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27歳までの生活

27歳の最後に、生活を写真に残そうと思った。撮影はカメラマンの misaki さんにご依頼した。

misaki さんとは昨年知り合って、被写体なんて無縁だったけれど「いつかもしそんなタイミングがあれば、撮ってもらうのは misaki さんがいいな」と思っていた。そうしたら偶然また新潟で会える機会に恵まれて、ちょうどそんなタイミングだったので、撮影をお願いすることができた。

朝の光のなか、misaki さんは300枚ほど写真を撮ってくれた。緊張でカチカチだったわたしを、お喋りしながら和らげてくれたおかげで、初めての撮影はなにも怖くなくて、とても心地よい時間になった。

納品用の写真の選別を自分でやるのでなくmisaki さんにお願いしたのは、他人の目から見たわたしを知りたかったからだ。頭のなかで存在する自分像とは違う、知らない自分が写っている気がした。

横顔が嫌いなのに misakiさんは「横顔が好きだなぁ」と言ったり、笑ってばかりのわたしに「真顔になってみて」と言ったりしたから、尚更だった。

27歳のわたしは、自分の理想としていた人生像と、今の自分との乖離によくよく悩んだように思う。楽しくて満ち足りた日々なのに、ふいに緩んだ隙間を狙って、孤独や劣等感は生活に侵入する。それらはわたしを軽率にぐちゃぐちゃにした。

要らない理想は手放して、自分をまるごと受け入れて楽になりたかった。でもそれは諦めではない形で。この撮影が、いまの自分を正しく理解するための、手がかりのひとつになればいいなと思った。

1年後の自分は、きっと体型も笑い方も変わっている。どこで誰と暮らしているかもわからない。それをまた見るのが楽しみになったから、未来に希望がひとつ増える。生活は続いていく。



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