描写を入れることにかんしてはさまざまな意見があり、私を含む書き手は、どの塩梅までえっちなシーンを盛り込むか頭を抱えるかもしれません。
しかし、このアンケート結果を見る限りでは半数は受け入れてくれそうなので、自信を持ってセックスや他のえっちなシーンを入れてもいいのかもしれません(もちろんより多くのデータを手に入れて、結果の再現性が求められますが)
どんな人が快楽・性的な描写を求めるのか?
とりあえずだいたい半数はくすぐりも、くすぐり以外のえっちなシーンも好きだということが示されました。
となると、次に気になるのは、結果が二つに割れるのにはどんな個人差が関わっているかということです。
つまり、どんな人が、くすぐり以外の性的シーンのある小説を好むか、ということです。
このことがわかれば、今後の小説を書くときの参考になるかもしれません。
そこで今回は影響を与えそうな要因として、「登場人物への共感」を取り上げます。
これは、「読者がくすぐり小説を読む際、くすぐられる側にどの程度感情移入するかということ」と定義します。
R-18のくすぐり小説は、官能小説といっても差し支えないと思います。場合によっては、自分を物語の中でくすぐられている人物に重ねる、という場合もあるかもしれません。
くすぐられる人物に共感する人は、くすぐり小説における、くすぐり以外の性的シーンに対し許容的な態度を示すと仮説を立てました。
くすぐられる側(以下、ぐら側)に対する共感度を示した円グラフはこちら。有効回答は50です。
4割の方がぐら側に共感する一方で、6割の方がぐら側にあまり共感しないという結果になりました。
では、ぐら側への共感の違いは、くすぐり小説におけるくすぐり以外のえっちなシーンへの態度に影響を与えるのでしょうか。
※ここから先は本格的な統計のお話も出てきますが、なるべく簡単な言葉に置き換えて書くのでご安心ください。また、メロウパンの統計レベルは素人に毛が生えたレベルなので、間違ってるとか、もっといい分析があれば教えてください! なお分析には「HAD」というフリーソフトを使っています。
読書中の人物への共感が影響
共感と性的シーンの有無に対する態度をまとめた集計表がこちらです。
概観すると、無い派は「まったく・あまり(共感しない)」に回答が偏り気味なのに対し、有り派では「たまに・頻繁に(共感する)」に偏っており、逆の傾向が見られます。
そして特に注目してほしいのは、「全く共感しない」というところ。この行に関して、「カイ二乗検定」という分析を行ったところ、(性的シーン)無し派が有り派よりも、偶然とはいえないぐらいに多いという結果が出ました。
他の行も分析したものの、この差が出たのは偶然による可能性は否定できないので、差があるとはいえません。見かけ上は差があるんですけれどね。
このことから、普段くすぐり小説を読むときに、ぐら側に共感せずに読む人は、くすぐり以外の性的な描写に対する許容度が低いといえそうです。
好みの部位も影響するらしい
ところで他の設問では、「登場人物がどの部位をくすぐられていると興奮するか」ということも尋ねました(その詳しい結果はまた後日)。
選択肢の中には「胸・乳首」「お尻」「性器」という項目がありましたが、この3種類のうちいずれかを選んだ人と、そうでない人で分け、上と同じ分析を行いました(脇や足裏も性的に見える人は見えるのですが、今回は一般的に見て性的なものと定義し、これらの選択肢は削除しています)。
その結果、二つの事実が分かりました。
まず、上に挙げた三つの部位(「胸・乳首」「お尻」「性器」)を選んでいない人は、くすぐり以外の性的シーン有り派より無し派の方が統計的にも多かったです。
一方で、上に挙げた三つの部位(「胸・乳首」「お尻」「性器」)を選んだ人は、無し派より有り派の方が多いという逆転した傾向が見られました。
くすぐり小説におけるくすぐり以外の性的シーンを許すかどうかは、読書中の態度(共感)だけでなく、登場人物がくすぐられてほしいと思っている部位という二つのファクターが関わっていそうです。
共感✕部位の組み合わせの影響はないのか?
くすぐり以外のえっちなシーンに対する態度に、共感と好みの部位が関わりそうだということは分かりました。
では、これらの要因の組み合わせは影響を与えないのでしょうか。具体的には、登場人物が性的な部分をくすぐられるのが好きで、かつ登場人物と自分を重ねて読む人は、他の条件よりも許容度が高くなるのではないか、ということです。
ということで、「ロジスティック回帰分析」という分析を使って分析してみました。分析方法の説明は省きます。回帰分析の結果がこちらです。
まず、共感が高いほど、「(性的シーンが)あった方がいいと思う」という選択肢を選ぶ確率が高まるようです。これは、上の結果でも示されていたことです。
そして、好みの部位×共感の組み合わせによる効果も見られました。それをより詳しく検討したグラフが下のものです。
見にくいグラフなのですが、登場人物が性的な部位をくすぐられることが好みの場合、くすぐり小説時にぐら側に共感しながら読む人は、くすぐりシーン以外のえっちなシーンにも許容的(あったほうがいいと選択する確率が高くなる)だということが明らかになりました。
好みの部位と共感、二つの要因が単独で作用するだけでなく、組み合わせによって効果も変わるというのはかなり面白い結果だなと思いました。
まとめ
結果
今回の調査・統計で明らかになったことを下にまとめます。
くすぐり小説において、くすぐりシーン以外の性的・快楽描写を好む人は約半分である。約半数はない方がいいと思っている
くすぐり小説を読むとき、くすぐられる側に自分を重ねて読む人は、くすぐりシーン以外の性的・快楽描写があった方がいいと思っている
登場人物が、「胸・乳首」「お尻」「性器」のいずれかをくすぐられることに興奮する人は、そうでない人に比べて、くすぐりシーン以外の性的・快楽描写があった方がいいと思っている
くすぐり小説執筆のためのヒント
この結果を元に、くすぐり以外のエロシーンがある小説を書く場合は、読者の性癖と共感をくすぐる小説を書くことで、より小説を読んでもらえるようになるかもしれません。
具体的な策は2つあると考えています。
「胸・乳首・お尻・性器」へのくすぐりシーンがあることをキャプションやタイトルに織り込む
小説を、くすぐられる側の一人称にする。できればキャラの口調に合わせた口語的な文章を積極的に使用することで、読者がくすぐりシーンに没入しやすくする
これらの策が実際に効果があるかどうかは、まだまだ検討の余地があるのですが、くすぐり小説を読んでいる人のデータから、どのようにすればもっと自分の作品を読んでもらえるか分析することは、もっと広まってほしい取り組みだと私は思っています。
私も今回の調査を通じて、くすぐり小説を対象とした調査をもっとやってみたいと思いました。もし、「くすぐり小説について、こんな調査をしてほしい!」というご要望がありましたら、以下のお題箱やマシュマロからお気軽に書いてください!(私一人の力ではサンプルを集めるのが難しいので、必ずしも調査できるわけではないですが……)
お題箱
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/sakkurimelon
ちなみに私は、「こちょこちょ」とか「カリカリ」といった、くすぐりシーンで多用される擬音語・オノマトペがどのように感じられているのかということにも興味があります。
みなさんからの疑問、お待ちしてます!!
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