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子どもを怒ってしまう悩みの解決糸口が見えた話

5億年ぶりにnoteを書いています。
パーソナルコーチ、講師をしている樋口咲恵です。
2019年11月に息子を出産して母親業もしています。

今回は、2歳を過ぎて自己主張をしっかりとできるようになってきた息子と関わる中で、自分自身について気付くことがあったので書いてみます。

最近の悩み・息子を怒ってしまう

最近の子育ての悩みは「息子が自己主張し続けると、たまに息子を怒ってしまう・不機嫌をにじませてしまう」ということ。

”たまに”というのもポイントで、いいお母さんでい続けられるときもあるし、制御できずに怒ってしまうこともある。本当はいつも朗らかなお母さんでいたいのに。

さらに、怒りや不機嫌さは、子育ての場面とそうでない場面とで身体感覚に違いがあるように感じていました。
子育ての場面では、ぐおーーーっと怒りが渦巻いて、「ねえ、さっき約束したでしょ!?」と問い詰めてしまったり、「はあ、もう勝手にすれば!?」という感じで不機嫌さが全面にでてしまったり。
そうでない場面では怒っていてももう少し落ち着いて、不快感を相手に伝えられるのに。

こういうふうに言葉で書くと、「怒りっぽいお母さんなのかなあ」「子どものわがままに付き合うのは大変よねえ」という感じなんですが、まあとにかく、身体感覚としての感情・エネルギーの動きに違和感があることにひっかかりを感じていました。

出会った本

そんな違和感を抱えて数ヶ月、こちらの本に出会いました。

大河原美以先生の別の著作がとても読みやすく理解しやすかったため、ほかの著書も拝読したいと思い購入したものでした。

私は心理の専門職ではないため、以下の記述は専門家の方からすると解釈が間違っている部分があるかもしれません。
できる限り、引用部分と私が感じたことを分けて記載していきます。

私が抱えていた問題

本の冒頭に以下のような記述があります。

この本は、子育て困難は「人格の問題ではなく過去の記憶の問題」だということを伝えるための本です。過去の記憶の問題とは、「過去のつらい体験をたくさん我慢してきた」という問題です。
子育てに苦しむ母との心理臨床 EMDR療法による複雑性トラウマからの解放/大河原美以

最初にこれを読んで、「この本で語られることは壮絶な経験をされてきた親御さんのお話なんだ」とどこか他人事のように感じました。

というのも、私自身は、”自分はごく普通の家庭で育ち、生育環境に特に問題はなかった”と認識していました(読了した今もそう認識しています)。
両親、妹が二人、父方の祖父母、曾祖母。一般的な家庭よりも少し人数が多いくらいでしょうか。幼少期はこんな家族構成で、群馬県の田舎に暮らしていました。
家族仲は特別良いというわけでも、特別悪いというわけでもない。家族内でなにか問題を抱えていたという認識もありませんでした。

第1章では子育て困難を乗り越えた6人の方の物語(創作)が対話形式で紹介されています。ときおり解説をはさみながら子育て中の母と大河原先生との対話が進んでいきます。読み進めるなかで、「ああ、私もこのお母さんと同じだ。複雑性トラウマを抱えている当事者なんだ」と感じる部分がいくつかありました。
先述のとおり、生育環境に大きな問題はありませんが、日々の積み重ねの中で複雑性トラウマとなっていったことに気付いたのです。

①息子のことを「羨ましい」と思う自分がいる

私は三姉妹の長女として育ちました。自分で言うのもなんですが、小さい頃から大人に褒められるいい子でした。
幼稚園では、年長の頃に園の代表に選ばれて入園式で「歓迎の言葉」を読み上げました。堂々とした姿が写真に残っています。
言葉が出るのも早く、ひらがなや数字の習得も早かったようで、園の学習の時間にはお友達に教えてあげていました。
2歳年下、5歳年下の二人の妹に対しては、家の中ではお姉ちゃん風を吹かせて威張ってみたりするものの、地域の子供会の集まりでは妹たちのぶんまで大人にお礼を言ったり、妹たちにもお菓子をもらってきたり、面倒見のいい姉でした。

私にとってこの体験は、つらい記憶ではありません。
ただ自分がそうしたかったからそのように行動していた、という自然な体験の記憶です。

でも。
幼い私は、実はとっても我慢していたことに気付きました。

困難を抱えた幼少期の体験の中で、わがままを言わない「よい子」として頑張ってきた人は、つらい感情と一緒にそれを抱えた自我状態(「小さな私」)を封印して生きています。出産・子育て体験は、わが子の年齢に合わせて、その幼少期の記憶と自我状態を引っ張り出してくるので、子育て困難が生じます。
子育てに苦しむ母との心理臨床 EMDR療法による複雑性トラウマからの解放/大河原美以

上記は「記憶の漏出」という表現でも書かれていました。
子育て体験が、自分自身の幼き頃の記憶(事実の記憶だけでなく、感覚や感情の記憶)の漏出を引き起こすとのことです。

今、私の息子は2歳6ヶ月です。
私自身は、1歳8ヶ月の頃に妹が生まれています。想像するに、妹が夜泣きするようになった時期や離乳食の時期、ハイハイができたり歩けるようになってきた頃には妹に手がかかり、母は姉である私にはそれまでと同じようには注意が注げなくなったのではないでしょうか。
その結果、幼い私はいい子であること(=寂しい気持ち、主張したい気持ちを封印すること)でその環境に適応し、生き延びてきたのだと思います。これは、”困難”や”わがままの抑圧”というほどの体験ではありません。
でも2歳の息子を見ていて思いますが、1~2歳の子に「待っててね、妹が先ね、お姉ちゃんだから待てるよね」というのはそれだけでも我慢する体験になっていくということは容易に想像できました。

それを思うと「ああ、私は息子のことが羨ましいんだ」と気付きました。
母である私や父である夫からいつも注意を注がれ、自己主張にはできる限り付き合ってもらえ、欲しいものは(私の幼少期に比べて)比較的買ってもらえて。その様子を中で見ている幼い私が「羨ましい!」とすねているんだな~と感じました。

それに気付くと本を読みながら涙が流れて、「羨ましい~~!!」と感じる声を認識するとともに、「そうだよねえ。そりゃあ羨ましいよねえ。」と「大人の私」が自然と共感していました。

その結果、気づいてから数日しか経っていませんが、息子の自己主張に対してぐおーーーっと湧いてくる怒りにはまだ出会っていません。
私は治療を受けたわけではないので、今後また羨ましいモードのわたしが出てくることもあるかもしれないのですが、今のところ息子の自己主張に対して心が軽い状態で接することができています。

これは、”親が、妹ではなく私にもっと注意を向けてくれたら良かったのに”という体験ではありません。親がどれだけ注意を向けてくれていたとしても、妹が生まれた事実を受けて私が選んで行動したことだと思っています。そうやって、環境に適応して生きる能力が備わっていることも、人間の素晴らしいところです。

②産後、息子が生きているか異常に不安だった

息子が生まれたあと、常に息をしているのか異常に不安でした。息子も自分も寝ているにも関わらず「はっ!!」と起きては息をしているのか確認してしまう。家事の合間には10分に1回くらい息をしているのか確認してしまう。こんなに小さい鼻の穴で空気吸えてるの!?と不安になってしまう。泣いてても不安、寝てても不安…いつも不安がつきまとっていました。出産時にも、子の成長にも、問題はなく「順調ですね~~!」と言われていたのに。
初めての子育てだし、全くなにもわからない、だから不安だよね。
と当時は思っていました。幸い夫も育休を取っていて話し相手がいたので、不安な気持ちを分かち合うことでなんとか保っていた記憶があります。

本にも同様の事例が紹介されています。解説には、産後の心情には自分が生まれたときの記憶が漏出している可能性があることが書かれています。

妊娠期から始まる早期トラウマは、言葉による記憶(顕在意識)とは異なる性質を持つ潜在記憶として保管されています。それは言葉のない感覚的・身体的な記憶です。
子育てに苦しむ母との心理臨床 EMDR療法による複雑性トラウマからの解放/大河原美以

さらに、親の妊娠前のトラウマティック・ストレスは、子宮や精子を通して子に伝達されていることについても記述されています。

もしかすると私の感じていた大きな不安は私だけのものではなく、世代を超えて、さらに私の出生時の体験とも絡まり合い、”2019~2020年の私”という人間を通して感じられているものなのかもしれません。
それを知ることができて、とてもホッとした感覚になりました。
私だけが不安なのではなく、積み重なってきた不安な感情が私を通して発現している部分もあるんだな、と。

最後に

最後に、とても大切だと思ったので以下を引用します。

今を生きているクライエントさんたちの苦しみの背景には、世代を超えた傷つきの遺産が必ず関係している(中略)。誰も悪くないのです。みんな、必死に生きてきただけ。
子育てに苦しむ母との心理臨床 EMDR療法による複雑性トラウマからの解放/大河原美以

子育て困難にかかわらず、人生すべてにおいてとても大切な視点だと感じ、自分のためにも書き残しておきます。

自分の/誰かの行動・言動・苦しみ・生きづらさはその人の人格の問題ではなく、心の怪我が関係している可能性があること。
心の怪我を抱えながらも生きていけるのは、人間の心理機能が正常に作動している証だということ。
人はみな、その時その時でのベストを尽くして生きていること。

心が震える本に出会えて幸せです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!

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