【詩】#2 接吻(4)

そして私の視界に映るキミの顔
唇の無いキミの顔

艶やかな紅い唇はどんどんどんどんと色を失いながら濁りやがて透き通ってしまった
艶めかしく朱い舌はどんどんどんどんと色を失い白く濁りやがて透き通ってしまった

鼻腔から吹き下ろす柔らかな吐息と共に また
虚無的な亀裂から生暖かい風が私の身を洗う
私はその風にやがて奮い勃つ

かつて唇のあった亀裂からの雫
それを舌に受けて繊細なミクロの糸を掬い辿りながら私は
虚無の隙間に先端から入り込んで行く

虚無の隙間

虚無であるはずの場所その奥は

柔らかく懐かしい
                              ふわふわで
甘酸っぱい
                              キミの味がして
私は 私の全液体が 
          リキッドが
滂沱として
ふたりの肉体を濡らしその いちぶたる 
唾液が
その 柔らかなキミの朱い肉に絡まると もう
まったく制御できずに喰らいつく むしゃぶりつく
そこに唇は無く しかし
その内部に舌はあった

絡まって熔けて爛れて 私の視覚から

ついに

柔らかな舌の肉触りを伴ったまま
その亀裂は完全に消え
一切のこと
今後
キミと私のキスは
永久に閉じた

微かに消え際

ちゅ

と吸うような舌打ちのような音を残して
私は項垂れ
キミの顔から感情が消えた

透けた

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