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「イッタラ展」Bunkamura ザ・ミュージアム

2022.10.04

北欧好きならみんな知ってるイッタラ。
その歴史だけでなく、技法についてもたくさん知ることができて面白かったです。特にガラスを流し込む「型」の実物がレアで、元々は木製だったと知って驚き。
実用的なガラス製品以外に、デザイナー達のアート的作品も置いてあり、彼らの精神哲学を垣間見ることができました。

イッタラの赤いi字のロゴですが、ガラス職人さんの吹き竿(棒の部分)とガラス(丸の部分)の意味が込められているらしく、確かに…!と地味に感心してしまいました。

日本との関係についても語られており、全体的にコンパクトにまとまっているいい展示でした。

▽best
オブジェ「イントヒモ(情熱)」ティモ・サルパネヴァ
サルパネヴァの作品は神話や潜在意識といったテーマが多く、本作品は「創造的な潜在意識」を表しているらしい。タイトルの意味的に、創造的な潜在意識=情熱ってことなんだろうか。
写真撮影不可だったのですが、でっかい氷のようなフォルムで、ガラスの巨大な塊というだけで神秘的な存在感があり、葉脈のような有機的な表面からは生き物っぽさが感じられて見入ってしまいました。


写真撮影可能エリアより

特にタピオ・ヴィルカラのデザインが大好きなので、特大サイズの作品を見られて嬉しかったです。(ピルッキアヴァント=氷上釣りの穴…という大きいお皿のような作品が特に素敵でした)

彼のデザインで有名なウルティマ ツーレですが、翻訳すると「世界の果て」という意味らしく、何それエモ…となりました。

この自然的な形、どうやって作ってるんだ〜と思ってたら、原点である「フィンランディア」は当初木型で作っていて、ガラスを流し込んで焦げた木の質感が写し取られてこうなるんだとか。本物の木の模様だったのか〜!
木型は傷んですぐダメになってしまうから、今はグラファイトやスチール型になってるらしい。

あのアアルトベースも木型とスチール型があって、表面の趣が全然違いました。

アアルトベース
以前行ったヘルシンキの
アルヴァ・アアルトの自邸にて
おそらくスチール型から作られたタイプ

フィンランドの何がずるいって単語の響きがかわいいとこですね。みんな自分の名前をそのまま商品名にしててキャワだなと思ったのですが、自らの名を冠した作品を出すって結構覚悟がいるよな〜…それが代表作として残るわけだし。

フィンランドのガラス技術が向上したのは、樹木が多く薪の調達がしやすかったという理由があるみたいですが、国として独立する際、文化的にも独り立ちしてアイデンティティを確立したい…という国民精神的な理由もあったようです。
実際のところ国民総生産の増加にデザインが直接役立つことはなかったそうですが、そんな時代背景があっての素晴らしいデザインなんだな〜と思うとますます愛が深まってしまいました。
いいものって必ずしも満たされた状況から生まれるわけじゃないんだよな〜…

アイデンティティや精神の独立って何においても難しい課題だと思いますが、普通は親子関係だったり、先生と生徒(師弟関係)だったり、そんな規模感です。
それが国単位になるってどういう感覚なんだろうと想像すらできないのは、歴史が長く文化的にも恵まれた日本に生まれたからでしょうか。

スウェーデン、フィンランド、デンマークには行ったことがあり、北欧の自然に対する畏敬の念や神的な存在へのニュアンスには日本と近いものを感じていたのですが、もっといろんな顔を知りたくなりました。

オイバ・トイッカのバードたち
素敵な家に引っ越していつか一匹お迎えしたいな

バードちゃんたちはまだ手の届かない存在ですが、彼らを模したピンバッチを連れて帰ることができました。

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