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朝4時、人生の匂いがした。

2019年、9月。森ちゃん(森山和彦 旦那であり株式会社CRAZY代表)は今3年ぶりに一人旅に出て、今頃サンセバスチャンからの巡礼の旅に出た頃だろう。毎週水曜日に私たちはカルチャーモーニングという時間を持っている。その時々フレキシブルに、今会社にとって・みんなの人生にとって必要なことを対話する時間。森ちゃん不在なので、取締役の熊谷基樹と松田悠介が、自分たちがどんな20代を過ごしてきたかや、自分の仕事に対する基準を話していた。その時間がスローモーションで蘇る。

2人はプランニングについて話していた。そして、人生を変えるつもりで時間の使い方を1週間変えてみないかと私たちに問いかけた。松田が毎日、朝4時半に起きてしているいくつものことを聞いて、本当に弱い自分に打ち勝つために、努力を続けてきている人なのだと心にしみた。同時に、寝る時間もままならない育児の延長戦で、もうだいぶ安定して寝れるようになった子供に反し、自分が時間を生み出すことに怠けていたなと反省をしてその場で松田がやっているそのものを私もやることを決めた。

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朝の4時半、辺りは想像よりもずっと暗くて、でも外の街灯の明かりが差し込んで、電気をつけないでもなんとか部屋の中で歩くことができた。静かで、でもしばらくすると普段は聞こえない虫の声や、風で木々がそよぐ音が聞こえて、私はゆっくり窓辺に行き、そして窓を開けて、網戸越しに外を見ながら、部屋の中に立ち尽くした。

知っているというよりも、慣れ親しんだ場所なのに、完全に私は一人だった。一人で、世界に対峙していた。うろたえてしまいそうなほど、その感覚は日常とは違っていた。でも、いつもより世界を近くに感じた。この目の前の景色は世界につながっていて、私は世界に確かに実在していると信じられた。

この感覚を私はまだ書き残せていない。紙のノートにも、このnoteにも、evernoteにも。笑 ぶるぶると心が震える。窓を見ながらちゃんと左手で歯磨きをして、ストレッチをした(彼の教え)。寝起きの口の中が気持ち悪いこと、体が固まっていること、息が浅いこと、を感じる。普段無数に繰り返していることたちが、どれだけ無意識の中で、私という思考を挟まず、いろんなことが無心で進行されているのかということに驚く。本当に私は味を感じることも、耳をすますことも、体の違和感を感じることもなく、ただ一生懸命追いかけられる日々を生きていたのだ。それは悪いことではないけど、自分が考えて意識の中で日々の小さなことをした、たった1時間弱の豊かさといったら、一人旅のような感覚だった。私は日常でも、子供がいても、たった1時間でも、自分と向き合う旅ができるのだと知った。

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2020年、2月も末日の今日。そんな、この朝の旅について書いていた、昨年の記述を見つけてあの朝の静かな興奮と感動がよみがえってきた。

テクノロジーやSNSがこんなにも簡単に皆を飲み込むのに、一方で自分は何者なのかを問われるこの時代。「とてもじゃないけど、旅をしなければ生きてはいけないなぁ」と私はまた、ぽっかりと思う。そしてそれは、明確な目的地のある旅行ではないから、目的や生きる意味を模索する旅だから、1人でなくてはいけない。流されているだけでは、辿り着けない世界にまた気づいた、あの暗い朝のあの瞬間。ちゃんと世界と自分にタッチできた、あの日の私が、多くの時間とドラマを経て今、いろんなことを決められた私につながっている気がした。

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