Poem|蕾


親指と人差し指を寄せながら
Googleマップを縮小し
わたしのいるばしょを見失う

世界はいつも 蕾のままおわる
わたしには
その全容を捉えきれないし
すべてを把握しようとする
つもりもない
ゆえに想像できる
ひらかない花は
わたしのからだの奥で
何十回も 冬を越す

わたしの生活の舞台には
もうすぐ春が訪れる
ふとした光の角度が
いつもと違うことに気づき
わたしはすこしかなしくなる
紅茶を淹れる
部屋の植物をベランダに移す
わたしのすぐそばでひらく季節を
どうすることもできなくて
からだは植物のように
伸び伸びとは変われなくて
瞼の奥のやわらかい蕾に
思いをはせる
静かにゆるむ


蕾/佐藤 咲生

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?