無題のプレゼンテーション__2_

研究職に就かなかった博士課程修了者がどうやって10年間社会の荒波を生きてきたか

*記事を書いてから1年半経ったこともあり無料公開しました。
買っていただいた方は本当にありがとうございました。

タイトルの通りのことを書いていきます。
博士課程の進学に迷っている人、在籍中だが将来が不安な人に、こういう人生を過ごすのか、という一例が届けられれば幸いです。
当時の専攻は大雑把に言えばコンピュータサイエンスです。
現在は主にiPhoneアプリの開発で職を得ており、専業主婦の妻とペットのモルモット4匹と都内のマンションで暮らしています。

学力について

僕は勉強が嫌いでテレビゲームばかりしていました。
おかげで中学高校のテストでは平均点を取れる教科が1〜2つしかなくあとは平均点の半分以下のいわゆる赤点し取れませんでした。

なのでスポーツ漫画でよくある主人公たちが赤点でこのままでは試合に出れないエピソードの点数を見ても「自分より良いやん」と思ってたぐらい。
僕も1、2年の夏・春休みでは補修を受けないと進級できませんでした。 

当時の実力テストの結果がこちら
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当然、高校の卒業も怪しく、入れる大学などなく、大学は関西で名の知れた理系の最底偏差値(42ぐらい)の大学に1浪して数学のみの受験で入りました。ちなみに大学院修士もそこの大学でした。

大学院の博士課程では転校をして、偏差値62の公立の大学に行くことになりました。本来、転校するにしてもそれまでの研究実績などで受験は免除になるのですが、それもできず工学と英語の2教科の試験を受けました。
でも社会に出てからの社内TOEIC模試も最後に受けた時は300点を切っていました。

このように基礎学力は圧倒的に一般的な博士課程進学者より足りていなかったと思われます。

進学した経緯について

まず研究が面白かったことが最大の理由でした。
全員でやることが違う。結果がどうなるか世界で誰も知らない。
すでに存在する正解に合わせるわけではなく自分で考えた方法が唯一の正解になる。
勉強とは明らかに違う魅力がありました。

次に、博士課程に進学した人はどういう人生を送るんだろうという興味本位もありました。でも身近で進学した人がいない。じゃあ自分で試せばいい。

それぐらいが進学した主な理由でした。
(あとは就活がめんどくさすぎて就職したくなかった

研究職に就きたいという願望は元から少なかったのかもしれません。

博士課程在籍中に気付いたこと、していたことについて

指導していただいた先生のおかげもあって3年で博士号は取れました。

しかし、正月も大学に行き研究する程度にはやっていましたが、僕の研究中の楽しさのピークは他の人の論文を読んでその閃きに感激した時であり、自分で新しい理論を生み出すところではないため、これは研究者には向いてないなと自覚していました。

そのため、博士在籍中の時から、このまま研究に関わりたいという想いもありながらもやっていける気もしないと感じていたので、大学で学ばないけど世間で需要のあるソフトウェア開発の勉強をしたり、趣味的なゲームプログラムをやってみたり、楽しみながら実用的な勉強もやってました。

就職や転職について

就活自体ほとんどしておらず博士課程3年の夏から動き始めました。

途中で先生が「知り合いの先生のいる専門学校が大学化するから職ができそうだけどどうする?」という今にして思えばありがたい話もありました。

しかし、すでに研究者としてやっていける気もしなかったので普通のIT企業に就職することにして就活をやりだしました。
大学の就職案内等は修士向けまででしたので、自分で就活サイトに登録してそこのイベントに参加して業界最大手のIT企業に就職できました。

この時、学生時代にやっていた研究とはまるで関係ない人に魅せれるプログラムを学んでいたことが良かったと思います。

しかし、自分が専攻していた分野とまるで違う仕事内容(英文学の研究をしていた人が中国語の翻訳会社にきたようなもの)かつ社風が合わないため、1年で退職をして、もう少し専門性を活かせる会社に転職しました。

3年間そこで働きましたが、そこも世間の需要と自分の能力を考えると限界があるなと感じ、社会人になった年にiPhoneが流行り出していたこともあり、その頃から趣味でやっていたiPhoneアプリの開発を本格的に勉強していきました

自分でアプリを出し、副業サイトからアプリ開発の仕事をもらい、そのままそのITベンチャー企業に転職しました。
それからも数社を転々としており今は6社目です。
これが多いとみるか少ないとみるか、たくさん転職できていることを成功とみるか長く働ける職場を見つけられない失敗とみるか、それは人それぞれです。

学費について

博士課程だけではありませんが大学在学中から合計800万円近く奨学金を借りました。現在も返済を続けています。
優秀?普通の業績?であれば返済免除もあるらしいですが、まあ察してください。

返済が辛いような印象が世間にはありますが、ぶっちゃけその後、都内にマンションを買ったりしてウン千万円の借金もしてます。人によるのでしょうが、車を買ったり、子育ての養育費があったり、人生それぐらい借金はあって当たり前なんだなと思うようになりました。

僕は子供も車も海外旅行も興味がないため、その分の人生の投資を進学という娯楽に使えた、という取捨選択をしただけですね。
なので、もし今から人生やりなおして、何のメリットもないとしても800万円程度でいいならもう一度博士課程に進学すると思います。

結婚について

妻とは2社目の30歳の時に結婚しました。
お互い「子供はいらない」「式はしたくない」「新婚旅行もしなくていい」「指輪もいらない」という考えかつ、それまでも一緒に暮らしていたため、本当に週末に役所に婚姻届を出しただけで終わりました。

僕は結婚については古い考えなので、妻には必ず専業主婦で家を守っていてほしいと思っており、妻も社会人の経験はあるものの専業主婦がいいと思っていたので意見が一致していました。
あとは家賃を払って部屋という空間の占領権にお金を毎月払っているのに、共働きだと日中その空間に誰もいないことがもったいないと感じてしまいます。
そのため結婚してから妻にはずっと専業主婦をしてもらっており、食事や掃除や部屋のレイアウトなど家の環境の維持と向上と、それに関わる家計の全てを管理してもらっています。

会社の倒産とマンションの購入について

すでに書いてることですが、3社目のベンチャー企業で働いている時に賃貸ではなく都内でマンションを購入しました。世間でいうローン地獄の始まりです。
意外だったのが、すでに他人より大きな奨学金の借金があり、ベンチャー企業という安定のない会社の職員でもローンが組めるんだなということでした。

しかもその時は4ヶ月近く給料が未払いという状況で、さらにマンションを購入した月に会社が倒産し、社長と連絡が付かないようになり、差し押さえから社内の資産などを奪われないように昼に夜逃げをするという経験をしました。
ローン審査とは一体なんだったのか。

幸いなことに、都内で暮らしていたこともあり、その時に引き受けていた最後の仕事のクライアントの会社が開発チームごと雇ってくれたので事なきを得ました。

まとめ

以上が、博士課程に進学したのに研究職には就けなかった人生の一例です。
子供や車や海外旅行といったありがちで金のかかることは諦める必要はありますが、元から興味も少ないため満足のいくように生活できています。

進学をして成果が少なくても職に就けているのは現在世間的に需要の多いシステムエンジニアだったからということはラッキーなだけでした。
とはいえ、もしシステムエンジニアに職がなければ、コンピュータサイエンスの専攻をしつつも他のことも学んでいたとは思います。

進学して良かったかどうかについては、進学しなかった場合の人生を知らないうえに時間を戻せないので判断できる材料がないため考えたことはありません。
ただ、進学してなければずっと「今からでも社会人博士に進学したらどうなるんだろう」と心に引っかかったままになっていると思います。

一応最後にアドバイス的なこと書いて締めます。

- 研究は娯楽的な趣味と割り切るべきである
- 進学はかなりの時間と金を投資する以上、それに見合う何かを諦めることを想定するべきである
- それでも進学したいならした方がいい、ただし、客観的に自分の能力と世間の需要を常に考えて、必要であれば研究とは別に食べていける能力や資格は持っておくべきである

最初にも書きましたが、博士課程の進学に迷っている人、在籍中だが将来が不安な人、が少しでも参考になれば幸いです。
最後まで長文をお読みいただきありがとうございました。

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