見出し画像

読書の記憶

エルサルバドルに来て思う事。
本がない。

そもそも本が好きというのは案外珍しいのかな
と感じたので今回は読書の話。

さて、エルサルバドルでは
首都の大きなショッピングモールに行けば本屋はあるが、かなり高価である。安くても10$、絵本なんて20$なら安い方なのではないだろうか。
(参考:同僚の給料は300$/月)

一方、日本では文庫本なら500円程、中古本なら100円でも入手できるし、
図書館がおおよそ各自治体にあるから誰でも無償で本を読める。

隊員連絡所には過去の隊員が置いて行った本が並ぶ。
過去の協力隊が関心を持つ本たちは興味深いし、
ここでも日本語の紙の本が楽しめる事が心の底からありがたい。


読書について現地の人に聞くと
本は高価であることもあり、読む人は殆どいないという。

私の配属先の専門学校には図書室がある。
蔵書数は2,000冊ほど。
自由に出入りできず、欲しい本を司書に頼んで持ってきてもらうスタイル。
(盗難防止だろうか)
中を見せてもらったが、授業で使うであろう資料以外は埃を被っている。

最近首都に唯一の公共図書館ができた。立派な建物にカフェやレストランが併設され、VR体験やゲーム体験コーナー、漫画コーナー等もある。
ただ、現時点では専門書が殆どなく、貸し出しもない(?!)。
本の展示施設に近いように感じる。

しかし、読書習慣がないのに突然立派な図書館(?)が建っても、本を読むのだろうか。読みたいと思う人がどれ程いるのだろうか。
幼少期から本に触れる環境が、大人になってからの読書習慣に影響するのではないか。と、経験上思う。

日本にいるからといって、皆が本を読むわけではもちろんない。
忙しい現代の日本人、半年に1冊も読まないという人だって一定数いるのではないだろうか。

本を読むきっかけは人それぞれだと思う。
近所に図書館があったとか、家族が本好きであるとか。

私の読書のきっかけは母だった。

空き時間があれば鞄から本を取り出す母の姿を見て、本を読み始めた。
栞で文字を追う読み方まで長らく母を真似ていた。

小学校低学年の頃、ハリーポッターが人気になり、
母が原作を読み始めたのをきっかけに、自分も読んでみた。
フリガナがあまりなく、分厚い本は当時の私には難しかった。
そこで、代替となる作品として勧められたのがダレンシャンだった。
表現も比較的容易で、文字も大きく分厚過ぎない。
何より、少し変わった装丁が子供心をくすぐり、何かと持ち歩いていた。

小学生まで住んでいたマンションには小さな図書室があり、
週に一度の読み聞かせを楽しみにしていた。

この影響で読み聞かせが好きになり、
妹も一緒に理解できるからという取って付けたような理由で
母に読み聞かせをせがんでいた。
小学3年生まで読み聞かせをしてくれていた母には頭が上がらない。
(エルマーの冒険3巻分の読み聞かせなど大変だったと思う…)

思い返すと学生時代、周囲には読書がしやすい環境があった。

幼馴染も本が好きで、読み終えた本で面白いものがあれば交換していた。
小学校では読書数に応じてクラスで表彰されるといった取り組みもあり、
一定数読書をする子がいたため、本好きもあまり浮かなかった。

お小遣い制でない我が家には月に一冊を目安に好きな小説を買っても良いというルールがあった。(明示はされてないけど、暗黙の了解的に)
中学校では山田悠介(ホラー作家)のブームもあり、友達の誕生日に本を渡していた記憶もある。
高校は朝10分間、読書の時間が設けられており、半ば強制的に皆読書をしていた。

大学院の研究室を決めかねた時、
当時研究室にいた講師の先生にいただいたアドバイスも、大切な本を選ぶきっかけになった。
「大きな図書館や本屋へ行くと良い。自分の興味のある分野の書棚で
一番心惹かれる本があなたの最も好奇心を抱ける研究分野であり、研究室選びの助けになると思う。」
(少し言い回しは違うかもしれないけど、凡そこのような事を仰っていた)


帰省して、家族の蔵書室と化した私の部屋で
母の買った本が自分の買った本と被っていたりするのを発見すると
少し嬉しい。
今も母と古本屋に行くのは懐かしさを感じる時間だ。
ああだこうだと言いながら本棚を眺めているのは楽しい。

電子書籍は場所を問わず読書ができ、嵩張らずに本を管理できるなど大変便利で、途上国で生活する今非常に助かっている。
電子書籍の購入をずっと渋っていたが、出国を期に購入した。
バッテリーも長時間もつし、電気がなくても読める為かなり重宝している。

それでも紙の書籍の並ぶ本棚を前に思いを馳せる時間は、利便性に代えがたい。


長々とここまで書いて何が言いたいか。
首都に立派な図書展示場(図書館)を作るより、まずは地方に小さな図書室と司書を設置し、形骸化させずにきちんと運営する。
子どもたち、親子に本を手に取る機会をつくる方が、よほど価値があるのではないのだろうかと私は思う。


ショッピングモールの本屋
隊員連絡所と書棚
配属先の図書室
エルサルバドル国立図書館
引用:https://soybibliotecario.blogspot.com/2023/11/asi-es-la-nueva-biblioteca-nacional-de.html


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?