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ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学(LSE)の修士に英国の国費留学生として進学します

この度、2024年9月より、ロンドン大学の一つである、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(英: London School of Economics and Political Science、略称: LSE)の修士課程(MSc Social Innovation and Entrepreneurship)に、英国政府による全額給付型奨学金をいただき、進学します。

直接お会いした方にはご報告していたのですが、まだお話しておらず驚かせてしまった方には、こちらでのご報告となりすみません。本noteでは、修士留学のご報告と経緯についてお話しできたらと思います。

長くなってしまいましたが、素直な想いを書いてみたので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。



なぜ、修士留学なのか

修士留学を目指したきっかけは、これまでインドで行ってきた活動と深く関わっています。まずは、大きなきっかけとなった出来事について書こうと思います。

2019年7月にインドに渡航し、これまで約5年間、スラム街の女性の経済的自立を目指した社会的企業、貧困地域の子供たちの教育支援を行うNPOの共同創業と、一貫して、現場で貧困問題の解決に取り組んできました。

ハウスキーパーを育成し、お掃除サービスを提供するSAKURA Home Serviceを創業
農村やスラム街の子供達に教育支援を行ってきました
日本の学生向けにインドの貧困問題を理解し、アクションをおこす研修も多数企画・運営してきました


困難なことも沢山ありましたが、「どんな環境下に生まれたとしても、努力する機会が得られる社会」を目指して、女性や子供たちに向き合ってきました。

スラム街の子供達と

ところが、インドで起業してたった半年後、コロナ感染拡大に伴いロックダウンが発令されました。

その後、インドでは2年間に渡り、コロナ感染の拡大に伴い、とりわけ貧困地域の人々にとって、大変苦しい時期が続きます。

インド都市部では、一時期失業率が26%を超えました。1億人を超える人々が貧困状態に陥り、政府の支援も行き届かず、失業した貧困層の人々は都市部に残っていても明日食べていくこともできない状況に。多くの出稼ぎ労働者の人々は、徒歩で100キロ以上歩いて帰省し、その途中で飢死で亡くなってしまう方も出てしまいました。

ロックダウンに伴い、私の事業も停止せざるを得ない状況となりました。
従業員たちには給与を支払い続けることができましたが、スラム街に住む、従業員の親族、近所の人々はほとんどが失業しました。私が直接把握している限りだと、スラム街の9割以上が失業したのではと記憶しています。

当時のインドは、コロナの感染拡大により、医療用酸素が不足するなど逼迫した状況で、貧困層の人々への支援は行き届きませんでした。

ロックダウンが長引くたびに、スラムの人々から、「助け」を求める声がどんどん増えていきました。

「メイドとして働いてたけど、ロックダウン期間に働けなくて、給与がなくて生活が苦しい」
「小さな娘にミルクすら与えることができず、途方に暮れている」

そこで、食糧配給や医療支援を行うべく、クラウドファンディングを立ち上げ、緊急支援を行いました。

約2年間のコロナ禍で、約500万円以上の寄付を頂き、10,000名以上に食糧・医療サポートを実施しました。

明日食べていけるか分からないほどに困窮している状況で、この緊急支援によって、助かった命もありました。

ただ、それ以上にコロナ感染や飢餓で多くの人が亡くなりました。

過去に私がよく訪問していたスラム街に住むある父親は、ロックダウン前は日雇いで働いていましたが、失業し、奥さんと子供を守るために、持ちうるものを全て売り、尊厳を捨て、物乞いをして何とかお金をかき集めましたが、どうにもできず、最後には自ら命を絶ってしまいました。

そのような飢餓を現場で目の当たりにする中で、そもそも経済的に安定していれば、こんなに多くの人が飢餓に陥り、亡くなることはなかったはず、という思いが強くなり、

そのために、これまで行っていた雇用創出のソーシャルビジネスの必要性と緊急性を痛感しました。

これまで私が行ってきたソーシャルビジネスを通して、数年かかって一人一人育成し、数十人、数百人を雇用したとしても、それ以上に多くの人が貧困に苦しみ、努力する機会すらない状況があります。

私が取り組む社会問題の大きさと、自分の実力不足と、できることの微力さに、悩みました。

ロックダウンが解除され、事業を再開し、経営する中で、自分の実力不足を痛感しながら、これまでの直接的なアプローチを超え、この社会構造を変え、より多くの機会がない人に機会をつくっていくためにはどうしたらいいだろうかと考え続けました。

色々と調べる中で、いわゆる「ソーシャルイノベーション」という学術的な分野を知り、様々なジャーナルやケースを読むようになり、これまで感覚的に考えてきたことが言語化されていき、もっと深く学びたいと思うようになりました。

実は、大学院に進学するという選択肢は、これまでの人生で一度も検討したことがなかったのですが、モヤモヤしていることや、今後やっていきたいことなどをパートナー(夫)に話す中で、ふと「ソーシャルイノベーションを大学院で学ぶのはどうなの?」とアイディアをくれたことがきっかけで、修士を検討し始めました。

なぜ、LSEなのか

欧州のソーシャルイノベーションに関連するコースを5つほどリサーチ、検討していたのですが、結果的にLSEのMSc Social Innovation and Entrepreneurship(ソーシャルイノベーションと起業家精神)に進学することに決めました。

LSEの前に、なぜイギリスの大学院を選択したかというと、ソーシャルビジネスは、1990年代頃にイギリスで生まれたと言われており、インパクト投資ファンド、社会的企業、NGOなど、社会起業家のエコシステムが形成されていることから、この地でソーシャルイノベーションを学ぶことで、実現したい社会を目指す上で、ヒントを得られると考えたためです。

LSEは、QSランキングにおいて、社会科学分野で世界6位(2024年)と評価されており、多くのノーベル賞受賞者や、各国の首相・大統領を輩出する名門校と言われています。
また、インドの最下層のカーストの家庭に生まれ、出身階級の差別の撤廃に生涯を捧げた、社会変革の指導者である、アンベードカル博士も、LSEで修士号・博士号を取得されました。
LSEを志望した理由はいくつかありますが、主な理由は以下のとおりです。

多様性と、近しい志を持つ仲間が集まっていること

このコースは、インパクトセクターでの実務経験が必須で、何かしら社会問題に関わってきた人たちが入学します。同コースの卒業生複数名と話す中で、彼女たちも国際機関、社会的企業、非営利団体等での経験を有し、私と近しい課題感を持って、進学を決めていたことを知りました。

また、このコースは毎年50名前後の学生が入学しますが、出身国は数十か国以上と多国籍なメンバーかつ、それぞれが様々な社会問題に関わってきたため、多様な視点を得て、自身のビジョンを深めていくために、良い環境になりそうだと感じました。

今年の9月からクラスメイトとなるメンバーの一部と話しましたが、インドやインドネシアで、貧困問題の解決・女性のエンパワーメントを目指したソーシャルビジネスを創業した人や、アメリカでインパクトセクター向けの広告代理店で働く人などがいます。

多くの実践の機会があること

LSEは学術的な研究で評価を得ていることで有名ですが、私が進学するコースは、学問と実践を通して、社会問題を解決し、より良い社会を創ることを目指す、実学を志向するコースです。

カリキュラムとしては、このような感じです。

・Understanding Social Problems for Innovation and Entrepreneurship(社会問題の理解)
・Social Innovation Design(ソーシャルイノベーションデザイン)
・Organisational Behaviour and Marketing for Social Entrepreneurs(社会起業家のための組織行動論とマーケティング)
・Managerial Economics and Quantitative Measurement for Social Entrepreneurs(社会起業家のための経営経済学と定量測定)

LSEのコース概要より

上記に加えて、フィールドワークを通じたコンサルティングプロジェクトもあり、理論だけでなく実践の機会もあります。これまではバングラデシュや南アフリカの社会的企業を訪問していたようです。

さらに、修士号を取得する場合は、通常修士論文を執筆することになりますが、このコースでは、修士論文の代わりに社会的企業の事業プランを作成したり、社会的企業にコンサルティングプロジェクトを行うことができる点も、ユニークです。

コース外では、LSE Generate100x Impact Acceleratorという、ファンドレイジングの機会を伴う起業家向けの起業支援プログラムなど、多くの実践の機会が用意されていることも、魅力的でした。

今後の目標

長期的なビジョンの具体化


私は、貧困家庭に生まれたために、努力する機会すら得られない人たちが、努力する機会を得て、どんな環境に生まれたとしても、希望を持ち、誰もが努力する機会を得られる社会を創ることを目指しています。

これは約6年前くらいに渡印した頃から、ずっと変わらないビジョンです。
貧困問題を解決していくためには、コミュニティの全ての人とともに取り組んでいくことが重要ですが、その中でも、貧困の連鎖を断ち切るうえで、私は、女性たちがセンターピンになると信じています。

貧困地域の女性たちと関わる中で、「自分はこのままスラム街で生涯を終えてもいいけど、自分の子供にそんな思いはさせたくない」と話してくれたお母さんがいました。

それは言葉だけでなく、実際に収入向上した結果、子供を私立学校に通わせたり、子供の未来のための貯金を開始し、さらに「私ももっと新しいことを学んで、成長していきたい」と意思と目標を持てるようになったりしていく軌跡をこれまで見てきました。

そのようなインパクトを、数十人、数百人ではなく、もっと多くの人々に与え、機会を創っていきたいです。

しかし今の自分では実力不足で、野心的かつ、リアリティのあるビジョンを描く力も不足しています。今の自分の枠を超えて、向こう10年、20年と長期的にどんな社会を創っていきたいのか、そしてどのようにシステムチェンジをおこすことができるのかを深めていきたいと思います。

社会のお金の流れを変えていく

実は、ここ最近は、インドのインパクト投資ファンドの立ち上げに従事していました。具体的には、投資候補先となる社会起業家に話を聞いたり、彼らの現場を訪問したり、社会起業家支援のプログラム・起業家コミュニティの企画を行ったりしていました。

最高のチームとのディスカッションの日々


その仕事を通して、ベンチャーキャピタルや助成団体をはじめとする、資金提供の意思決定をする層を見ると、多くの人はいわゆる上流階級に生まれ、最上の教育を受け、一流の企業出身の方がとても多いと感じました。とても優秀な方々ですが、現場での経験ならびに受益者の人々の目線を持つ方が非常に少ないと感じました。

これまで草の根レベルで、女性や子供たちなど受益者の本人たちと向き合ってきた視点を持って、資金が届きづらいが必要なところに資金が流れるように、社会のお金の流れを変えていくことにも、何かしらのかたちで関わっていきたいと考えています。

夫婦で留学します


実は、私の留学に合わせ、夫もともにロンドンに留学することとなりました。

それぞれやりたいことがあり、また、私は今年32歳でライフプランも色々と考える年齢に差し掛かり、留学のタイミングについては二人で時間をかけて議論してきました。

紆余曲折がありましたが、奇跡的に二人ともロンドンの大学院に合格をもらうことができました。
夫はLondon Business School(ロンドンビジネススール、略称:LBS)のMBAに進学します。お互いに大学院や所属するコミュニティが違うからこそ、新しいネットワークも築けそうで、楽しみです。

御礼

出願準備にあたり、多くの方のご協力、サポートのお陰で、ここまで来ることができました。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

特に、ソーシャルアントレプレナーシップを教えてくださった、ボーダレスジャパン代表のボス(田口さん)、アジア社会起業家塾の伊藤先生、
学部時代の桑原先生、前職の上司である安達さんには、皆さんそれぞれ多忙を極められている中、私の出願に必要だった推薦状の対応をいただき、本当に感謝しております。この他にも、LSEのアルムナイの皆さんをはじめ、海外大学院を卒業された方々にも、多くのサポートを頂きました。本当にありがとうございます。

また、大変有り難いことに、英国政府による全額奨学金「Chevening Scholarship(チーヴニング奨学金)」に合格を頂くこともできました。

チーヴニング奨学金は、イギリス政府がサポートする修士課程に留学する人を対象とした奨学金で、日本だけでなく、世界各国の人を対象としています。金銭的な支援の充実はもちろん、留学中~卒業後も繋がり続けるチーヴニングコミュニティの一員になることができます。

非常に競争率の高い奨学金で、全世界で見ると競争率は2-3%とも言われています。

社会をより良くしたい志を持つ、世界中のリーダーたちと繋がれることも、とても楽しみです。

留学中の様子についても、時間が許す限り、発信していきたいと思います!


5,000字を超える超大作になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

留学中は、主にインスタとLinkedInで発信しようと思っています。
インスタは鍵かかっていますが、ご興味ある方はフォロー頂ければと思います!

Instagram

LinkedIn

分野が異なるとどこまでお力になれるかは微妙ですが、インパクト×イギリス修士を目指される方がおりましたら、可能な範囲でお役に立てればと思うので、LinkedIn、Xなどからご連絡いただければ幸いです。

応援したい!と思っていただけた方はぜひサポート頂けると嬉しいです:)