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本格ホラーミステリー小説『モスキート』ができるまでの悪戦苦闘の日々

●下手くそだと罵られた日々

 私が初めて小説を書いたのは小学一年生のころ。原稿用紙五枚分のホームドラマでした。とはいえ一年生の書くものなので、物語というにはあまりにもつたないものでした。それから今まで三十年越え。あきらめもせずにまだ物語を綴っています。

 とはいえ、鳴かず飛ばずのまま今に至ります。webのエッセイコンテストで賞をいただいたこともありました。が、結局のところ、出版までにはいたらず。さらに小説はといえば、まったく芽が出ず。

 恵喜どうこはエッセイは読めるけど、小説は下手くそ。

というイメージが完全定着しておりました。実際、文章力に関してはまったく評価がいただけませんし、選評においても描写が冗長だという指摘もいただきました。

 とにもかくにも『へたくそ』という言葉がずっとまとわりついた日々だったのでございます。

●転機は突然に

 今からまるっと2年前でしょうか。突然、読書ができる状態に心身が激変しました。それまでの私はかなり自分を抑圧していて、本来の内向的な性格を外向的な性格へと無理やりシフトチェンジしていたことで、性格や性質が歪んでしまっていたのです。『内向的な人』の本を読んだことで自分を解放。ここで本が読めるようになりました。

以前から本を読めと言われていたので、この機会に読書をすることにしました。まずは心理学的な本を読み漁りました。次に一般文芸、ラノベ、ライト文芸とちゃんぽん読み。

 そしてクリスマスに友人からある一冊の本をいただきます。

 京極夏彦さん『姑獲鳥の夏』

 これを読んだときの衝撃はすさまじかったです。それまで心理学や脳科学についての実用書を読んでいただけに、こんな本が一般文芸にはあるのか。こんな書き方ができるのか。なんてドラマチックで自由で、面白いんだろう。ああ、こういう作品が書きたい! 猛烈にそう思ったのです。

●ミステリーを書け

 実は10年前、とある編集者の方と知り合いだった私。自分の作品もよく読んでくださり、感想もいただきました。その中で

「あなたの書き方はミステリーに向いているから、ミステリーを書くべきだ」

と言われたのです。しかし当時の私はさっぱり首を傾げるばかり。恋愛や青春、官能小説を書いていたのです。ミステリーは好きだけどトリックも浮かばない。そもそも、人を殺して犯人を暴いていくものなんて書けるわけがない。

と敬遠していたのです。

 しかし、上記の姑獲鳥の夏や綾辻行人さん『十角館の殺人』などミステリーをガンガン読み進めていくと、自分も書きたくなって仕方なくなってくる。

 どうしたら書けるのか。人を殺すトリックは思い浮かばない。犯行に至る動機なら書ける。それをミステリー小説としたらどうだろう?

●ホラーは人間の深いところに触れていくもの

 ホラー小説も同じように読み進めていた私。ホラージャンルっていったいなんだろうということを考えてみて、幽霊がいないとダメなのか。殺人鬼が大量虐殺を行うスプラッタがないとダメなのか。

 そんなときに答えをくれたのが岩井志麻子さん『ぼっけえ、きょうてえ』の林真理子さんの解説の一文(単行本の解説)。

『恐怖を通して、人間の深いところに触れていくのがホラー小説だ』

これです。この一文を読んだ瞬間、電撃が走りました。私はホラーというジャンルで人間の深いところに触れるものを作る。かつミステリーという手法を使うことで、それを再現するんだ!と。

●web小説サイトでは本格ミステリーは圧倒的不利

 web小説サイトにおいて、本格ミステリー小説は圧倒的に不利で、ほとんど読者がつきません。主流派異世界もののライトノベル、続いて恋愛や青春小説。ライト文芸というジャンルも出てきて、ライトノベルよりは年代層を高めにした作品も流行ってきましたが、一般文芸はまったくといって読者が増えません。

 そりゃそうです。一般文芸好きな紙の本を読む人たちはそもそもwebで小説読もうなんて思いません(笑) 事実、私自身、紙の本をたくさん読むようになったらwebの小説読みませんから。

 でも、ちょっと最近、視力が落ちて来たり、娘の剣道のけいこの送迎で待ち時間ができたりすると本が読みたくても読めなくなっているんです。暗闇じゃ無理。光源確保が厳しいところでは読めない。字が小さいとそもそも読みづらい。そんなとき、タブレットのような電子媒体だと読めちゃうわけです。こういう人、潜在的には多くなってきているのではないかと思うのです。ならば、こういう一般文芸好きだけど、紙本大好きだけど、webでそういうの読めるなら読みたいよって言う人を連れてこられるようなものを作っていけばいいじゃないか――そして読者さんを開拓していきたい! と思うようになったのです。


モスキート

●本格ホラーミステリー小説『モスキート』

 そういう様々な経緯を経てできたのが上記表題の小説となります。現在はカクヨムという小説サイトで公開中のこの作品。私が一般文芸本を100冊読んで書いたものです。習作のつもりでもありました。本格的なホラーミステリー小説を書いたのはこれが初めてだと言っても過言ではありません。

 が、いっさい言いわけするつもりはありません! これに関してはとにかく手にとって読んでみてほしい。自分が胸を張って『読んでくれ』と叫ぶことができる作品なのです。

【あらすじ】

産婦人科医の田口道子は奇妙な夢に擦り減っていた。そんな折、臨月となった友人の金沢萌に帝王切開で生みたいと懇願される。自然分娩を勧める道子だが、萌に押し切られて彼女の夫であり、道子の元恋人である洋平への説得を了承してしまう。萌に対する嫌悪感を拭いきれないまま患者として受け入れ、かろうじて友人関係を繋ぐ道子の前に萌を『美咲』という名で呼ぶ麦田くるみが現れる。否定する萌に対して、くるみは絶対に美咲だと主張する。そう断言できる理由が道子自身であるというくるみから、道子は萌の過去を教えてもらうことに。しかし、それは道子の中でくすぶっていた萌への殺意に火をつけることになったのだった。


【冒頭】

 目の前に巨大な蚊がいた。身長百六十センチメートルあるわたしと同じくらいの大きさである。しっかりと二本の後ろ足で立った蚊は残った前足と中足をうまく使って、わたしの躰を抱え込んでいる。わたしをじっと見据える目はわたしの頭から頬あたりくらいの大きさがあり、卵のようなつるんとした小さな球体がびっしりと密集していた。それから、のこぎりのようにギザギザになった口器の先はわたしの胸の真ん中に深々と突き刺さっている。太い水道管の直径ぐらいはあるように見える口先に貫かれているにもかかわらず、不思議なくらい痛みがない。わたしの心臓を的確に捉えているというのに、だ。分泌される唾液に血を固まらせない成分が含まれていて、それが痛みの軽減を促す作用を持ち合わせているらしい。固まることない血液は太い管から、どんどんすすり上げられる。

――じゅる。じゅるる。じゅるうう。

以下続きは小説サイトカクヨムまで――


 冒頭からグロい描写があります。けれど、二話目からは人間ドラマが始まります。実際、ホラージャンル苦手な人でも気にならずに読めたという感想をいただいているので、思ったよりは表現が過激ではないかもしれません。

 さらに言うと、短編用として書いたので謎がごっそり残ったままです。現在、長編用に書き直しております。公募にこの作品をぶつけるつもりでいます。


●一般文芸好きをもっとweb小説サイトに呼び込みたい!

 紙の本を読みなれている方の読書感想でよくある

「あー、これ、web小説だもんね」

というもの。これを覆すものを作っております。

 どうぞ興味を持たれた方、ぜひお越しください。

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