1月6日(土) クレープの中の空気
すうううーーー
バニラアイスのひんやり冷気、生クリームのもったりした甘い香り、水分たっぷりのいちごを通り抜ける空気。
クレープの中の空気を思いっきり吸い込んでにやける。
スプーンを取りに行ってくれている夫にも吸わせてあげたくて、食べたい気持ちを我慢してクレープの生地のカリカリを小さく噛りながら待つ。
「ねえ、ここの空気吸ってみてよ」
すうううーーー
「冷たい空気と生クリームといちごの香りを楽しめるよ」
いいね
「いいでしょふふふ(これはクリスマスの匂いなんだ。誕生日の匂いでもいいけど。)」
夫と一つのクレープを分けながら食べた。
食べ始めるとモクモクモクモク静かになっていく。
だけど
(生クリームとカスタードクリームもう少し食べたかったな)
(アイス最後の一口を黙って食べてしまった!気づいたかな…にひ)
(いちご残してくれるかな)
(玄米フレークしか残ってない…最後は生クリームかいちごかカスタードクリームの味がよかったなあ)
(アイス最後の一口黙って食べちゃったから黙っておこう)
脳内でずっと喋ってた。
買い物を済ませて、帰りのエレベーターの中で何度も深呼吸をしてクレープの中の空気を思い出していた。
買ったものを片付け、布団カバーを洗濯乾燥機に入れる。
このあとは、カフェと本屋さんに出かけよう。その前に夫はトイレ。
私はソファーに腰掛け日が沈んでいく薄暗い部屋の中で『道具のブツリ』の本を開く。
ブツリおもしろそう。
横になる。
ブツリおもしろそうだなあ。
目をつむる。
ブツリおもしろそう〜。
「寝てるね。行くよ〜〜〜。」
カバンに道具のブツリの本も入れる。カバンの中に入ってる本は5冊。読まんだろう。ただ重たいだけだろう。そんなことは分かってても入れてしまう。
カフェについたら日記を書いてしまう。
5冊の本を読むよりも、クレープの中の空気を忘れたくない。
本屋さんに行っていた夫がカフェに戻って来る。
道具のブツリを読み始める。
途中から子どもの気持ちを考えながら読んでいた。
身の回りのあらゆるモノ、コト、不思議でおもしろくて、時間も忘れて探求してて、それは〇〇だよなんて名前も法則もすぐには必要なくて、既に世の中では当たり前のことでも全部ぜんぶ自分がはじめて見つけたんだ!と感動し続けてほしいと思った。
夫が鶏鍋を作ってくれた。
味見のためにスープの入った器を私の口元に傾けてくれた。
ボウルを洗っていた私は口元に流れてくるスープに向かって息を吐き続けた。空気で液体に抵抗してみたけど液体の方が重くてスープが口の中に入ってきてむせた。
きっと子どもはこんな感じで身の回りのもので遊んでるんだろうなあ。
そんなことを考えていたら
「あんたはいつもボーっとしとる。口をポカンとあけて、しゃんとしいやー!」
そう大人に言われたことを思い出す。
ボーっとしてたって色々考えてたりするんだぜ。
ボーっとしてるくらいで怒られるなんて、せかせかしてんな世界は。あえてゆっくりしてやろう。そんなことを考えてた子どもの頃も思い出した。
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