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ナタリオとサラ 第三話

 第三話 サラの悲しみ
 
 うっとうしかった蠅どもも姿を消し、朝晩寒くて吐く息が白くなり始めたころ、お屋敷の中にクリスマスツリーが飾られました。ピカピカ光っているのが、ナタリオのいる庭からも見えます。通りにもイルミネーションの飾りが取り付けられました。そんなある日、突然サラが庭に入って来て,ナタリオを抱きしめました。

「ごめんね、ナタリオ。ずっとほっといて。                            わたし、もうこんなのいや!」

そう言ってナタリオにほほずりしながら泣いています。ナタリオはペロペロとサラのほっぺたを流れる涙をなめてあげることしかできません。

「ピアノとかダンスなんかどうでもいいの!                                ナタリオや、村のみんなと一緒にいたい!」

すると、お母さんと旦那さんが庭に入って来ました。

「お前は何やってるんだ?                                          ピアノの稽古をすっぽかして!」

旦那さんはカンカンです。 

「勘弁してやってください。                                        まだ遊びたい年頃なんですから…」

お母さんがわってはいりますが、旦那さんは収まりません。 

「何をいってるんだ!?                                               高い金払って、最高の教育受けさせてやってるのに、                                   サボって、犬なんかのとこ来てやがって!!」

旦那さんはナタリオからサラを引き離すと腕を引っ張ってつれていこうとしました。

「ちょっと待ってください!」

お母さんが止めようとします。 

「うるさい! 邪魔するな!」 

旦那さんはお母さんを蹴飛ばしました。

「お母さん!!」 

サラが旦那さんの腕をふりほどいてお母さんにかけよります。

「お前の教育がなってないんだ!!」

そう言って旦那さんが拳を振り上げます。

「ワンワンワン! 『何するんだ、このやろう!!』」

ナタリオはサラとお母さんを助けようと、旦那さんの足に噛みつきました。

「うっ! このくそ犬が!! 離せ!!!」

ナタリオは死んでも放すまいと、さらに力を込めて噛みつきます。

「うわあっ! なんとかしろ、お前ら!!」 

召し使い達が大勢でナタリオ取り押さえました。ナタリオは必死に抵抗しましたが大勢に押さえられてどうすることもできません。ただただ、サラとお母さんをいじめる旦那さんにむかってほえるしかありません。

「ワンワンワンワン!「ワンワンワンワン!」
「このくそ犬、私に噛みつきやがって…                                  こんな危険な犬はおいとけん。保健所を呼べ!!」

「え?」

「あなた、それだけは堪忍してください!                                      サラには大事な家族なんです。」

「ならん! つれてけ!!」

召し使いたちがよってたかってナタリオを庭の隅の小屋につれていき、閉じ込めてしまいました。なき叫ぶサラもお母さんも、召し使いたちにお屋敷へと連れていかれました。
 サラが自分の部屋に閉じ込められベッドで泣いていると、外でワンワン吠えるナタリオの声が聞こえました。窓にかけより外を見ると、保健所の人がナタリオを無理矢理車にのせようとしています。 

「ナタリオーーー!」
「ワン!ワンワン!ワンワンワンワン!!ワンワン!!!!                           『やめろ!はなせ! サラを助けるんだ!!ちくしょうー !!!!』」 

しかしどうすることもできません。保健所の車はナタリオをのせ、去っていきました。 そしてサラは、窓の前で泣き崩れてしまいました。
                    
                         続く・・・

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