あなたの死で、今のわたしが生きている。
いつぶりかに、父からの手紙を読んだ。
父が亡くなってから渡されたもので、わたしはそれを何度か読んだけれど、内容をぜんぜん覚えることができないので、いつも「そんなことが書いてあったのか」と泣いてしまう。
今回も、ひとりの部屋でわんわん泣いた。
小さなワンルームだけど、人目を気にせず大きな声を出せるのがなんだか嬉しかった。
父。わたしの卒業も、就職も見届けられなかった父。これから、結婚も、出産も、見届けられない父。
あなたが居てくれればと、何度思っただろう。
それは父という役割を求めてのこともあったけれど、それ以上に、父というたった一人の人間に、この世に居てほしかった。
あなたが居なくなってしまってから、家族のバランスは変だよ。
ぐらぐらと不安定に揺れながら、それでもなんとかやっているよ。
だから安心してほしいけれど、でもわたしはやっぱりたまに泣くよ。
大人になればなるほどに、できることが増えて。
きっと今ならもっと、優しくなれるよ。困らせたり怒らせたりする数は、ぐっと減るよ。悲しい気持ちも、想像できるようになったから。
そんなわたしを見てほしかった。そんなわたしと一緒に過ごしてほしかった。反抗期だったあの頃と、少しでいいから、時間を交換させてほしいよ。
後悔だらけで、でもそのおかげで優しくなれたところもあって。
あなたの死で、今のわたしが生きている。
父からの手紙は、いつもわたしの味方だ。
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