シェア
咲寿太夫
2022年11月14日 15:35
1. 田を干すために水を引く。落し水の時期である。山城の上田村に暮らす大百姓、島田平右衛門は去年の秋に妻を亡くし、今は病に伏せっていた。上の娘のかるは婿をとって家にいる。下の娘の千代は大坂へ嫁にいった。「今朝から仕事がよく捗った。お竹、お鍋、ちょっと休もう」 台所で働いていた下女たちはひと休みに思い思いに立っていった。「台所に人がいないやないの」 かるの夫平六は新田開きの訴訟のため京へ