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本を読むために神保町に泊まる

4~6月に働き過ぎると、その年の社会保険料が上がるというのであまり働きたくはなかったのだが、そうは言ってられぬ事情で、毎日8:30~20:30勤務。
21時過ぎに家に到着し、ダラダラ飲みながら晩飯。その後酔っ払ったまま2時間ほど居眠り。夜中の2時頃に「やべぇ!化粧落としてねぇ!」と慌てて顔を洗うと何故かシャッキリ目が覚めてしまい、そのまま明方4時頃まで本を読んだり動画を見たりで、ようやく空が白み始める頃にまた2時間ほど仮眠。

…そんな毎日でも、心身ともに異常を来していないので、つくづく働くために生まれた貧乏人の子弟なんだと実感する毎日である。

しかしそんな私でも、たまには仕事をサボりたい。

とある金曜日。その日は午後半休を取得し、一旦家に帰って猫のお世話をしてから、神保町へ向かった。今晩は、そこへ泊るのである。

googlemapで偶然見つけたのだが、読書をコンセプトとした神保町らしいホテルとの事。いつの間に出来たのであろう。毎回気付かないうちに通り過ぎていたのだろうか。

自分が予約したのは、スタッフがテーマごとにセレクトした本が置いてある部屋だ。今回のテーマは、『食』。


googlemap上の口コミでは「清掃が行き届いていない」みたいなコメントがあったが、全然そんな事はなく、清潔そのもの。
大の字で寝られるダブルベッドと読書灯がうれしい。

気になる選書はというと…。
テーマが『食』なので、『もの食う人びと』や『豆腐百珍』なんかが置いてあるのかと想像していたが、何と言うか、全体的にちょっと軽い感じ?とういか若い子向け?
まぁ、普段手にしないタイプのものを読むのも、たまには良いだろう。
そして沢山ある中で、今夜のお供に選んだのは、

これくらいであれば、一晩で読了出来るはず。

さて、その前に晩飯である。


足ツボマッサージ店へ寄ったりしたので、結局18時近くになり、どこもサラリーマンで満席になっていた。ひと足遅かったぜ。


そうそう。今読んでいる『夢声戦争日記』も、一種の「食」日記なのだ。(同じ戦時中の日記『古川録波~ロッパ悲食記』ほどではないが。)
今読んでいる巻は、開戦間もない昭和17年なので、まだそこまで悲惨な食生活にはなっておらず、おそらく今後読む進めるうちに悲惨になっていくのであろう。
しかし、夢声もロッパも、職業柄、一般市民よりは食糧事情が良かったと思われる。そこへ来ると、『山田風太郎~戦中派不戦日記~』などは、貧乏学生の日記なので、食を楽しんだ記述は殆ど出て来ない。

…などと、色々考えながら、今宵の酒の友は、

塩マグロと、


生姜の天ぷら

塩マグロはほんのり塩味が効いていて、ねっとりした食感でウマし。生姜の天ぷらもサッパリしていて良い。
ビールを2杯飲んで、サクッと退散。
まだ19時前だというのに、本屋街はシャッター通りと化していた。
少し店先を冷やかそうと思っていたが、明日までのお預けだ。

ホテルへ戻り、例の3冊を読みながら、そしてたまに眠りながら、また起きて読みながら…。


…正味5時間くらいは眠れただろうか。
朝っぱらから、街宣車のわめき声で目が覚める。
すぐそこの靖国神社に終結した黒い車の方々のご出陣なのである。本日のテーマは、「国賊・日教組を追放せよ!」
個人的にキチ○イは嫌いではないので、別に良いのだが、せめて朝10時からにして頂きたい。

何度も行ったり来たりするので、すっかり目が覚めてしまった。
シャワーを浴びて朝食を食べ、早めのチェックアウト。



さぼうるは、今日も長蛇の列であった


3年前に閉店してしまったスヰートポーヅ。
お隣のろしあ亭はまだ健在。




こうやって裏路地を撮りながら、もちろん書店も散策。なので、荷物で腕が結構プルプルしているのだ。本って重いよね。

一休みする為に「ランチョン」へ行ったところ、ここもランチ時で長蛇の列。土日って混むんだね。いつも暇な老人がビールを飲んでいる平日の午後にしか行った事がなかったもんで、知らなかったよ。

仕方が無いので、新宿のビヤホールへ。
しかしこんなに毎日ビールをしこたま飲んでいるのに、健康診断上、肝臓の数値は人並み以上に健康。中性脂肪も無し。体重増加も無し。これは将来、脳に来るね。下手に内蔵が丈夫だと、身体が悲鳴を上げるという段階をスッ飛ばし、脳に来ちゃうんだよ。うちの父方の家系がそうだから。

…と言いつつ、やめられないのは、既に脳に来ているのか?

黒ビールも注文


さて、今回の収穫は、

伊丹十三訳『ポテト・ブック』
表紙のイラストは、昨年亡くなった矢吹申彦。
以前、どこかの古書店で見かけて欲しかったのだが、その時は金額が高かったので諦めたのだ。

じゃがいもの歴史やレシピなど、まさにポテトづくし。『冷血』のトゥルーマン・カポーティの序章や、イラストレーター各人による挿絵など、なかなか贅沢な一冊だ。

次なる収穫物は、

『明治・大正・昭和 駅弁ラベル大図鑑』
弁当の「辯」の字体が良いよね。「辯髪」みたいで。あと、「サンドウヰッチ」とか。





戦争が始まると、プロパガンダ的な一文が入ったりするのだが、自分が一番好きなのは、これ。(↓)

「国民精神総動員」と謳っているすぐ下に、この間抜けなイラスト。緊張感が無さ過ぎて好き。何これわざと?デザイナーの反戦メッセージ?


あとは、文庫本を適当に。


さて、今回は神保町に泊まった事をリポートしたかったのだが、結局いつものように、飲んだくれ+手に入れた本の紹介で終わってしまって草。