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iPhoneをアラビア語設定で丸一日使ってみた話 | UI Design Weekly vol.05

全く知らない文化圏に行き、「わからない」モノやコトに触れることがすごく好きで、気づいたら色んな国を旅することが趣味になっていました。

しかしこのご時世、しばらくそんな旅もできないんだろうなぁ...と最近いろいろと考えていて、迷走した結果、
iPhoneの言語設定を「アラビア語」に変更してみました。
この記事ではその体験で気づいたことをまとめてみたいと思います。


1. 「右から左」は文字だけではなかった

アラビア語は右から左へ記述する言語の一つです。他にもヘブライ文字、アラビア文字、シリア文字、ターナ文字などがあります。

大学時代アラビア語圏の友人が少しいたり、アラビア語でデザインされたものも見たこともあるし...と思っていたのですが、
実際に触れるインターフェースとなると、全く知らなかったことがいろいろと見えてきました。

まず言語設定からホーム画面に戻ったときの衝撃。

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ホームアイコンの位置まで左右入れ替わってる...!
さらにパーツごとに見ていっても、ホーム画面だけでたくさんの気づきがありました。

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ステータスバー、アプリの通知アイコン、さらにホーム画面の順序*まで左右反対になっているのです。
*「今日」画面(ウィジェット画面)がメインホーム画面の右にある状態。

これはおもしろい...!と思い、もう少し深く見てみることにしました。


2. 当たり前が、当たり前でなくなる

アラビア語のiPhoneを触ってしばらく経っても、全然慣れないのです。むしろ混乱していくばかり。

実際に操作するUIは特に、すごく不思議な感覚になります。

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例えばiOSの標準のスイッチ。
iOSユーザーなら左が「ON」の状態であることは違和感なく伝わるかと思いますが、
アラビア語のiOSではそんなUIでさえも左右逆になっていたのです。つまり、この右のスイッチは「OFF」の状態。

さらに他の画面を見ていく中でも面白い発見がありました。

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このnote用にウィジェットのスクショを撮るため、MY時刻表は載せたくないと思ったので、並び替えをしようと思いました。
上の画面まではなんとかたどりつくことができ、並び替えUIも使いこなせたものの、何度やってもウィジェットの順序が変わらないのです。

こんなバグある...?と思い諦めていたのですが、しばらく経ってから気づきました。

「完了だと思って押してたボタン、キャンセルなのでは...?」 

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これだけ意識して見ていたにも関わらず、いつも無意識にやっている行動はそう簡単に変えられるわけではないということを、身を持って体感した瞬間でした。


3. もっと小さな違い

ここまでに登場した画面を見て、もしかしたら気づいた方もいるかもしれませんが、もっと小さな違いも存在しました。
それは、アイコンです。

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Wi-Fiなどシンメトリーなアイコンは別にして、左右反転しているものと、していないものがあります。

Bluetoothはロゴマーク(フィギュアマーク)の扱いなので、反転しない。
おやすみモードの月アイコンも、月の満ち欠けは言語関係なく共通だからか、反転しない(なんかエモい...)。

OSの「設定」に登場するアイコンの中で、反転しているものをまとめてみました。

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リマインダー、カレンダー、連絡先など「文字」に関係ありそうなものはなんとなく想像がつくものの、
バッテリーや音量アイコンなど、「大きさや多さ」を表す方向も反対であることは驚きでした。

そうなると、飛行機アイコンに関しては「進行方向」が反対?もはやどういうことなのかわからなくなってきます。

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そして、Apple Musicの音量調節バーは反転しているものの、シークバーは日本語や英語と同じ方向でした。
これは他のルール(ブラウザのプログレスバーは反転)に合わせると、反転していそうなのに...

他にもメッセージの吹き出しや、プライバシーの手のアイコン、パスワードの鍵のアイコンなどは、反転していそうだけどしていない。
もうこの辺りはネイティブ(と開発者)にしか分からない感覚なのかもしれないですね。


4. アプリ/Webサイトでは...

一通りアラビア語のiOSを触ったあとに、他のアプリも見てみます。
Google関連のアプリなど、比較的大きなサービスはRight-to-leftのレイアウトに対応していまいした。(意外だったのはLINEで、幅広いユーザー層なんだなぁとまた新たな発見がありました)

YoutubeのWebサイトもそのサイトのうちの一つでした。
しかし、ひたすらアラビア語のUIを見続けていたからか、ある違和感に気づきました。

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メニューの一部なのですが、iOSアイコンのルールだと反転しているはずの「」マーク。実際にアラビア語の「?」は反転して書かれ、「؟」となるのため、厳密にローカライズするとこのアイコンは反転するべきなのでは...?

と思ったのですが、実際にアラビア語圏のスーパーのWebサイトを見てみても、「?」は反転していませんでした。

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アラビア語で「疑問符」を意味する言葉で検索しても、左右はバラバラ。アイコンに関してはそれほど忠実なルールはないのかもしれません。


アラビア語のiPhoneから学んだこと

自分の中で解決していないこともいくつかありますが、アラビア語のiPhoneからいくつか学びを得ました。

当たり前だと思っていることを、より細かい粒度で考え直す
なぜインターフェースのスイッチは、左から右にスライドさせるのか?それを、「ガイドラインにあるから」「iOSがそうしてるから」と片付けるのではなく、もう少し深く考えるくせをつけることが大事だと、改めて感じさせられました。
答えは1つじゃないとしても、自分で理解して説明できるよう言語化するという習慣を、忘れないようにしようと思いました。
■ 「翻訳」はローカライズのほんの一部にすぎない
文化圏によって色の意味が変わったり、アイコンが理解されなかったり...のような意識はなんとなくあるものの、
実際にグローバルなサービスをつくるときに、それをどこまで意識して実践できているか/するべきか、と考え直すきっかけになりました。
正しい翻訳は大前提として、例えば「?」アイコンを本当に言語ごとに変えたほうが良いのか?逆に全く違和感に感じないのか?など細かいニュアンスのローカライズは、ルールに則るだけでは達成できないのかもしれません。
「分からない」を実感して
普段見慣れているはずのiPhoneなのに、言語を変更した瞬間から大きく混乱しました。文字は読めないし、操作も正しくできないし、最終的には日本語に戻す方法がわからなくなるし...
今回は言語に限った体験でしたが、何らかの理由で「わからない」「操作できない」をもっと頻繁に感じているユーザーがいることを、改めて考え直そうと思うきっかけになりました。

意図せず非常に学びが多かった今回の体験でしたが、UIの領域をこえてRight-to-leftの言語と、その文化圏にもものすごく興味が湧いてきました。世の中が落ち着いたら、アラビア語圏に行ってみよう...。


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