秘蔵剣菱の会を開催しました【レポート&事前準備について】
SAKEジャーナリストとして活動しているわたくしですが、SNSのフォロワーさんにお会いすると「剣菱の人」「剣菱大好き芸人」などと言っていただくことがあります。
ただの1ファンですが、2022年、東京国立博物館で発売された剣菱の小瓶についてツイートしたところ、1万RT&1.9万♡をいただき、問い合わせが殺到した結果、期間限定商品のつもりがレギュラー商品になってしまったのはオタク冥利に尽きました。
そんな剣菱オタクとして、去る2024年2月3日に「秘蔵剣菱の会」というイベントを主催させていただきました。剣菱酒造から蔵元の白樫政孝社長にもお越しいただき、剣菱を愛する人々が大挙し大盛況に終わりましたので、今回のnoteに当日の様子&事前準備Tipsをまとめておこうと思います。
※ヘッダー画像ご提供:シライジュンイチさん
秘蔵剣菱の会とは
秘蔵剣菱の会とは、その名のとおり、秘蔵している剣菱を持ち寄る会のこと。
剣菱のどこでも手に入る+寝かせても美味いという性質柄、「ウチに何年も前の剣菱がある」というご家庭は少なくありません。しかも、剣菱には定番酒以外にその年限定リリースのお酒もあるので、「熟成させて飲み比べしたい」というマニアも少なくないのです。
↑剣菱全種類を解説しています
というわけで、参加費に「+剣菱1本」という条件をつけてTwitterで参加を呼びかけたところ、
熱燗DJ、元剣菱蔵人、他酒蔵の蔵元、日本酒専門店店長、インフルエンサーなどなど、どえらいメンバーからの応募が。まるで4番バッターしかいない野球チームのようです。
それだけでなく、わたしが剣菱を好きになったきっかけとも言えるようなブロガーの方をはじめ、超マニアックなガチ勢も集合。老若男女勢揃いの陰陽和合(剣菱のロゴの意味)な参加者がそろいました!
スペシャルゲスト:剣菱酒造蔵元・白樫さんも参戦
そしてこの会、なんと剣菱酒造の代表取締役社長・白樫政孝さんがゲストとしてご参加してくださいました。
白樫さんには、インタビューや酒蔵訪問などで何度かお世話になっていますが、「こんな会をするのですが、よければゲストとしてお越しいただけませんか?」とお尋ねしたところ、「おもしろそうですね! 何か持っていきます」とご快諾をいただいてしまったのです。
当日は、お土産として参加者一人ひとりにおちょこ&カップケーキをご提供いただいてしまうことに。
剣菱入りのこちらのケーキ、白樫さんがお土産としてお付き合いのある福祉事業者さんのプラスになるようなものをお持ちくださったことを合わせて泣いてしまうほど素敵なお土産なのですが、そんな情報がなくてもお裾分けした友人が「うま! どこで売ってるの!?」と調べ始めるレベルで美味しいものなので、ぜひみなさんぜひお買い求めください。
パウンドケーキもおすすめです。
秘蔵剣菱の会、レポート!
さて、それでは参加者のみなさんのツイートを引用しながら、当日の様子をレポートさせていただきます!
イベントは14時からですが、準備のため主催&お手伝い&ゲストは早めに会場入り。
ヤマト営業所のトラブルで数分遅れて到着したらもう会場ができていました(理由は後述)。
じわじわ参加者が来場。受付で参加費を回収しつつ、ウェルカム剣菱をお渡しします。
遠くは島根県からお越しいただいた方も。しかも夜行バスで帰っていらっしゃったので、本当にこのためにいらっしゃったようです。みなさま、心よりありがとうございます。
わたくしが乾杯の音頭を取ることになったため、とりあえず「剣菱最高!」と叫んでスタート。
そのあとは、スペシャルゲストの白樫社長にご講話いただきました。
ここに書かないほうがよさそうなことをいろいろ教えてくださいました。
そして、白樫さんがお持ちくださったスペシャル酒3種のご紹介!
いちばん右は、なんと剣菱のしぼりたて! つまり、今期の生酒です。
白樫さん曰く、「古いのはみんな持ってきそうなので、被らないように逆に新しいものを持ってきました」とのことですが、熟成が基本である剣菱の生酒が飲める機会なんてそうそうありません。
熟成酒が鉄板の剣菱ですが、しぼりたてうまーい!!
バナナ系のフルーツ感があり、酸味と旨味が強烈なせいか、唇に触れた瞬間に「うまー!」と叫んでしまいました。それくらいわかりやすくウマいです。そして、これまで飲んだ他の生酒では感じたことのない芯の強さがある。旨い酒って、生でも旨いんやなぁ。
単体での写真を撮り忘れたのですが、真ん中は灘の新酒鑑評会に出す用の火入れ新酒でした。剣菱は熟成をポリシーとしているため「新酒の時点ではマズイ」が目標(?)らしく、毎年この鑑評会では最下位を目指しているのだそうです(最下位じゃない年は杜氏が呼び出されるという逸話も)。
確かに一般の人が「新酒」に期待する味とは違うかもしれませんが、それでも十分旨いです。若い剣菱。
左のお酒は、その名も「ラスト未納税酒」。剣菱は、長年続けた桶買い(酒蔵間では未納税でのやりとりになる)を令和1年醸造年度にやめたのですが、その最後の納品酒だそうです。
剣菱の桶買い・桶売りについてはわたしが取材・執筆したこちらの記事がわかりやすいかと思います。
いずれも非売品のこちら、参加者のみなさんから「これ飲んだだけでモトが取れる!」と喜んでいただけました。
そのあとはご歓談タイム。「幹事だからあまり飲むタイミングないかな……」と思っていたのですが、屈強なオタクたちの集まりゆえみなさん勝手に楽しんでくださったので、早々から酔っ払うほど飲むことができました。
それぞれが持ってきた瑞祥(剣菱の最高スペック純米酒)を醸造年度順に並べて飲み比べ。
灘の生一本(ブレンドしない剣菱。毎年選ばれたタンクのお酒を瓶詰め)でも同じことが起きていました。
今回、ご厚意で熱燗をつけてくれた熱燗DJつけたろうさん。剣菱が大好きだからとプライベートで参加してくださったのですが、わざわざ熱燗ブースを設けてみんなのリクエストに答えてくださいました。やっぱりお燗があってこその剣菱ですね!
折を見て自己&マイ剣菱紹介タイムを入れようと思っていたのですが、とても多くの方にご参加いただいたので、「スタンダード剣菱(いちばんリーズナブルなラインナップ)持ってきた人?」「じゃあ、黒松剣菱(コンビニやスーパーでも売ってる、ちょい上位な剣菱)持ってきた人!」……と、とりあえずこちらからフロアに質問を投げかける方式にしてみました。
剣菱、ラインナップがわかりやすいので、こういうときにいいですね。なぜか極上黒松剣菱(アル添剣菱の最高スペックで、一升瓶のみ販売)と瑞穂黒松剣菱(純米酒で、四合瓶のみ販売)が少なめでした。
まあ、基本的に剣菱のラインナップはちょっとしかないのですが、「それ以外を持ってきた人?」と質問したところ、ぽちぽちと手が。
わたしの大好きな居酒屋さんである新橋ひらの店主さんが、「これは醸造スペック的に、剣菱に桶売りした酒と違いない」というお酒を持ってきてくださいました(笑)。ちなみにこのころの菊鷹の杜氏さんは、みんな大好き光栄菊(佐賀)の現杜氏さんです!
桶を持ってきた方はほかにも(楽の世/愛知県)。なんて懐の深い会なんだ。
あとは料飲店限定で卸している樽酒を持ってきてくださった方のお話などを聞いていたところ、一人の方から「熟成させたものしか持ってきてはいけないということで、加温熟成してきました」という申告が。
みなさんご存知かわかりませんが、熱を加えると、熟成と似た現象が起こります。それを利用して歴史を捏造したということです。
すると、
「あ、僕も加温熟成しました」
「僕のも加温熟成、あと、酸素添加したやつもあります」
と、さらに二人の加温熟成者が出現。
そんなこんなで情報量が多かったので、自己&マイ剣菱紹介は問題児のみで終わってしまいました。
本当にそのとおりだと思います。
そんなこんなで矢のように過ぎ去った一次会。最後には、みんなが持ってきた剣菱を種類ごとにまとめて並べ、白樫社長と一緒に撮影タイム。
「びしざんまい」ポーズをしてくださる白樫社長。サービス精神が旺盛すぎます。
二次会はフードもスペシャル!
17時に中締めをしたあとは、18時からの二次会に向けて準備開始。とはいえ、ほとんどの方が休憩中にも飲んでいらっしゃいました。
二次会ではフードを用意。こちらで買い揃えたもののほか、参加者の中に居酒屋店主&料理研究家などがいらっしゃったため、特別に1、2品提供していただくことができました。
「居酒屋ちぇけ」のちぇけくんご提供。
写真を撮りそびれてしまいましたが、日本酒料理研究家・ももたそは、剣菱に合うかぼちゃサラダを作ってきてくれました。
白樫社長も絶賛のペアリングレシピはこちらです。
なお、剣菱をビールで割った剣ビールを作るためにサッポロ黒ラベルを一人一本ずつ配りました(わたしはそのまま飲みました)。
二次会からの参加者も集まり、熱気冷めやらぬまま白樫さんへの質問タイム。
「生酛はやらないの?」「桶は復活しない?」などの突っ込んだ質問が相次ぎましたが、本当になんでも答えてくださいました。
そのあとはみんなで協力してお片付け。希望者で近所の居酒屋にて三次会をして、終電ギリギリに帰路につきました。
みんなが終始笑顔で、「楽しかった!」という声を口々に聞けたのが本当にうれしかったです。今回の記事にもたくさん引用させていただきましたが、Twitter (X)で「#秘蔵剣菱の会」を検索すると、当日の楽しそうな様子がずらっと見られますよ!
(おまけ)イベントは事前準備が9割
今回のイベント、白樫社長とご一緒に、剣菱酒造の若手社員さんがいらっしゃいました。どうやら、剣菱が「こういうイベント(たぶん、ファンの集い的な意味)」に参加するのは初めてとのことで、勉強のためにいらっしゃったそう。
初めに聞いたときは「何を勉強するんだろう……変態日本酒オタクたちの生態?」と勘繰ってしまったのですが、自分自身この規模のイベントを初めてやってみてとても勉強になったので、ちょこっと書き留めておこうと思います。
1. 参加者を集める
今回のイベントは、ほぼTwitter (X)のみで募集しました。そのため、終わってからFacebookなどの投稿を見た人から「行きたかったんだけど……」と言われました。すみませんでした。
参加希望のみなさんが周囲の剣菱好きや熟成酒好きに声をかけてくれたことで、20代の日本酒インフルエンサーからSNSには出てこない歴戦の猛者まで幅広い方々が集まってくれました。
ライト層からディープすぎてマントル突入しているような層まで集まってくれるイベントになったことが、今回個人的にうれしかったところです。
2. 会場を選ぶ
会場は、北区赤羽会館にしました。以前、ここで開かれたお酒の会に参加したことがあり、「こういうことができるんだろうな」というイメージをしやすかったためです(この規模のイベントが初めてなので、知らないところだとさらに作業コストがかかりそうだなと)。
そして詳細を調べていて気づいたのですが、赤羽会館、レンタル料がはちゃめちゃに安い。わたしは杉並区民ですが、北区民だともっと安いようです。このおかげで、フードや備品にきちんとお金をかけることができました。
しかし、公民館とあって制約は多かったです。電熱機器は禁止、受付で配達荷物を預かってもらえない、など、ちょっとあたふたする場面はありました。
3. 必要なものを準備する
参加人数から合計の参加費を割り出し、必要物をリストアップ、かさばるもの以外はインターネットで購入しつつ、予算内に収まるようにフードの予約をしました。
今回、一次会のおつまみは、神戸つながりということで伍魚福さんのおつまみセットを用意しました。マンゴー入りのチータラみたいなのが美味しかったです。
二次会のフードは、参加者のみなさんのリクエストを聞きつつ予約。ちぇけくん&ももたそに材料費を確認し、提供内容を相談しました。
4. 当日の動きを決める
当日、お手伝いを申し出てくれる方が多かったので、こんなタイムスケジュールを作ってみました。
当日ぐるぐる動き回ることになりそうだなと思い、それぞれ現場監督・受付(会計)・お買い物・設営係という役割を指名し、何をしてほしいのかをスケジュール表にまとめておいたところ、実質わたしはほぼ何もすることがありませんでした。
今回、イベント企画のときから相談に乗ってくれていた現場監督が、わたしが剣菱にハマるきっかけとなったブロガーのcongiroさん。これまで数多のイベントを主催しており、当日は「業者かな?」というスピードで設営&撤収作業をリードしてくださいました。
今回のイベントについてもまとめてくださってましたので、ぜひご覧ください!
受付は頼りになりすぎる姉御である大黒正宗蔵元・安福愛さんにお願いしてしまったのですが(他社のイベントにわざわざ神戸から来て、しかも会計を頼まれるという謎)、わたしでは到底できない勘定奉行っぷりで本当に助けていただきました。大黒正宗最高!
また、参加者は名簿で管理しつつ一次会と二次会で分けて参加費を徴収したのですが(二次会に参加するか決めていない人もいたので)一次会の支払いをしたら赤シール、二次会の支払いをしたら緑シールを貼るというシステムにしたところ、トラブルなく集めることができました。
そのほか、お買い物を手伝ってくれたりこちゃん&二戸さん、設営を手伝ってくれたUGさん&ナガレさん、方々でヘルプしてくれた橋村さん、ちぇけ君のサポートをしてくれたひらの瀬川さん、みなさまのおかげで今回の会を成功させることができました! 本当にありがとうございました。
なお、今回のイベントは仕事ではなく個人イベントなので、参加費で集めた分のお金は基本経費として使い切り、黒字分は当日会場で集めた能登半島地震の募金に合わせて白樫さんにお渡ししました(交通費の受け取りさえご遠慮されるほどでしたが、義援金ということでなんとか受け取っていただきました)。
大変な中、予定を変更することなくこうしてイベントに参加してくださり、お土産まで用意してくださったこと、貴重なお酒を持ってきてくださったこと、最後までファンのみなさんとお話してくださったこと、言葉にできないほど感謝しております。剣菱がますます大好きになりました!
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そんな感じで、剣菱のみなさま、お手伝いくださったみなさま、楽しんでくれた参加者のみなさまのおかげでとても素敵な会となりました。
翌日以降も熱気さめやらぬ様子で、「楽しかった〜」「いいイベントだった〜」と感想を言ってくださる参加者のみなさんがたくさんで、やって良かったなぁと思っております。
なお、今回の記事のヘッダーですが、シライジュンイチさんの撮影されたものの中からピックアップさせていただきました🙏こちらもありがとうございます。
剣菱最高!