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日本酒学レポ①入学のしかたとおおまかな学習内容

4月、新潟大学 博士前期課程 日本酒学コースに入学しました。
志望動機や「日本酒学とはなんぞや?」はこちらの記事にまとめています。

先週、入学式やガイダンスがあり、なんやかんやあって履修登録まで終わったところで、わたしも「なるほどこういうことをやるんだな」というのがじわじわわかってきたので、「日本酒学に興味がある」という人のためにもまとめてみたいと思います。

※関係者各位:この記事は、指導教員の先生に許可を取った上で執筆していますが、気になるところなどがあればいつでもお申し付けください。

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博士課程には「前期」と「後期」がある

新潟大学の大学院は、「博士前期課程」と「博士後期課程」に分かれています。一般的な言い方で表現すると、「前期」=修士(Master's Degree)「後期」=PhDです。
前期を取っていない人も、一定の条件をクリアすれば後期から入学できるようですが、わたしは普通に勉強がしたいのと、論文の書き方を基礎から学びたいので前期で入学しました。

前期と後期の違いはもう少し具体的な授業を受けてから詳しく書こうと思いますが、後期で入学した同期と情報を交換した限りでは、前期のほうが醸造や酒蔵研修などの実習が充実しているようです。

入学ルートには「現社研」と「自然研」がある

わたしが取材・執筆した下記の記事にまとまっていますが、日本酒学コースは学際=文理横断の学問なので、新潟大学にある10の学部すべてが関わっています。法学部や人文学部のような文系学部から、農学部や医学部のような理系学部まで、多様な角度から日本酒にアプローチをするということです。

なんですが(そしてこれからどうするのかは知らないのですが)、現状、入口は文系(現代社会文化研究科=現社研)と理系(自然科学研究科=自然研)に分かれています。カリキュラムについても、共通する部分もありますが、必修科目など、現社研と自然研で異なる部分もあります。

ちなみにわたしは現社研から入学しました。研究室の指導教員は、日本酒学コースの発起人でもある経済経営専攻の岸保行准教授です。

博士前期課程の学習内容

前期課程は2年間。修士や博士というと研究して論文を書きまくるイメージがありますが、一般的な大学・大学院と同様、期間内に取得しなければならない単位があり、必要な授業を受けることになります。

(とはいえ、2年次は論文執筆に時間が取られるため、1年次に単位をほとんど取っておくことになるよう)

では、日本酒学コースでは博士前期課程の2年間でどんな授業を受けるのか? わたしが受ける授業を例としてご紹介します。

【研究関連】
・「研究入門」
学位論文を書くために、研究や論文の作法を学ぶ。
・「課題研究」指導教員の先生のもと、研究室のメンバーたちと、それぞれの研究内容をブラッシュアップしていく。
・「課題発掘・解決セミナー」ちょっとまだよくわかってないけど、「課題研究」のビッグバージョン。コース全体の学生・指導教員が参加するっぽい。1日でまとめてやる。

【日本酒関連】
・「基礎日本酒学実習」日本酒学センターのラボで、酵母培養から発酵管理、成分分析や官能評価に至るまで、実際に手を動かしながら酒造りの基本を学ぶ。7月いっぱいをかけた集中プログラムで、この月はまるまる新潟に行く予定。
・「発展日本酒学実習」県内の酒蔵や醸造試験場にて実技の研修をおこなう(12〜2月でまばらに実施)。業界について学ぶ講義もあり。
・「日本酒学概論」日本酒についての基礎を学ぶ座学の授業。I〜Vに分かれており、I, II=自然研分野、III, IV=現社研分野、V=医学分野。最低4つ取らないといけないので、学生たちは文理両方を学ぶことになる(わたしは普通に5つ全部受けたいなぁと思っています)。
・選択科目:「酒類行政論」「酒蔵組織の企業行動論」「日本酒とブランディング」など、それぞれの先生がおこなう授業を選択。3つくらい選べる。

【その他】
専攻外(わたしの場合は日本酒学以外)のコースから、授業を最低1つは取らなくてはならない。

毎週定期的に授業を受けるイメージでいましたが、日本酒学コースに関しては、「毎週2〜3くらい授業があって、日本酒系のプログラムは短期間に集中して実施される」という感じのようです。

わたしみたいにフリーランスの社会人にとってはむしろありがたい構成ですが、持ち場がある職業の方はちょっと大変なのかもしれません。先述しましたが後期課程はここまでガッツリ授業や実習は入らないようなので、研究だけしたいなら後期入学でもいいのかも。

(おまけ)新設コースならではのいろいろ

そんな感じで、学習内容自体はとっても楽しみ! なのですが、何せ今年からスタートした新設コースなので、大学側でもオペレーションが整っていないことがしばしばあり、特に入学〜履修登録の期間は「!?」となるシーンがいくつかありました。

我々のような初期生がどんどん意見や要望を伝え、先生方や大学側もトライアンドエラーで改善していくところだと思うので、来年以降はもっとスムーズになるのではないかと予想されますが、小ネタとして一応書いておきます。

①学生証が届かない!?

学生証には、在籍番号や初期パスワードが書かれており、入学後の履修登録などの手続きに必須です。ところが、日本酒学以外のコースにはリモートで受講する学生がほとんどいないからか、学務課では郵送する気が一切なかったらしく、問い合わせても「窓口に取りに来てください」の一点張り。

入学式もガイダンスもオンラインで受けられるからしばらくは新潟に行かなくて大丈夫みたいだな、と油断していたのですが、まさか学生証のためだけに行かなきゃいけない!? と大慌て。しかし、なぜか自然研の同期生は普通に郵送してもらえるということだったので、それをタネに交渉したところ、なんとか対応してもらえることになりました。

新潟大学側としては、リモート受講でどこからでも受けられる日本酒学コースがイレギュラーなので、「社会人学生だから送ってもらえるよね」と悠長に構えず、きちんと交渉することが大事だと学びました。

(ちなみに入学手続きの資料もかなりギリギリに届いたので、県外の学生の扱いにあまり慣れていないのかなと)

②専攻外のコースが見つからない!?

学位取得のために必要な単位として、専攻外(日本酒学コース以外)の授業を最低ひとつは取らなければならないのですが、新潟大学が今年から対面授業メインに切り替えたこともあり、日本酒学コース以外の授業はオンライン対応してもらえないことがほとんど(涙)。

せっかくだから民俗学とかメディア学とか学びたいなぁと思ってそれぞれの先生に問い合わせたのですが、ことごとく「Zoom/オンデマンドは受け付けてません」と振られてしまい、最終的にギリギリ、日本酒学に関わっている先生の別コースの授業を受けさせてもらえることになりました(涙)。

もともとコロナ禍からオンライン対策を開始し、今年からはもう対面に戻そうという方針になっているので仕方ないかなと思いつつ、少し残念なポイントでした。

(おまけ)学生仲間がいると助かる

今回、ラッキーだったのが、業界まわりの関係者で同じタイミングで入学した人たちがいたことです!

「すし初」4代目の山内さん。同じく前期課程での入学。

スーパーサラリーマン兼日本酒スペシャリストa.k.aいにしえ酒店のお兄さんこと齋藤さん。後期課程の入学で、岸先生の研究室仲間。

酒粕料理研究家のまりさん。後期課程かつ自然研です。

入学から履修登録までバタバタしていましたが、同期入学のみなさんがいたおかげで情報交換をしながらクリアすることができました!
この4名に限らず、日本酒学の学生同士のコミュニティをもっと広げて、業界を活性化していければと画策中です。

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そんなわけで、ひとまず履修登録が終わった段階での日本酒学レポでした。まだ立ち上げられたばかりのコースでわからないところも多いですが、「日本酒学」を学びたいという人の参考になれるよう、これからもちょこちょこ情報発信をしていきたいと思います!

お酒を愛する素敵な人々の支援に使えればと思います。もしよろしければ少しでもサポートいただけるとうれしいです。 ※お礼コメントとしてお酒豆知識が表示されます