日本酒の原料「酒米」に詳しくなれる記事まとめ
日本酒を造るときに使う酒造りに適したお米のことを「酒造好適米」といいます。一般的には「酒米」と呼ばれてますね。
日本酒のラベルには、使われている原料米の名前が書かれていることもあり、「山田錦(やまだにしき)」や「五百万石(ごひゃくまんごく)」といった名前を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
今回は、日本酒専門WEBメディア「SAKETIMES」の公開記事の中から、「酒米」について詳しくなれる記事をご紹介します。
「酒米」と「食用米」は何が違う?
日本酒の酒質や酒造りのしやすさにこだわらなければ、原料として使う米はどんなものでも構いません。私たちが普段食べている食用米、たとえば「コシヒカリ」や「ササニシキ」などでも日本酒を造ることができます。
酒米が食用米と比べて優れている点は、以下の3つです。
1.心白(しんぱく)がある
「心白」とは、米の中心部にある白く不透明な部分のこと。でんぷんに隙間ができたもので、光が屈折するので白く曇って見えます。
心白のある米で麹を造ると、この隙間に麹菌の菌糸が入り込み、米の内側で繁殖してでんぷんの分解を進めます。また、吸水性がよいため、もろみが溶けやすくなります。食用米には、この心白がほとんどありません。
2.タンパク質や脂質が少ない
タンパク質や脂質は、ごはんとして炊くと旨味を引き出しますが、酒造りにとってはやっかいな存在です。
タンパク質が多いと雑味の原因になり、脂質が多いと日本酒らしい香気成分の生成を邪魔します。そのため、酒米は低タンパク・低脂質がよいとされています。
3.粒が大きくて砕けにくい
日本酒の品質を劣化させるタンパク質や脂質は米の外側に多く分布するため、酒造りでは精米作業で米の表面を多く削ります。
食用米の精米歩合はおおよそ90%ほどですが、酒造りに使う酒米の精米歩合は高く、通常で70%前後、吟醸酒などは60%以下まで削ります。米粒の大部分を削るため、酒米は大粒で砕けにくいことが求められます。
「酒米」の3つの使い方
日本酒造りは、米に含まれるデンプンが麹菌の働きによって糖化され、その糖分を酵母菌が分解してアルコール発酵を進めるという2つの反応を、ひとつのタンクのなかで同時発生的に行います。これを「並行複発酵(へいこうふくはっこう)」と呼びます。
日本酒造りの工程の中で、酒米は、「酒母米」「麹米」「掛米」の3つの用途で使われ、いずれもお米を蒸してから使います。
「酒母米」
「酒母(しゅぼ)」とは、日本酒づくりのスターターとなる優良な酵母が育った液体のこと。蒸米と米麹、酵母、乳酸、水によって造られます。発酵が進むと「醪(もろみ)」となります。この酒母を造る際に使われる蒸米が「酒母米(しゅぼまい)」です。
酒母米として使われる米は、全体の約1割です。
「麹米」
米麹のもとになる米を「麹米(こうじまい)」と呼びます。米麹は、蒸した米に麹菌を付着させ繁殖させてつくります。
麹菌の持つ酵素にはでんぷんを分解してを糖に変えるという重要な働きがあるため、麹米の出来具合が日本酒全体の質に大きく影響します。麹菌の菌糸が米の中に入り込みやすくするために、米の中に隙間がある心白米が使われることが多いです。
麹米として使われる米は、全体の約2割です。
「掛米」
「醪(もろみ)」を仕込む際に段階的に加える米のことを「掛米(かけまい)」と呼びます。十分に冷やした蒸米をタンクに投入すると、麹と酵母によるアルコール発酵が行われます。
掛米として使われる米は、全体の約7割です。
代表的な酒米
現在栽培されている酒米(酒造好適米)は、およそ100種類ほど。それぞれさまざまな特徴を持ち、同じ品種でも栽培する土地や気候条件によって品質は変化します。
その中から代表的な酒米をご紹介します。
酒米の王様「山田錦」
「山田錦」は、酒米に必要な特徴を高いレベルで備えていることから、「酒米の王様」と呼ばれ、香りがよく、まろやかなお酒になると言われています。甘・辛・酸、すべてのバランスが良く、うまみが同心円状に広がっていく印象です。
全国新酒鑑評会などの出品酒をみると、「山田錦」で造られた大吟醸酒が数多く出品されています。全酒米の生産量のうち約40%を占めています。
すっきりとした味わい「五百万石」
新潟県で誕生した「五百万石」は、小さめの粒で高精白には向きませんが、心白が大きく、麹菌が入り込みやすいのが特徴です。
やや硬くてすっきりとしたキレの良い味わい。芯が強く、一世を風靡した新潟の淡麗辛口の酒を醸すにはもってこいの酒米でした。
酒米の源流「雄町」
「雄町(おまち)」は非常に溶けやすいお米で、濃醇でしっかりしたコクと味わい深いお酒を生み出します。
個性あるお酒に魅了された人々は、「オマチスト」と呼ばれているほど。雄町の総生産量のうち90%は生まれ故郷の岡山県で栽培されています。
フルーティーな香り「美山錦」
「美山錦」は、酒質としては繊細な香りを持ち、軽くすっきりとした味わいに仕上がることが特徴。
バナナや完熟メロンのような、やや派手な吟醸香と、細身ながらフルーティーな味わいを感じられます。吟醸酒や純米吟醸酒で、華やかな香りを楽しみながら軽快に飲むような酒に向いています。
まだまだあります!「酒米」関連の新しい試み
上記で紹介した代表的な酒米以外にも、地方自治体や企業が中心となって独自に新品種を開発したり、古くに途絶えてしまった品種を復活させたりと、酒米に関する話題は尽きません。
また、タンパク質や脂質の多い食用米の特徴を活かして個性的な酒を造る酒蔵も現れています。
酒米の種類によって同じ銘柄でも味や香りが変わるので飲み比べをしてみると楽しいかもしれません。
日本酒を購入する際にラベルに書かれている米の種類に注目すると、自分の好みのお酒を選びやすくなり、日本酒の楽しみ方も広がりますよ。
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