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小さな毎日に光あれ【川内有緒著:パリの国連で夢を食う。】

世の中には3種類の本がある。
自分で選ぶ本、人に勧められた本、そして、読まない本。

私にとって本書は、2番目の、人に勧められた本だ。
そして、勧められなかったら出会えなかったであろう本だ。

パリの国連で夢を食う。 川内有緒・著

たしか2月くらいだったと思うが、はあちゅうさんが川内有緒さんについてツイートしたのを見た。
なんだかすごく気になって、手元にあったメモに「川内有緒」と書きつけた。

1か月くらい、そのことを忘れていたのだけど、ぷらっと新刊チェックに寄った本屋さんで、メモしたことを思い出した。
調べると、「パリでメシを食う。」の在庫があって、迷わず買って帰った。

すばらしかった。

文化も言葉も違う街で、メシを食い、寝る場所を創り上げてきた人たちの物語が淡々と描かれていて、その淡々さゆえにすぐ隣にあるような感じ。
自分の生活と、地続きの物語である感じ。

大袈裟な感動や涙、爆笑はないけど、しみじみと染み込み、心が動いた。

さて、その続編とも言えるような「パリの国連で夢を食う。」。
こちらには、はあちゅうさんが解説を寄せていた。
(思い返せば、2月に見かけたツイートは、解説を執筆するために川内さんの著書を読まれていたから発せられたのかもしれない)

「パリの国連で夢を食う。」は、著者の川内さん自身のパリ在住時の物語。
書類を出して2年後、忘れた頃に国連から連絡があり、面接に行ったこと。
採用されてからの、国籍も人種も宗教も性格も様々な同僚たちとの仕事のこと。
日本とは勝手の違う不動産事情や、アーティストたちとの交流。
日本にいたご家族の死。
友情、恋、結婚のこと。
そして、国連を辞めるまでのこと。

楽しいエピソードも辛いエピソードも、前作と同様、淡々と語られている。

私自身は、海外で仕事をしたいと思ったこともないし、海外の人の友人もいないし、英語やフランス語は大学で習ったところで止まっている。
これからも川内さんのように海外で生活することは、あまり可能性は高くないと思う。
しかし、例えばティーンエイジャーの頃、大学生の頃、もっと言えば3年前だって、思いもよらなった方向に人生は動いていて、それは川内さんの物語ともつながっている。

世間に自慢できるような成果、大きな成長、多くの人に認められる作品…
そんなものは今のところない、行き当たりばったりの私の人生だけど、これはこれで愛おしく、慈しんでも構わないのかもしれない。
そう思えることは、光だ。

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